ピノキオは眠りネズミをカバンに入れたまま楽しそうに出発しました。
しかし木陰を抜けるとだだっ広い草原になりました。
ギラギラと太陽が照りつけます。
このままではネズミが「暑い!」と顔を出してしまうかもしれません。
眠りネズミはどう見ても暑さに強そうな顔ではありませんでしたから、ピノキオは慌てて上を見あげます。
(*‘◇‘)ねーたいよーさーん!すこしだけ雲に隠れてくんない?!今日ちょぉあついよー!俺干からびちゃうー!木だけど!
ピノキオは人形なので、太陽も生き物だと思っています。
普通太陽は喋りません。
…しかし。
(´・∀・`)こんにちはぁ。人形しゃべんのすげぇ。初めて見た!
自分が喋ることは棚に上げ、太陽も驚きます。
因みに太陽の声は自ら話し掛けた者にしか聞こえません。
テレパシーみたいなものです。
(*‘◇‘)え!太陽さん何かちょぉかわいい!もっとちかくにきて!一緒におやつたべよっ!俺ねぇ、すいーつもってんの!
ピノキオは少しおばかさんなので自分が言ったことも忘れ、太陽を自分の近くへ来るように言いました。
因みにすいーつとは森でとったイチジクとライチのことです。
(´・∀・`)だめだよぉ。おいらが近付いたらみんな汗かいちゃう。ねぇ、君名前は?
汗をかくどころではありません。
丸焦げです。
しかしピノキオも太陽もそんなこと知りません。
(*‘◇‘)あ!そっかー!!確かにね!!おれはねーぴのきお!君は?
(´・∀・`)おいらには名前なんてないよ。
そりゃそうです。
太陽がもはや大き過ぎる固有名詞ですから。
(´・∀・`)ねぇぴのきおくん、この先の丘にうさぎさんがお昼寝してるの。すごい努力家でおいらずっと見守ってたんだ。でもね、はーどすけじゅーる過ぎて寝ちゃったから亀にまけちゃうの。
太陽はあまりお話が上手ではありません。
なぜなら話す機会がないからです。
(*‘◇‘)まける?
(´・∀・`)うん、レース。亀もイケメンのがんばりやさんなんだけどね、おいらはず~っと頑張ってたうさぎさん応援しちゃうの。でもおいら近付けないから…ぴのきおくんが代わりに起こしてあげてくれない?
(*‘◇‘)わかった!うさぎね!
フィーリングが合うのか、曖昧な説明を受けただけで2人は分かち合いました。
(*‘◇‘)たいよーさんのために全力で叩き起してくるね!
(´・∀・`)あ、いや、優しく…
(*‘◇‘)ばいびー!!
結局どこに行っても太陽は頭上にあるというのに、ピノキオは大きく手を振って丘へ向かいました。
しかし暑いと言われたので、安心した太陽は雲に隠れてお昼寝を始めました。
太陽は眠ることが大好きだったからです。
*
(*‘◇‘)あ、いた!おーい!!
うさぎは丘の手前の木陰でスヤスヤ寝ていました。
キリリとした眉毛は根元から少し曲がっています。
あいでんてぃてぃというものに重きを置く、自意識の高いうさぎなのです。
(*‘◇‘)ねぇうさぎさん!起きて!ねぇねぇねぇ!
すると、その声の大きさに
(.゚ー゚)うるっせぇ!!
うさぎより先に眠りネズミが起きました。
(*‘◇‘)ギャ!ご、ごめん!
(.゚ー゚)うわ眩しっ?!俺のせっせと育てた緑のカーテンどこだよ?!陽の光をひたすら遮るために作ったニートによるニートの為の楽園は?!?
ピノキオは『にーと』という言葉を知りません。
良い子は知らなくても良い言葉です。
(*‘◇‘)ごめんごめん!あの…実は…ええと、ティーポットが勝手にカバンに入ってて…わわっ
ピノキオの鼻がぐーんと伸びます。
嘘をついたからです。
じと、と眠りネズミが睨みます。
(*‘◇‘)…ごめんなさいっ!実は俺、君とどうしても旅をしたかったから連れてきちゃったの!なんか…ビビっときちゃったの!…これ、一目惚れ…なのかなぁ…
(*.゚ー゚)…はあぁ?ば…バッカじゃねぇの!
眠りネズミは上についたまあるい耳を真っ赤にしてポットの中に入ってしまいました。
(*‘◇‘)…くふふ、本当のこと言うのって緊張するけど嬉しいな…てゆーかネズミちゃん照れてて可愛すぎる…
しかしピノキオは重大なことに気付いてしまいました。
(*‘◇‘)ガーン…!こんな鼻長かったらちゅー出来ないよ!!!
死活問題です。
(`・3・´)あの…何?さっきから起きるタイミング逃してんだけど。
うさぎはたえきれなくなって声をかけました。
(*‘◇‘)あ!起きた!うさぎさん!あのねえ、たいよーさんがねえ!がんばってるからねえ!起きて欲しいんだって!!でも亀はイケメンなんだね!ちょぉみたいんですけどー!
