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あなたの顔が
あなたの声が
あなたの温もりが
俺の中に染み付いて離れない
笑えるよ
あなたは俺の存在すら知らないのに
「…起きて。…悪い、一回起きてくれ。」
揺さぶられ、はっと目を覚ます。
「…あれ…?……はよ…ございます…」
目を擦りながら何とか挨拶を返す。
「…遅いよ。」
「え、今何時っすか…?」
掠れた声で尋ねると、櫻井さんが苦笑する。
「いや、いつもより返事が遅いなって。」
「…?すんません。」
「怒ってるわけじゃねーから(笑)今日大学行くから、適当にやってて。」
櫻井さんがリュックにノートパソコンから引き抜いたUSBとノートを仕舞いながら笑う。
あと、よくわかんない四角い缶みたいなやつ。
「え?大学…?土曜だよね、今日?」
「あー…まぁ。昨日休んじまったから、その分卒論進めたいんだよ。」
「わかりました…えっと…ヤる?」
「や、いい。起こして悪かったな、それ伝えたかっただけだから。夜も何時かわかんねーし、勝手に寝てていいから好きにやって?食費もリビングに置いとくよ。」
「はーい。ありがとうございます。」
「…あ。あと、洗濯機なんだけど。」
櫻井さんは出ていきかけた足をピタリと止める。
「はい?」
「小さいの、捨てるから。普通に俺と同じ方使って。」
は?
予想外の言葉に首を傾げる。
俺はいつも小さい方の洗濯機を使っていた。
洗濯するならこっちでやれと言われたからだ。
「……何で?」
櫻井さんがあー…と笑いながら、首の後ろに手をやる。
「…その…非効率だなって思って。とにかく、これからそうして。んじゃ行ってくるわ。」
「あ、はい…行ってらっしゃい。」
櫻井さんはそのまま出ていった。
昨夜は相葉ちゃんちで遅くまで起きていたけど、結局寝てしまったらしい。
ため息をついて携帯のメモを確認しようとすると、松本さんからのメールに気付く。
先にそちらをタップする。
『この前の水曜の分、今日イケる?』
火曜に、『明日は無理になった』と連絡が来ていたのだ。
松本さんは基本水曜予約。
でも仕事や都合によってその予約は変わる。
で、よく埋め合わせとして違う日に呼んでくれる。
多分、俺の収入を考慮して、だと思う。
勿論ヌ キたいっつーのもあると思うけど。
松本さんの番号をタップする。
数回のコール音の後、『もしもし。』と松本さんの声が機械に乗せて運ばれる。
「おはようございます、二宮です。今日行けるよ。」
『良かった。今から来て貰えると助かるんだけど。』
「分かった、今から出ます。」
電話を切り、すぐに支度をしてマンションを出た。
「うっ…ぁ……っ」
セッ クス自体、俺は数日ぶりなわけで。
智が櫻井さんとどうしてるかは知らないけど、その空いた期間のせいか、精神が身体に反応しているせいか、身体が馴染まない。
今日はバック をご所望な松本さんに、四つ ん這い になりながらこめかみに汗を流す。
シーツをぎゅっと握り締める。
「まつ、…っ、ゆっくり…!」
「だから、先生、だろ?」
背後にいる松本さんの口角を上げた顔が目に浮かぶ。
松本さんは設定決めてヤ んのが好きで。
電車の中の痴 漢設定とか、上司と部下とか。
基本無理矢理系の、ノンケ を犯 す設定が好きらしい。
この間智になってた時に鬼電かかってきてて翌朝慌てて埋め合わせ行った時は説明しながらだし特に何もしなかったけど、設定ありきが多い。
そういう、いわゆる普通ではないプレ イを俺みたいなのに求める客は結構多い。
恋人には言えないから、っていうのも何度か聞いた。
でも松本さんは恋人はいないみたいだし…
叶わぬ恋をしているんだろうか。
ま、そんなこと俺には何の関係もねーけど。
「せん、せっ…、やめっ……んっ、ぁ…!」
「こんなに反応 しといて何言ってんだよ、あ?」
きゅっと 胸の 尖り を摘 まれる。
ビクッと腹の奥が跳ねる。
「せんせぇ……、あっ…」
「声、我慢しろ…他の生徒に聞こえんぞ。」
生徒。
その設定が、向こうの俺──智と相成って容易く想像出来てしまう。
ちらりと脳を掠めたのは相葉ちゃん。
アイツは、どんなセッ クス するんだろう…なんて。
んなの、俺とは微塵も関係ないのに。
何でこんな瞬間に思い出してしまうんだ。
ぐぐ…っと挿 れられ現実に返ると、汗が顎まで伝う。
「ニノ…っ、」
──ニノ…っ
呼ばれたことのない名前を、記憶の中の明るい声が切羽詰まって呼ぶ。
バック だから良くなかった。
松本さんだと視界に捉えていれば、こんな余計なこと考えずに済んだのに。
「くっ……はぁっ……あぁっ!!」
何だかいつもよりも感じ てしまって、全部埋められた瞬間、俺の猛 りから 白濁 したそれがシーツに飛び出した。