猿が宇宙旅行行くようなモン。(水) | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

今日はお休みだったので、コンフィデンスマンの映画観てきました。
超面白かった!
ほんとドラマの時から大好き!!
とってもオススメです。
とは言えアラジンももう始まる…いっぱい見たいのある…












-On Wednesday-

 

毎朝早起きしてしまうから、『おじいちゃん』などというあだ名をつけられていたのは美大時代から。

 

だからと言って長年の習慣は簡単に変わりはしない。

 

出勤前に川沿いをサイクリングするのは最近のブームだ。

(加藤には「サイクリングとか似合わなーいw」と言われるのが嫌で言ってないだけで、俺だってただ引きこもってるわけじゃない。)


因みに人形店に行くのは徒歩だ。


敷地が狭く、駐輪場なんてないから。


朝の川辺はうるさくなくていい。


心が落ち着く。


すれ違った老夫婦にぺこりと頭を下げる。


こういう時間が大好き。


だからおじいちゃんとか言われんのかな。


 

「わー!!そこの人!止めて~~~!!」



そんな朝の川沿い、似つかわしくない大声に振り返ると、すらっとした人とリードのついた犬がこちらに向かって爆走している。

 

「え、お、俺?」

 

キョロキョロと辺りを見渡しても誰もいない。

 

止めてっつったって、全速力の犬っころをどうやって止めろっつーんだよ!

 

仕方なく自転車を止めしゃがみ、通り過ぎたところをリードを掴んで捕獲しようとする。


が。


犬は予想外に、目の前でぶわりと浮いた。

 

「…えっ」

 

わんっ!

 

と飛びつかれ、尻餅をつくどころか重さにそのまま後ろへ倒れこむ。

 

ゴールデンレトリーバー、でけぇ!!!


ヘルメットしてたから平気だったけど、頭危なかったぞ?!

 

ベロベロと顔を舐められてもどうにも出来ずにいると、キャップを目深にかぶった青年が少ししてから青空を背にヨダレまみれの俺を覗き込む。

 

「ありがとね!…くふふ、君いい人でしょう?」

 

「…は?」

 

捕まえようとしたから?

 

いや、そもそも君が大声出さなきゃ俺スルーしてたけど。

 

「そいつね、いい人にしか懐かないの!」

 

ああ、そういうこと。

 

目の前の艶のある毛並みをした大型犬が、尻尾を振りながらワン!と鳴く。

 

どうでもいいけどどいてくれ、重い。

 

「ああ、ごめんごめん!ほら嵐、どいて?」

 

「…嵐?」

 

「このコの名前。」

 

なるほど、確かに嵐のようにやってきた。

 

名前通りに育ってやがる。

 

やっと軽くなった腹を右手で払っていると、青年がにっこり片手を差し出す。


「背中大丈夫?ごめんね、ほんと助かったよーありがとう!」

 

素直に応じて立ち上がらせてもらうと、足がよろけて細身の割に筋肉質な青年の腕に受け止められる。

 

「あ、すみません、よろけちゃって…。」


きゅっと手に力が入った気がして、なんかドキッとしたから慌てて身体を離す。


俺、アホだな。


こんなイケメンと関わることなかったし、動揺しちゃった。

 

「…ううん!いいよ!ねぇ、君の名前は?」


「大野智。君は?」


「相葉雅紀っ!よろしくね、おーちゃん!」


「お、おーちゃん…?んふふ、まぁいいや、よろしくね相葉くん。」



嵐は結局大人しくなり、相葉くんの隣をすまし顔で歩くようになったため、川沿いを2人と1匹で散歩することになった。


そよぐ風は気持ちが良くて、最高。


サイクリングより歩く方が楽しいかもしれない、なんて思えるのは、友人とすら久しく会っていない生活のせいだろうか。


手で引いているためカラカラとペダルが空回りするのをBGMに、相葉くんとゆっくり話す。


「へー、そのヘルメットの絵、おーちゃんが描いたんだ!?すごいね!」


「すごくないよ、結局イラストレーターになるって夢は諦めてるし、こんな可愛くない微妙にリアルなんしか描けねーし。。」


「えーっ、めちゃくちゃ可愛いよ!店にあったら絶対買っちゃう!」


「ほ、ほんと…?!」


し、しまった。


あまりに嬉しくて声が裏返ってしまった。


社交辞令に決まってんのに。


「ほんとほんと!俺パンチあるの大好きでさぁ…ねぇ、それ、買えない?本当に欲しいんだけど!あ、今手持ちが全然ないや…でも…うーっ欲しい…明日もここ来られたらお金持ってくるんだけど。。」


…本気かな…?


