ちょっと家族が病気しましてバタバタしております。
仕事も経理やってるから今忙しいの~。゜(´∩ω∩`)゜。
相変わらず不定期野郎しますが、お付き合いいただける方はよろしくお願いします…m(_ _)m
「なぁ~に暗い顔してんだよ。」
まつ毛にびっしり囲まれた瞳がおいらの顔を覗き込む。
こんくらい綺麗な顔だったら、翔くんはおいらのことを覚えてくれてたんだろうか。
…覚えてくれてたって現状何も変わらないんだけど。
向こうからしたらただ花火大会の日に一緒に迷子になっただけの奴なんだから。
「…別に暗い顔してねぇし。」
だって、分かってたんだ。
住む世界が違う人と一緒に暮らすことがどういうことか。
実らない想いを抱えながら隣にいることがどれだけ苦しいか。
そんなの体験しなくても容易に想像はついてたっていうのに。
「はぁ~…。まぁ大体わかるけどね。」
わかんのかよ。
観察眼の鋭い親友には気付かれてしまったこの想い
ニノ以外に口に出したことはないのにな。
「今日美術部休みだろ?」
「うん。コンクール前だけど今日は先生いないし部自体休み。」
「俺らも休み!なんか放課後センコー達の会議みたいだね。折角だしぱーっとカラオケでも行く?女呼ぶ?」
「…要らない。」
「じゃ俺と2人は?奢るからさ!」
「ん~…」
行ってもいい、かなぁ…?
いつも部活終わりを(受験生で部活動がなく早く帰るはずの)翔くんが待ってるし、おいら美術部で最近調子よくて賞とかとっちゃって忙しかったから。
「まぁ帰るまでに考えといてよ。つかいい加減元気出せって。じゃないと俺、そろそろ……」
言いかけた松潤がおいらをじっと見て、やっぱりいいや、と笑う。
「そろそろ?何?」
「何でもねぇよ。それより、ほら。」
松潤がクイッて親指を向けると、教室の入り口に見覚えのある後ろ姿。
…後ろ姿なのは女の人と話してるから。
その人の顔はこっち向きだからすぐわかる。
「…石原先生…。」
容姿端麗、という言葉は彼女にピッタリ。
(因みに眉目秀麗という言葉は『うちの兄』で認識したわけだけど)
勉強も出来て人望もある翔くんと、生徒教師問わず大人気の石原先生。
2人は付き合ってるって専らの噂。
石原先生にはファンクラブもあるくらいだし、何度か他の教師が2人のことを問いつめたみたいだけど…
翔くんのことだ、上手く交わしたんだろう。
美術部の顧問だし、部員も聞いてるのを見たことがあるけど石原先生は曖昧に笑ってた。
否定しないことが肯定だ。
「何でこんなとこで…。」
「さぁねぇ。智に見せつけてんのかもよ?(笑)」
松潤が片眉を上げて笑うけど、おいらは上手く笑い返せない。
恋人がいるのか、聞いたことがある。
石原先生のことが気になって。
そしたら翔くん、笑ったんだ。
『智にはまだ早いね』って。
いつまで経っても子ども扱いされてるおいらは、すごくミジメだ。
「智!」
俯いてたから驚いて顔を上げる。
いつの間にか石原先生は帰ったみたいだ。
やっぱりただ見せびらかしに来ただけなのかな…。
「何?」
ていうか教室に軽々しく入ってこないでって言ったのに…
ああもう、皆が翔くんを見てキャッキャしてる。
これ以上翔くんのファンを増やしたくないのに。
「おふくろからメール来てさ。明日休みだし、夫婦水入らずで今日一泊旅行することになったみたい。
飯は作ってくれてあるみたいだけど…夜通しゲームして遊ばない?一緒にお菓子やらジュース、買い物して帰ろうよ。」
結婚してから一度も二人きりで旅行してなかったもんなぁ。
あ、予約待ちしてた箱根の高級旅館、キャンセルが出たとか?
