「遅いよ。」59 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


もう一通り、この話は書き終えました。
あとは書き方を弄ったり、順番変えたり、視点変えた方がいいと感じたらその話をまるっと書き直すくらい。
(他の方はわかりませんが、私は適当に書きたいとこバーッと書くので、アップするまでが1番時間がかかるのです/その割に誤字脱字が多いのは自分の中でも七不思議)
悩みまくった話だったから何か既に寂しい。(笑)








-6 years ago(6年前)-


ニノ


ねぇ、ニノ



今、苦しい闇の中かもしれないけど


大丈夫だよ



早く伝えたいな


早く知って欲しいな



ニノは独りじゃないってこと。










退院後。


おいらは翔くんのお父さんとの約束通り、翔くんを訪ねることなく家へ帰った。


今行ったところで翔くんにとっておいらはトラウマの要因でしかないし、じーちゃんの海外での手術を約束してくれた以上おいらは従うしかなかった。


今生きてるって伝えれば、きっと翔くんは長年苦しまなくて済むし、ニノを買うことも無く、幸せに生きられるだろう。


だけど、それじゃじーちゃんは…



──いや、そんなの綺麗事だ。



この過去があったから


ニノと翔くんは出会い


おいらは翔くんを知った。


このトラウマがあったから


翔くんはおいらを好きだと言ってくれた。



最低だけど


言い訳にしかならないけど


おいらには、これが必要なことに思えた。


翔くんにとっておいらが生きてたと知ることは、何故死んだと皆が口裏合わせたかを知ることに…


自分の父親が原因だったということに、繋がってしまう可能性がある。



だから、


『過去は変えられない』。


何となく、そう思ったんだ。



おいらは、おいら自身のため


おいらを『死んだ』ことにして、翔くんの前から消えた。



じーちゃんも、手術の日程が一年以上あるため、地元の病院での入院になった。


難病指定されたその病気は、ゆっくりとじーちゃんの自由を奪っていく。


とは言え、手術以外に施せることはほとんどないらしい。


投薬で進行を遅らせる位。


そしてその術式を持つのはフランスにいる有名な先生だけ。


海を渡っての手術は必須だった。


じーちゃんの強い希望で、日程もまだまだだったし、おいらの高校卒業までは日本にいるということになった。





地元に戻り、色々落ち着いてから


相葉ちゃんと風間を呼び出し、打ち明けた。


数ヶ月においらの身に起こった、全てを。


おいらとニノの…不思議な体験を。



「入れ替わり…?まさか、本当に…?」



2人は目を丸くする。


「うん。おいら達も信じられなかったけど…変わってたの。中身が。…魂が。」


「はー…。いや、確かに違う人格っていうか…ちょいちょい違和感は感じてたけど、まさかそんなのが現実に起こるなんて…。」


風間が大きく息をつく。


「………つまり…入れ替わってた、その、ニノって子に…俺は…」


「そう。その子に、相葉ちゃんは恋をしたの。」


「そうだったんだ…。そういうことかぁ。」


え、と風間が短い声を上げる。


「恋って…男でしょ?」


「うん、そうだよ。…ま、元々俺、多分どっちでもイケる人なんだと思うんだよね。人間が好き、みたいな!」


「…そうなんだ…なんか…そっか、そういうの周りでいないから、その…ごめん、単純にビックリした。偏見持つわけじゃないけど。」


「でもね、風間。おいらも…入れ替わり先で、男の人に恋したの。」


「……マジか……。」


相葉ちゃんは真剣な顔をして何かを考える。


2人は、こんな嘘みたいな話を笑わずに、疑わずに聞いてくれる。


最初から話してれば、少しは『過去』は変わったのだろうか。


そんなこと、考えても仕方が無いけれど。



「俺…約束したの。」


相葉ちゃんが口を開く。


「何を?」


「必ず、見つけるって…。どこにいたって、見つけ出してみせるって…。」


相葉ちゃんは、自分の左手をじっと見つめる。