ってちょっと思っちゃう位、相葉くんは真剣な顔で悩んでて。


思わずんふふ、と笑う。


「…良かったら、あげる。」


勇気をだして言ってみると、


「えっ?!ほんと?!でも悪いよ、…とか言いつつすっげー嬉しい!!いいの?」


心底嬉しそうな顔になったから…俺も嬉しくなって心がほわっとする。


「うん。また描けばいいだけだし、もう一個予備あるし。」


つーかそれかなり安モンだし。(高いものに自分のイラストなんて描けない。)


「えーーっ嬉しい!ありがとっ!!」


相葉くんはしばらく色んな角度から俺の絵の入ったヘルメットをニコニコ眺めてくれた。


気恥しさと嬉しさが入り交じっておでこをポリポリかいたりしてやり過ごしていたら、相葉くんの腕についたアップルウォッチが着信を告げる。


~♪


「げっ…」


「電話?出なくていいの?」


「んー…要件分かってるから。早く帰らないと…」


ガルルルル…


うわ、嵐唸ってる。


んふふ、相葉くんの感情と繋がってるんだな。


溜息をつき着信を切った相葉くんは、「おーちゃん、番号教えてくれる?」と尋ねる。


「あーごめん、俺携帯持ってないの。」


「へっ?!持ってないって、契約してないってこと?」


「うん、友達少ないし必要ないんだもん。」


更に情けないことに、あまり金も無いから。。


こう言うと十中八九「信じられない」と言われてしまう。


わかってっけど、だってさぁ、本当に必要性感じねぇんだもん。


もし用事あったら、人形店の電話で事足りるし。(おやっさんが自由に使えって言ってくれてる。)


口を尖らせると、相葉くんはくふふっと笑う。


「確かに、俺も今携帯に邪魔されて困ってたし!無い方がいいのかもね?元々誰も持ってなかったんだし!うん、絶対そう!おーちゃん賢いね!!」


…なんか、優しい人だなぁ。


穏やかな気持ちになれるっていうか。


ただ単に金が無いだけなんだけど。


「あーでも何かお礼したいんだけど、俺明日から海外に行っちゃうんだよな~…」


「え?出張的な?」


「そ!そゆ感じ~!だから…これ良かったら!」


渡されたのは…ネックストラップの、社員証みたいなやつ。


中にある緑の紙には『イベントA』の文字。


「これ…?」


「日曜、お休み?〇〇公園に来てくれる?」


わんっ!!


嵐が嬉しそうにしっぽを振る。


…来いってこと?


「まぁ休みだけど…」


〇〇公園って、確か日本で一番大きなだだっ広い公園だ。


色んなイベントしてたりするけど、行ったことねぇな。


「受付でパンフレット貰えるから、そこで会えるといいな!日曜には戻ってくるから!」


~♪


またアップルウォッチが鳴り、相葉くんが顔を顰める。


「あーもう!ほんと、携帯邪魔っ!!ごめんねおーちゃん!また日曜に!!見かけたら絶対話しかけてね!!じゃーねっ!!!」


わんっ!!!


「あっ、ちょっと…!」


バイバーイ!!と言いながら相葉くんは嵐と走って行ってしまった。


行くなんて言ってねーのに…


まぁいいか。


幸い日曜は休みになったばかりで、『まだ』予定が入ってないし。


………『まだ』、ね。


あと2つくらいは入る予定だから。


などと脳内で虚しい言い訳をして、家へと向かった。