僕に力を16 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

…明日ですね。
私は前半組です。もう腹痛です。
ついでにお天気頭痛持ちなので湿気で頭痛してます。
花粉症なので鼻グズくしゃみ目痒女です。
風邪とは関係なく満身創痍でウケますw
明日天国が地獄か…あぁぁお腹痛い…。












天界に送る魂の数と時間は変わらない…


しかし対象が変われば手続きはかなり面倒になる。


ついこの間同じように人間に悪用され、魂の数が合わなくなって仲間の死神がその命を終えたばかりだ。


おかげで過重労働を強いられていて趣味の盆栽の手入れをする時間がどんどん短くなってるって言うのに、勘弁して欲しい。



死神の寿命はロウソクの長さで決まる。


失態を犯せばその分ロウソクは短くなる。


…今回のミスは、何センチ分縮められるのだろうか。


考える前から頭が痛い。


とは言え雷が落ちるのは天界に帰ってからだ。


こうなってしまった今、任務を遂行する他俺に残された道はない。


「…じゃぁ、改めて。


『おめでとうございます。お迎えにあがりました。あなたは三日後、死にます。』


…はぁ…クソ、しまんねぇな。まぁいいや、やり残したことは?」


「やり残したこと……」


うーん、と考える大野智は、きっかり5秒後に「あ!」と短く声を上げた。



「…『人魚の鱗』が欲しい!」



「…人魚の鱗?何だそれ。人魚なんて、人間の作った逸話だろ?」


「人魚が本当にいるかどうかは分からないけど…鱗っていうのは、5色に光る貝殻の破片のこと。ここら辺ではそう呼ばれてる。砂浜にあるんだ。四つ葉のクローバーみたいなもんで、一生懸命探せば見つけられるの。」


「…なんでそんなものを?」


「どうしても。欲しいんだ。三日あるんだよね?なら頑張って探す。おいらの好きなことをして過ごしていいんでしょう?」


「…はぁ~。分かったよ。手伝うよ。」


「んふふ。ありがとう、Jさん!」


「…Jさん?」


「えへへ、番号忘れちゃった。Jさんって呼んでもいい?あだ名!」


「3桁忘れるとかどんだけ抜けてんだよ(笑)まぁ…別にいいけど。」


あだ名…というのは、恐らく愛称のことだろう。


そういうの、悪い気はしない。


「よろしくね!」


「…おう。」


かくして、大野智の最後の3日間が始まった。



大野智は日中、必死に鱗を探し


夜は寝る間も惜しんで鉄の輪っかを作っていた。


そこへバサリと漆黒の羽が舞った。


「お困りですか?」


「えっ…と、あなたは…?」


「どうも…悪魔と申します。」


俺の失態を面白がった悪魔が、俺の目を盗んで大野智の元へとやってきた。


前髪がだらりと長いソイツは、最近この地域で魂を食い散らかしていて何度か顔を合わせていた。


「人魚の鱗、探してあげましょうか?」


「指輪…もっと良いのを作ってあげられますよ?」


「時間は有効に使わないと。やりたいこと、たくさんあるんじゃないですか?」


ターゲットをわざわざ狙うのは、死神の任務を妨害することを楽しんでいるから。


悪魔は、色々追い込まれているであろう大野智へと吹き込んだ。


上から気付いて慌てて止めようとしたが、その必要もなかった。


「…いい。自分で作らないと意味が無いよ。」


大野智は柔らかい表情のままそう言い放った。


その意思は固く、ついには悪魔も音を上げる程だった。


かくいう俺も、悪魔にとは言わないが他に頼めばいいのに、と思っていたのは事実。


人魚の鱗というものでなくとも、その辺に落ちているガラスの欠片も十分に綺麗だ。


砂まみれになりあるかどうかも分からない物を探すのは、残り少ない余生に当てる必要があるとは思えない。


そして夜は寝る間も惜しんで指輪の形を何度も何度も何度も整える。


その作業に何の意味がある?


指輪が欲しいなら出来合いのものを買えばいい。


プロはそのためにいる。


そうだろ?


だけど大野智は「自分の手で心を込めたいの。」と言った。


…分かんねぇ。


人間の気持ちっていうのは、本当に…何十年と見守ってるけど、俺には全く理解の出来ないものだ。



「あった…!」


大野智がソレを見つけたのは、2日目の夕方だった。


一緒に探していた俺は、その声に駆け寄り覗き込む。


骨ばった手の中の欠片がキラリと光った。


「ふぅん。それが捜し物か。鱗っぽかねぇな。」


「うん…人魚の鱗にはね。不思議な力があるんだ。」


大野智はそれを大切そうに2本の指で掴み、夕陽に翳す。


青、赤、緑、黄…紫、だろうか。


5色にキラキラと、まるで水面の光のように輝いている。


「不思議な力…ねぇ。」


「あ、信じてないでしょ?(笑)」


当たり前だ。


人間界に存在する死滅した貝殻の破片に不思議な力などあってたまるか。


心の中でそう毒を吐きながら、「信じてるって。」と返す。


「嘘つかなくてなくていいよ(笑)…あのね。人魚の鱗…って呼ばれるこの貝殻の破片自体には、『想いの残骸』っていう意味があるの。


欠片がどれだけ小さくなって砂浜に埋もれても陽の光を受けて5色に光る姿から、…『どんな姿になっても貴方を必ず見つけ出す』が貝殻コトバ。」


「うっわ、重いな。」


「んふふ、確かに重いかもね(笑)その意味を受けてなのか分からないけど、『再会』の力があるって言われてる。…約束したんだ。もしおいらが死んでも、12年以内に会いに来るって。」



……くだらない。


この男は24時間もしない内に、死ぬ。


この懐中時計が『死』を指した時、間違いなく溺死する。


それで『再会』は永遠に不可能だ。


12年も何も、これから先ずっと。


この男は悪魔とも契約していないし、悪さもしていない。


魂は何事もなく天界へと運ばれる。


そういう規則だ。


「…いいんじゃない?夢があって。」


皮肉混じりに言うと、大野智は笑う。


「Jさん…嘘下手くそだよね(笑)」


んふふふふ…と身体を曲げて笑う男は、今にも折れてしまいそうな程細かった。



…せめて楽に死ねれば良かっただろうに、と柄でもなく思う。


溺死は人間にとって、一番苦しいらしい。


俺らは空も飛べるし水中に入ることもないから死に方への感情は分からないが、人間達が嫌うのはダントツで溺死だ。


「…『お前がやりたいこと』は無いのかよ。それは残される櫻井翔への物だろ?」


「おいらにとっても、望みなの。約束しちゃったから。縋りたいんだ。どんな馬鹿みたいな力でも、子供じみたおまじないでも…。翔くんの為とか言ってるけど、本当はおいらの方がずっと──…。」



大野智は言葉を飲み込み、苦笑して途中になっていた指輪作りに専念した。


次の日は母親にいつものように感謝の言葉を伝え、いつも以上に料理に力を入れ…


正面から、母親の背に腕を回す。


「…行ってきます、母さん。おいら、今日も幸せだよ。」


「母さんもよ。気をつけてね。」


「…うん。母さんも!」


いつもの大野智。


いつ死んでもいいように、毎日しているのだという。


母親はその変化に気付かない。



大野智の笑顔があまりに穏やか過ぎて。



大野智は指輪を大事にしまい、櫻井翔の元へと向かった。


溺れて死ぬと分かっていながら、待ち合わせた海へ──。