「あ、住所も知ってるんだ。6年後のだけど…。ニノの名前はね、」


「言わないで!!!!」


相葉ちゃんが強く否定する。


「…何で?名前くらい…」


「ダメだよ、そんなの。ズルしちゃダメ。ニノってあだ名も本当はアウトなくらい。」


当然だとでも言いたげに止められて、呆然とする。


「いやいや…そんなの、無理でしょ。顔も名前も、声すらわからない人を、東京ってだけで探し出すなんて。」


風間の言葉は当然だ。


「そうだよ、おいら絵だって描いてて…ニノの笑顔、ちゃんと描いてたの。それ見てもらえれば…!」


しかし相葉ちゃんは首を横に振って、呑気に空を見上げる。


「無理、かなぁ?見つかる気しかしないよ。運命の赤い糸があるのかどうかはわかんないけど、俺、必死で探すから。そしたら…きっと神様が、可哀想にって。仕方ないから、奇跡起こしてあげるって思ってくれると思うんだよね!」


にっこり笑う相葉ちゃんは、やっぱり綺麗で。


妙な説得力というか、本当に成し遂げそうな勢いがあって…。


「…ほんと相葉くんてさ、意地っ張りだよね。この前のバーベキューもさ、ほら、火を自分でおこすんだって木をクルクル延々回してさぁ。2時間も!結局つかなくて。馬鹿だよね。」


風間が苦笑する。


ニノの入ってた時だから実際見てないけど、何となく想像出来てしまう。


汗だくで必死になってる相葉ちゃん。


「人生ね、ちょっとくらい馬鹿な方が絶対楽しいよ?」


「ちょっとならね。」


「何だよ?!風間ぽん俺の事、結構馬鹿って思ってる?!」


「だいぶね。」


「こんにゃろ!!」


2人がじゃれつくのを見て、自然に笑みがこぼれる。


おいらも決意を固めて、口を開く。


「おいらも…会いに行く。6年後の、9/15…翔くんが待ってるはずだから。」


「え、翔くんって…あれ、もしかして……うそ、俺、え…」


相葉ちゃんが顔面蒼白する。


「んふふ、言わなくてごめんね。でも大丈夫だよ。こうなることは決まってたんだ。事故の少年は、どうしたって死ぬことになってたんだ。多分。」


2人は不思議そうに首を傾げる。


「いいの。誤解はその時解けばいい。翔くんがどう受け取るかは分かんないけど、伝えたい。おいらの言葉で、おいらの姿で…。大好きって。」


そしたら、風間がふっと笑う。


「ほんと…変わったよね。その…ニノ?には、感謝してるよ。大ちゃんがこんなに前向きになったのは、間違いなくそいつのおかげでしょ?」


「……うん。自慢の親友なの。…2人にとっても、そうだと思ってもらいたいって思ってる。」


相葉ちゃんと風間は、顔を見合わせて、クスッと笑う。


「大ちゃんも馬鹿だな。」


「え?」


「くふふ。もうとっくに思ってるよ。ね、風間ぽん?」


「当たり前でしょ。知らなかったとは言え夢の国まで一緒に行った仲なんだから。あの時泣いたアイツは…間違いなく『親友』だよ。相葉くん、見つけたら、俺にも会いに来いって言っといてよね。探すのは…手伝わせてはくれないんでしょ?」


「うん、ごめんね!あの子のポイント上げたいから、1人で探す!」


「せせこましいねぇ~。」


「必死ですよ、俺も(笑)何せちゃんと出逢ってないんだから!」



ね、ニノ。


6年後の今、何してる?


この2人を知って、仲良くなって、


今すごくすごく会いたいんじゃないの?


おいらにとっての自慢の親友は


ニノにとってもそうだったでしょう?



大丈夫だよ。


絶対見つけ出してくれる。


今、この瞬間、ニノは絶望の中にいるかもしれない。


真っ暗闇な世界を手探りで歩いてるのかもしれない。


だけど、いつか必ず光は射し込む。


太陽が見える場所に出れるよ。


手を取って、引っ張り出してもらえるよ。



だって、それをしようとしてるのが相葉ちゃんなんだもん。



「…必ず、見つけてあげて。お願い。」


頭を下げると、相葉ちゃんがひゃっひゃ、と笑う。



「言われなくても!」



ほら、ね?


きっと、奇跡は起こるよ。


こんな優しく眩しい笑顔の人に、神様が微笑まないわけがないんだから。