「……さん、……さん、入られまーす!」
放心してて名前を聞き取れなかった。
スタッフに促されてイケメンな男二人が入ってきて、慌てて前の開きを閉じる。(どうせ脱ぐんだろうけど、何となく。だって皆しまってるし。)
1人は写真で見た眉毛のイケメン。
もう1人は…何かキリッとした爽やかな感じの。
ん?プロが……2人?
「お、全員めっちゃイケメンじゃん。皆友達なの?」
眉毛が俺らではなく風間に尋ねる。
「レベル高いっすね~!」
爽やかがニコニコ笑う。
雅紀は嬉しそうに「レベル高いイケメンだって♪」と二の腕つんつんしてくる。
まぁ、、悪い気はしない。
イケメンっつー評価は当然だけど。
「そう。かなりの逸材引っ張ってきてくれたのよ。使えるねあの子。」
おさげちゃんの話だろう。
眉毛が満足そうに頷く。
「えーと、…奥の2人も、はじめまして。松本です。松本潤。結構この世界では有名だけど、皆知らないだろうね。女相手のはほとんど出てねーし。で、こっちが~」
「生田斗真です。女相手がメインだったんだけど、ある企画で松潤に開発してもらって男にハマった感じでぇーす!」
チャラいポーズを決める生田には実は見覚えがある。
確か女に人気のイケメン男優だ。
前ハメた女が好きだと言ってたから覚えてる。
その女の顔は忘れたが。
智くんとニノも俺らのところまで来て、それぞれ簡単に苗字だけを自己紹介をする。
松本が顎に手を当てて、しばし何かを観察する。
な、何だよ?
不安になっていると、バスローブを後ろから摘まれる。
振り向くと、智くんが眉を下げて俺の影に入るように身を隠している。
松本の目は完全に智くんをロックオンしてるから警戒するのは当然だ。
何となく俺も腕を伸ばし、智くんを守るように後ろに隠す。
松本を軽く睨むと、クスッと笑われる。
「ごめんごめん、そんな警戒しなくていいよ。可愛い顔だから女の子みたいだなと思ってさ。」
両手を顔の横まであげて無実だと言わんばかりに笑う。
「査定されてる感じは気分悪いッスよ?」
ニノが挑発的に上目遣いで睨む。
「こら、ニノちゃん!すみませーん、こいつちょっと口悪くて。」
慌てて雅紀がニノを宥め、ニノが舌打ちをする。
「悪かった、謝るよ。…全員大学生、かな?」
何も悪いとは思っていなさそうにクスクス笑いながら松本が俺らを見回す。
「そうだよ!ニノちゃんと俺は小学校からだけどね!あなたは?」
「俺?同じくらいよ。」
松本が雅紀に笑いかけ、風間の元へ行き耳打ちする。
風間も2、3言、2人でヒソヒソと話している。
「翔くん…あの人、なんか…こえぇ。」
智くんが俺にしか聞こえないような声でぽつりと言う。
何もいい返しが浮かばなくて、ぎゅっとその手を握る。
「…よし、決めた!大野くんと櫻井…くん?は俺ね。二宮くんと相葉くんは斗真、お前で。」
「うっす!」
流石に6人は多いだろ、と思ってたら、プロに対して2人ずつって感じなのか。
俺と智くんが交互に松本を…
それとも…3 P が2組ってこと??
まさか。
3 Pの経験はあるけど、男でとか無理だろ。
とにかく、俺は智くんとだ。
何を考えてこのペアにしたのかは分からないけど、「翔くん…」と不安げに見上げる智くんに、力強く頷く。
大丈夫だよ、俺がついてる。
…って俺も経験ないしどうしていいかわかんねーけど。
同い歳の男なのに、不思議なもんで。
ぎゅっと握り返された手を守らなくてはと、強く思った。
「部屋分ける?」
松本が風間に聞く。
「いや、折角友達グループなんだから一緒がいいかな。カメラもう1台足そうか?」
「そうだね。追えないよ?見所ありすぎて。」
ニヤッと笑う松本は自信満々で、なんていうか…肉食動物のオーラ。
ぶるっと背筋を冷たいものが走る。
……掘る側、だよな?俺ら。
「了解。あと2台足そうか、準備して。」
バタバタと数名のスタッフが部屋を出ていく。
松本が俺の方に1歩近づく。
「…よろしく、櫻井くん、大野くん。…名前で呼んでいい?ヤるからには仲良くしたいし。俺のことは潤でいいよ。」
にっこり手を差し出され戸惑いつつも右手を出す。
「…わかった、潤。」
軽く握手をして、頭を下げる。
「よろしくね、翔くん。…大野くんも。いいかな、握手。」
松本が智くんにすっと手を伸ばす。
「…よろしく…。」
智くんもおずおずと手を差し出すと、松本はすかさずそれを両手で包み込む。
「よろしくね、智。」
何で智くんのことだけ呼び捨て?
ムッとして、ぐいっと二人の間に入る。
「金のためにさっさと終わらせよーぜ。」
視線は松本を睨んだまま、背後に隠した智くんに言う。
「…わかった…。」
はぁ、とため息をつく智くんを背にした俺は、松本がクッと笑ったのを見逃さなかった。
「言っとくけど経験ねぇから。」
スタッフが淡々とロー ション やらゴム やら追加のカメラ機材を 用意してる間に、松本に軽くジャブを打つ。
「そっちのが燃えるよ、ありがたい。」
ニッと笑う松本に、いよいよ不安が募る。
「……俺ら、男役だよな?」
「ん?そうだよ。見てわかるでしょ。」
松本が何を馬鹿なことを、という感じで笑う。
そ、そうだよな?
流石にケ ツ なんて弄 ったこともない俺らに挿 れるとか有り得ねぇよな?
こっそり安堵の息をつく。
当たり前だ。
俺は 柔 らか~いおっぱい がないと 勃 たない!
そんな、男の 薄っぺらい胸に ごつごつした筋肉質な身体に、興奮 するわけが……
あれ?
さっき、俺が ヌ いた時考えてたのは……
目を瞑って思い出していたのは………。
「翔くん?」
難しい顔をしていたんだろう。
当の本人である智くんが覗き込んできて、飛び上がる。
「な、な、な、何でもないよ!!」
ないない!
そんなわけない!!!
俺が智くん想像して ヌ くなんて!!!!!
「そう…?」
「顔赤いよ、翔くん?」
松本がまた笑ったけど、ガン無視だ!
俺は!!
女が!!!!
好きだ!!!!!!!
それだけは間違いねぇ!!!!!!
…よしっ!
謎の気合を入れて、両頬をバチンと叩いた。