世界一難しい恋?1 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


あまりに長くなって自分で引いてる。
おかげで時間めっちゃ遅くなっちゃった、すみません。
和さんの絵に思いを馳せ過ぎた。(笑)
マジで松本さんの誕生日危ない…(T_T)w










世界一難しい恋。



…などというドラマが巷では流行っているらしい。


聞けば、社長と新入社員の女のラブストーリーだとか。


それが世界一難しい恋だって?


は、笑わせる。


そんなものレベルが違いすぎる恋をこちとらしてんだよ。


「難しいっつーか、無謀ですよね。」


カズは羽の手入れをしながら興味無さそうに言う。


「そうでもないよ。俺は天使堕としたからね。」


ジュンが自慢の尻尾を水に潜らせ、ぷるぷると犬のように水滴を弾かせて笑う。


「でも、天使は真逆だけど同類。ショウちゃんの恋は人間、しかも……男のシスター!」


マサキがたえきれずに腹を抱えてぶふふふ…!と笑い出す。


悪魔の俺が。


人間の男。


しかもシスターに。



……ありえねえだろ!!



そう思いつつ何度も自らの気持ちを否定したが、もう何年も彼を追ってしまう。


仕方ないだろ。


こういうのって、リクツじゃない。


つーか、男でシスターってなれんの?


そこもまた、リクツじゃない…。


「だけど、そろそろモノにしないと…」


「そうだよぉ、大王様に不審がられてるよ?ショウちゃんが最近おかしいって。」


そうなのだ。


悪魔としての仕事は人間を不幸にすること。


しかしここ数年の俺は、シスターに付きっきりで。


生涯取り憑いて、ずっとじっと我慢し続けその人間が人生を終える時に魂を根こそぎ頂くやり方もあるが、今の俺は取り憑いていなければ不幸にもしていない。


だから大王様が不審がるのは当然だ。


「不幸にしてその魂を齧るか、或いは……」


「この世界へ引きずり込んでしまうか。」


ニッとジュンが笑う。


ジュンの堕とした天使の…マッケンユウとかいう奴は、堕天使となり天界を追放された。


そして今、ジュンと仲良く楽しく…?暮らしている。


詳しくは知らない。


俺人間界見てばっかだし。


「どうでもいいけど、そろそろ時間なんじゃない?」


カズが尻尾で人間界の時計を指す。


「あ、ほんとだやっべ!」


「そろそろキメろよ。」


「ショウちゃん、ガンバ!」


そんなこと言われたって、どうしたらいいか、自分もどうしたいのかわからねんだよ!


返事をすることなく、俺はシスターの元へと慌てて降りた。




「あの…」


「あ、櫻井さん!」


ぱあっと華やぐ智を見て頬が緩む。


「今日は来ないかと思いました。」


「ごめん、バタバタしてて。」


智を今後どうしようか悪魔共と会議してた…とは口が裂けても言えない。


今の俺は祈りを捧げに来た善良な市民だから。



この教会には5年ほど通っている。


幼い頃から親に捨てられ、拾われた教会で男なのにシスターとして育てられた智。


しかしパッと見違和感のない程、その中性的な顔は修道着に馴染んでいる。


恐らくここを尋ねる人間は、智のことを男だと思っていないだろう。


とはいえ、俺が来る時、祈りを捧げにくる者や他のシスターや神父は必ず居ない。


尋ねる時間には他の連中に何かしらの用事やハプニングを作り、智と二人きりになれるように裏で手引きしている。


更に毎回せっせと教会に結界を張って誰も入らせないようにしてる俺のことを、天界にいる神はどう思っているのだろうか。


そんなくだらないことを毎回考えてしまう。


「早速お祈り始めますか?」


「うん。お願いします。」


正直言うと何を祈って何を考えてればいいのか、さっぱり分からない。


しかし5年間通い続けたおかげで、カトリックの所作や流れは悲しい程身についている。


悪魔だっつうのに。




「櫻井さんは、今日は何のお仕事ですか?」


一通り終わると、智が興味津々で訪ねてくる。


「ああ、今日は…夜ネオンをつける仕事をするんだ。」


「ネオン!夜になると7色に光る看板…でしたっけ?」


「はは、7色ではないけど…色とりどりに光るよ。文字や絵が縁取られて、それはもう眩しいんだ。」


「へぇ~!素敵ですね!」


勿論、仕事なんてしていない。


これは適当に並べる嘘だ。


日替わりで仕事をしていることにして、智に外の世界を教えることが俺の日課だ。


智はずっと修道女に囲まれて育てられた。


夜の街も、酒も、タバコも、ドラッグも、オンナも、勿論オトコも。


何も知らない。


純粋無垢のままこんな窮屈な要塞に収容されている、地上の可哀想な天使。


だからこそ俺はずっと気になっていた。


最初は、


『あの純粋な目が穢れていくところを見たい』


『人には善意しかないと思っているその真っ白な心に、漆黒の墨汁をぶっかけるように裏切り傷付けられる姿が見たい』


というような、実に悪魔らしい感情だった。


取り憑こうか、それとも自分が人間のフリをして近付きその役目を担おうか。


考えた挙句、まだ10代のそいつの余命は長いと判断して後者を選択。


近くで接してみて、その人柄と笑顔に堕とされたのは言うまでもなく俺の方だった。


優しくて、


儚くて、


無知で、


無垢で、


憐れな大野智。



不幸にしたくはない。


悲しませたくはない。


苦しませたくはない。


涙を見たくはない。



だけど、一緒にいたい。


矛盾した想い。



悪魔の俺がシスターと一緒にいることなんて、叶う筈がないのに。