太陽の話すスキルについて触れましたが、ピノキオとて同じことです。
ずっと人形で喋れなかったんですから。
お話は下手なのです。
(`・3・´)うんごめん、ちょっと何言ってるのかよく分からない。一回落ち着こうか。俺はうさぎ。名前はまだない。君は見たところ鼻の長い人形のようだけど。
うさぎは簡潔にまとめます。
(*‘◇‘)ええっ!なんで分かったの!そうなの!俺ぴのきお!人形なの!嘘つくと鼻伸びちゃうの!うさぎさん天才だね!探偵さんなの?!
(`・3・´)いやまぁ見たまんまを口にしただけなんだけど…。
うさぎは調子が出ずぽりぽりと頭を掻きます。
(`・3・´)…で?何?太陽?
(*‘◇‘)あ!そうそう!たいよーさんがね、うさぎさんがれーす負けちゃうから起こしてきてって!
(`・3・´)はっ…!そっか俺昨日4時まで新聞読んでて…レース…!
うさぎがふと見ると亀がゴールの直前です。
しかし明け方まで新聞を読む必要があるのかはよく分かりません。
(`・3・´)こうしちゃいられない!ピノキオくんありがとう!…太陽はよくわかんねぇけど!
ちらりと上空を見るも、雲におおわれていて首を傾げます。
(*‘◇‘)俺じゃないよ、太陽さんね!行ってらっしゃーい!じゃーねー!
ピノキオは大きく手を振り、その場を去りました。
*
(.゚ー゚)お前さぁ、なんで旅なんてしてるわけ?
眠りネズミがピノキオの肩の上で怪訝そうにゲームをしながら尋ねます。
(*‘◇‘)おれね、嘘ついてじーちゃんの手伝いしちゃって。ホンネ?を言える相手を見つけなさいって神様に言われたの。
(.゚ー゚)ふーん。嘘ついて手伝って鼻伸ばされて?何それ意味わかんないよ。理解出来ないね。
ピコピコとゲームをする眠りネズミは、ふあぁと大きな欠伸をひとつ。
(*‘◇‘)GUTS!で何とかなると思ったんだけどなぁ~。
(.゚ー゚)なんねーわ。つーかどこ行くのよ?俺別に独り身だからいいんだけどさぁ。
(*‘◇‘)わかんない!でも旅に出ないとザンサツされるんだって!神様にゆわれたの!
(.゚ー゚)えええええええ怖い怖い怖いナニソレ。やだよ俺巻き込まないでよ!
(*‘◇‘)えーやだ!一緒に来てよ怖いもん!君がいるから楽しくなったんだよ!
(.゚ー゚)ふざっけんなお前!俺は地球救ったり忙しいんだよ!!
(*‘◇‘)それ絶対ゲームじゃん!!
ぎゃーぎゃーと騒ぎながら2人は進んでいきます。
すると、大きな倒木に行く手が阻まれました。
(*‘◇‘)わ…もしかしてこの前の嵐の日に倒れちゃったのかな?
(.゚ー゚)…いや…これ、木?なんつか、こう…布的な……
「…!誰かいんの?!助けてくれ!!」
突然の声に2人は飛び上がります。
(*‘◇‘)こっち…?!
ピノキオは掌に眠りネズミを包み込み声の方へと進みます。
(.゚ー゚)うおいこらバカ!!お前!俺置いてけ!!何で俺握ってんだよ!俺危険なとことか嫌いなんだよ!!
眠りネズミの声は好奇心旺盛なピノキオの耳には届きません。
(*‘◇‘)この辺のはず…
ノノ`∀´ルあ!ねぇ、ここだよ!たすけ…え、人形?!
(*‘◇‘)わーーー!巨人!!!おっきい人がいる、すっげぇー!!!!
ピノキオが驚いて尻もちをつきます。
ノノ`∀´ルうわーーーーー!!!人形が喋ってる?!!?つーか鼻長くね?!
(.゚ー゚)うっそ…マジかよ……巨人が地面に貼り付けられてるじゃないですか何プレイっすかこれ……放置?緊縛?やっばウケる。写真撮ろ、あとでマニアに売れるかも。
ノノ`∀´ルギャーーー!ねずみ!ネズミが喋ってる!!!!よくわからない機械で俺を狙ってるーーー!!
(`・3・´)おーいピノキオくん、待ってくれよぉ太陽って何~…って何これ?!
ノノ`∀´ルうううううさぎまで…?!
(´・∀・`)ふあぁぁ、さっきからおっきい声で…
(*‘◇‘)あ、太陽くん!おーい!
(`・3・´)えっ太陽?
ノノ`∀´ル(.゚ー゚)はっ?太陽??
(´・∀・`)えっ、何この人間、デカッ!
突然皆の脳に太陽の声が響き渡ります。
ノノ`∀´ルた、たいよ……う……バタッ
森の中はカオスです。