良かった!
…あれ…てことは…まさか、二人きり?
「あっれ~。翔先輩、彼女さんとお出かけするのかと思ってました~。」
…あ、そっか…
おいらってば何浮かれてんだろ…。
「はぁ?彼女?誰のこと?」
翔くんが怪訝そうな顔をする。
「それは…なぁ智?」
「…今一緒に…」
翔くんが少し考え、あー…とこめかみをぽりぽりかく。
おいらは知ってる。
困った時の仕草。
「それは…」
「おーい今日の日直誰ー?次の歴史の資料取りに行ったかー?」
突然の岡田の声にハッとする。
そうだ、屋良っちは選択授業違うからおいらだけじゃん!
「お、おいらだ!ごめん!今行く!」
「お前かよ!一緒に行こうぜ、あれ重いし俺トレーニング中だから!」
「ありがと!」
岡田がバシンっておいらの背中を叩いて廊下へと促す。
続きは気になったけど、聞きたくなかったからちょうど良かったかもしれない。
岡田と持って帰った資料を教卓に置いて驚く。
まだいる。
しかもなんか…変な空気。
周りはさっきより色めき立ってる。
のに翔くんと松潤がなんか微妙な気まずい感じ。
その真ん中に何故か…ニノ。
…とりあえず声掛けなきゃ。
「翔くんごめん、おいら話の途中で行っちゃって…」
「いや、いいんだ。邪魔してごめんな。とにかく今日は一緒にスーパー寄ろうな。」
翔くんが優しく微笑んでおいらの頭に手を置く。
「…うん。」
二人きり。
恥ずかしいし不安だけど…夜通し一緒に遊べるなんてやっぱワクワクする。
何かあるとかそんなんじゃなくて
ただ、別々の部屋じゃなくて一緒に過ごすことを当たり前に言ってくれるのが…めっちゃ嬉しい。
*
「チャンスじゃん。今夜ヤッちゃえば?」
「ぶ!」
思いっきり噴き出したあまじょっぱい卵焼きをものすごい嫌そうな顔でニノが払う。
いやお前のせいだからなっ!!!
「な…っ、に、言ってんだよ!」
昼休み。
誰もいない美術室でガタンッと席を立つも、ニノはけろっとした顔で言い放つ。
「だって二人きり初めてなんでしょ?既成事実作っちゃえばこっちのモンじゃない。妊娠するわけでもあるまいし。」
そりゃそうなんだけど!
そうなんだけど~~~~~!!!
「んなん出来るわけねぇだろ!」
「何で?ヤり方一緒に調べて教えたでしょ?この歳の男子なんてヤることしか考えちゃいないんだからさ。そうだ、毎晩ちゃんと解してる?」
「~~~~そういう問題じゃなくてっ」
解してるけど!とは言いたくないから言わない。
つーかそういうつもりでやってんじゃねぇし!
…じ、自己処理なだけだしっ…!!!
「使えるもんは使っちゃえば?兄弟になったからには『家族』って縁がどうしたって残る。なら最悪当たって砕けたところで関係性は変わらないよ、一生。ある意味ラッキーじゃん。」
「…地獄じゃね?断られたのに家族として生活してかなきゃいけないなんて…」
「その状況、俺なら死んでも嫌だね。」
「おいっ!!!」
ごめん本音が、とニノが笑う。
「でもさ、もう出てっちゃうなら一緒じゃない?告白位してもいいような気はしますけど。」
告白、だなんて。
そんなん迷惑なだけに決まってる。
受験生っていう大事な時期に義理の弟から告白されるなんて絶対気持ち悪いじゃん。
「ないわけじゃないと思うよ?可能性。俺はね。そう思います。責任はとらないけど。それか既成事実!ガンバです♡」
目を細めて全然思ってなさそうな励ましの笑顔を作って両手でガッツポーズをするニノに隠すことなく溜息をつく。
…告白か、既成事実…
そんなん、無理だよぉ……。