※妄想のお話です。
「ただいま………。」
既に開けられていたドアノブをひねり家に入る。
なんか…精神的にクッタクタに疲れちゃった……。
いつもより小さな声でとぼとぼ進むと、リビングに翔くんがいて。
ガラス戸の向こうでなにか熱心に数枚の書類を見ているみたい。
あれは…え……
間取り……?
不動産屋さんでもらうような資料に見えるんだけど…。
ここ引っ越すつもりなのかな??
「翔くん…ただいま。」
「うわっ?!さ、智!お、おかえり!!」
慌ててガサガサと書類を鞄に詰め込む翔くん。
声が小さくて聞こえなかった?
…にしても…慌てすぎじゃない?
「……何それ?」
「え、あぁ、…社外秘!仕事の資料!!」
…社外秘の資料なんて、和と僕にも平気で見せてたくせに…。
それにどう見たってあれは家の間取りだったし…。
──家に帰らないのはまずいね。別邸があったりして…。
潤の言葉が反芻する。
ああもう、何なの!
気になっちゃうじゃん!!!
「そーいや俺さ、智に何度か電話したんだけど…もしかして家に置いてった?」
「あ…そうなの、忘れちゃって。」
だから上田くんのこと相談できなかったんだった。
「やっぱり?かけても繋がんねぇから焦ったよ。」
「ごめんね、何か用だった?」
「うん。ちょっと急なんだけど、俺明日から出張行くことになったんだ。」
「え゛っ?!」
こ、声が裏返っちゃった。
潤と話したばっかなのに、嘘でしょ?!
「しょ…うくんの会社って、出張とか…あるの?」
「え、あー…まぁ…
うん、たまにね、たまに…あははは…」
絶対うそじゃん…!!!!
えー翔くんってこんな嘘下手なの?!
目が泳ぎまくりなんだけど!!!
「…ど、どれくらい…?」
「1泊…いや2泊かな?」
な、な、な、何それ~っ!!!
そんな曖昧な出張ないでしょおーっ!!!
知らないけど!!!
「…智、なんかあった?いつもより疲れてる感じするけど…誰かに何か言われたりした?平気?何でも言ってよ、俺は智を守るって決めたんだから。」
翔くんがそっと僕の頬に手を当てる…
直前にひらりと交わす。
「えっ?」
驚いた翔くんの顔。
「…僕だって…守りたいのに…」
いつだってそうだ。
僕は
守られてばかり。
翔くんの足を引っ張ってばかり。
翔くんに似合う人になりたい。
そうしたら…翔くんだって、嘘ついて怪しい行動取らないかもしれない。
中島くんと同じで、僕が頼りないから…言ってくれないんでしょう?
別邸探してるのも…僕がこんなだから、なんでしょっ?!
「…智?」
「何でもないっ!!!」
そうだよ。
翔くんに頼らないで僕一人でやれるんだから!!
…こうなったら
僕が一人で中島くんを調べて、
翔くんにあっと言わせてやるかんな!!
危険フラグ。(笑)