「挿 れるって…智くん…のに?俺の指を…?」
「そぉ…ナカ 熱くて、はやく、しょぉちゃんにい れてほしい…っ、ちゃんと洗ってあるから、お願い…っ」
普段からしている方が疼 くのは当然なのだが、櫻井にとっては予想外の懇願だった。
指を 挿 れる。
その行 為をしている自分の姿を想像し、思わず生唾を飲み込む。
前の 解放 を求めるのは男にとって自然なこと。
しかし後ろは…普通の人間は触らない。
しかも洗浄が済んでいると告げられた。
(…つまり、智くんは…)
複雑な感情が櫻井を襲う。
しかし目下の男は酷く辛そうで、迷っている暇はない。
何か塗るもの、と周りを見渡すと、大野がそっと指を掴む。
「えっ?」
「しょぉちゃんの指、すき…
男……って感じがする…。」
ドキンッ。
櫻井の心臓が大きく鳴る。
大野はうっとりとした目で手を顔の前に運び、ぱくりと口 に入れて舌 でそれを転がす。
「……っ!」
親猫が子猫にするように、れろ りと指の 腹を 舐 められ、櫻井の血はその 感触に粟 立った。
大野には余裕がなく、櫻井の様子を気にすることなく指を 口から 出し 入れする。
指の神 経は異様に 敏 感 で、ぞく ぞくと 腹の奥 まで何かが届く。
「ん…ふ、ぅ…」
ぐ ぽ、 ぐ ちゅ…
唾液 の音が櫻井の耳 を煽 っていく。
「…も、もういいでしょ?」
櫻井が堪らなくなって手を引く。
「うん、いれて…」
熱に浮かされた大野は、挿 れやすいように 両手で 両脚を 持って広 げ、あら れもない 姿を見せる。
櫻井の心臓がその 痴 態 にバクバクと騒ぐも、急かされるまま 後ろへ ぴた りと 濡 らされ た指 を当てる。
大野がビ ク ンと喉 を伸ばす。
「いれ るよ…?」
「ぅ、はやく、い れてぇ…っ」
櫻井は覚悟を決め、ゆっくりとさ しこむ。
「はぁ…っ!あ、ぁ…っ」
「い、痛い?大丈夫?」
「痛くない、から、もっと 奥 まで…っ」
内 壁 が櫻井の 指を 蠢 くように 締め 付け、取り込んでいく。
呑 まれる、と思う程。
ナカ は熱く、蕩 けそうとまで感じる。
もしこれが、自分の 性 器 だったら。
そう思うだけで、櫻井のそれはぐっ と硬 くなり、じわ りと 先端 が濡 れる。
──やべ、俺、無理かも。
そう思った時、思い出したのはもう1人のメンバーの顔だった。
*
「翔ちゃーん、ウィスキー持ってきた!飲も!」
「またかよ!」
時は遡り、1時間前。
櫻井の部屋を訪れたのは相葉だ。
以前も同様に突然やってきて、疲労もある上片付けたい仕事もあったのに遅くまで付き合わされていた。
「まーまー。このウィスキー美味しいの。日本で作られたやつで、なんか世界の大会で賞とったんだって!さっきもらったから一緒に飲もー!」
氷と簡単なツマミも持ってきており、既に準備は万端だ。
ラベルには『凛』と記されている。
櫻井にとって見たことの無いもので、興味が無いといえば嘘になる。
「雅紀と飲むとめっちゃ愚痴られるから途中から不味くなんだけど?」
「お互い様じゃーん(笑)悩みをきょーゆーしようよ!」
勝手に棚からグラスを出して注ぎ始める自由気ままな相葉の行動に、櫻井は小さく溜息をついて笑う。
不味くなる、とは言ったものの、居心地は良いのだ。
「はぁ~。想い人はすぐ近くに居るのに…情けねー」
「そこがまた恋愛の面白いとこなんだよ!全部上手くいってたら翔ちゃんとお酒飲む時間もないしさぁ、俺は結構こうやって飲むの好きだよ!ま、最後には実るって信じてるけどね!」
「くははっ、ポジティブぅー(笑)俺は諦めてっからなー。」
受け取ったグラスをカチンと鳴らし、口にする。
清涼感のある味で、飲みやすい。
「なんでぇ?当たって砕けないと分かんないよっ!しかもリーダー、酔ってると結構ふにゃふにゃ翔ちゃんにもたれかかってったりするし…案外あるかもよ?!今度酔った勢いでコクってみれば?!」
「砕けたくねーし、そんなことしたくねぇ。正気じゃない時にどうこうするのとか俺の騎士道に反する。」
「はい出たA型~!てゆーか騎士じゃないじゃん!(笑)」
「うるせぇAB型っ!!心はいつだってナイトなんだよ!(笑)」
人には言えない恋愛を共有している2人は、こうして遠征先などで酒を飲んで気を晴らしていた。
相葉の頬がほんのり赤くなり始めた頃だった。
櫻井の携帯が鳴る。
表示されている名前にギョッとして、そそくさと相葉に見られないように手に取り席を立つ。
「電話?出て出て!」
相葉はニコニコと促す。
「ごめん!…もしもし?」
『…翔さん。今部屋?』
「うん。どうした?何かトラブった?」
部屋の隅で小声で電話口の男の声に耳を寄せる。
別に電話をかけてきたのが二宮だと知られたところでやましいことはひとつもないのだが、
相葉より先に自分にかかってくる案件というのが尋常でないと感じたのだ。
『…まぁ。俺じゃないけどね。』
「は?誰?スタッフ?」
『リーダー。』
「…はっ?!え、大丈夫なの?何が起きたの?今どこ?」
『俺がリーダーに薬盛った。今1人で苦しんでっから部屋行ったげてよ。』
「はぁ?!何言ってんだよ!薬ってなんだよ!!」
櫻井は相葉の存在も忘れて大声で怒鳴る。
相葉は心配そうにコトリとグラスを置く。
『別に、ヤバい薬じゃないから。…まぁある意味ヤバいか?媚薬だからね(笑)』
「び…やくっ?!って、あの?何で智くんに…!?」
『別に?暇潰しだよ。早く行ってあげてよ、自分で擦るしかなくてしんどいんじゃない?』
「………っ」
『いや俺さぁ、飲ませたはいーんだけど、やることあって忙しいから放っといてきちゃったのよ。代わりに後処理よろしく。…あ、何もしてねーから心配しないで(笑)ルームキードアノブにかけとくから、すぐとってね。』
「ふざけんな!おいっ!」
電話は切られ、ツー、ツーと冷たい機械音が櫻井の鼓膜に響く。
「翔ちゃん…?」
「わり、急用!!この部屋の鍵持ってくから、適当に飲んでて!勝手に帰っていいから!」
慌ててルームキーを手に、櫻井は部屋を飛び出したのだった。