決戦は…今日は月曜日。
zeroの現場入りの夕方までは大丈夫。
つまり…
それまでに智くんに一番記憶に残る祝い方をしなくてはならない。
「智くん、起きて。智くん。」
「…んがっ!へ、…あれ、何?…6時?!翔ちゃん…俺今日休み…」
微睡みの中起こすのは気が引けるが…残念ながら俺にはそんなに時間が無い。
「今日は何の日?」
「え……オフ…あ、誕生日?」
んん…と身体を起こそうとするのを、背中に手を回して補助する。
まだ眠いのか、ずりずりと後ろへ下がってベッドのフレームにもたれかかり大きくあくびをする智くん。
「そうだよ。昨日0時過ぎに何をした?」
「え…っと、翔ちゃんにおめでとって言われて、そん時メールも来て…そのあと今年もアイツらが俺の写真いっぱい送ってきて…」
「そう!で?!」
智くんが少し考え、そして首を傾げる。
「……寝た?」
「そうだよ!!寝たのよあなた!!!!満足そうに!!!!」
「…いやだって夜だし…」
「何言ってんの?!誕生日なんだから、俺を好きにしていいんだよ!!」
「はぁ?!」
ゲホッと智くんが咳き込む。
「何がいい?縛る?しゃぶ ろうか?俺、女装とかする?セーラーマーズしかないけどいい?火星に代わって折檻する?あ、ロウソクでも垂らしてみる?今日だったら最悪、掘 られる側でもいいからっ!!!」
「翔ちゃん……ふふ…はははっ…!(笑)」
智くんが力なくへにゃりと笑った後、額に手を当てて肩を揺らす。
何よ。
俺なりに色々考えたんだよ。
当然、物(バースデープレゼント)は用意してある。
けどそれじゃ他の奴らと一緒じゃん。
今夜は一緒にディナーも行けないんだ。
それくらいしないと差別化を図れない。
本当は夕方ギリギリまで遠出しようとしてたのに、智くんが嫌だって言うから。
家で過ごしたいって言うから、だから身を捧げようと昨日は覚悟してたのに…。
メールラッシュが終わったらすぐにスヤスヤ寝てんだもんこの人!!
「ほんと…勉強出来んのに、ばっかだなぁ。」
智くんがぎゅっと抱き締めてくれる。
「あのさ。そんなん、いいから。」
「何でよ?大野智の誕生日なんだよ?俺に出来ることは何だってしたいよ。…恋人なんだから。」
んふふ。
智くんが柔らかく笑う。
智くんの笑い声は、綿菓子みたい。
ふわふわに軽くて、甘くて、すぐに溶けるような。
「誕生日に翔ちゃんが隣にいてくれるだけで…翔ちゃんを見れるだけでじゅうぶん幸せだよ?」
「そんなの…」
「ほんとに。朝の低い声も。」
智くんの手が俺の頬に伸びる。
「このつぶらな瞳も」
親指で目尻をなぞる。
「スッとした鼻も」
鼻の筋を智くんの綺麗な人差し指が撫でる。
「ぷくっとした…唇も。」
ゆっくり智くんが近付く。
触れる直前の、智くんの、下目遣いと半開きの口……
ゾクゾクッ。
寝起きの気だるさも相まって、なんつーか…えっっっろい。
なのに、キスは当たるだけのもの…。
ふに、と触れた温かいそれは、俺に名残惜しさを植え付ける。
「全部、大好きなんだもん。」
また目尻にシワを作り、ふにゃりと笑う。
「…全部大好きなのは、俺の方だよ…」
あなたの優しい笑顔も。
その笑い声も。
不意に覗かせる妖艶さも。
いつもの赤ちゃんみたいな匂いも。
綺麗な指も。
細く華奢な腰も。
曲がった背中も。
その背中がシャンとなる、キレッキレのダンスも。
透き通り伸びる、奇跡のような歌声も。
猫舌なところも。
才能だらけなのに、それをひけらかさない性格も。
ヤッ てる時の涙顔も。
ぐちゃぐちゃになるまで抱 いた翌日の、拗ねてるんだけどどこか照れ臭そうなあなたの膨らんだ頬も。
打ち合わせ中すぐにうとうと寝てしまうところも。
集中すると唇が尖るところも。
頑固で、自分の信念を突き通すところも。
松潤も言ってたけど…自分に対して超絶ストイックなのに、他に対してはめちゃくちゃ寛大なところも。
何にも動じないところも。
なのに、小さなことですぐに照れてしまうところも。
いつまで経ってもヤ る時に恥ずかしがってくれるところも。
歯磨き中、必ず嘔吐くとこですら可愛いんだ。
俺にとっては、あなたが世界で一番可愛いし、かっこいいし、尊敬してるし、憧れてる。
それは多分…一生変わらない。
どれだけ年老いても。
どれだけ同じ時間を過ごしても。
どれだけあなたと身体 を重ねても…。