Cry for you(山フェス)上 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


yayosatoさん♡のお祭りに初参加させて頂きます。
素敵企画、ありがとうございます✧*。(ˊᗜˋ*)✧*。

お初の方、初めまして!タカと申します。
ブログ始めてもうすぐ1年の若輩者です、よろしくお願いします。
お馴染みの方、とうとうきましたねっ♡
めいっぱい山の日満喫しましょう🍀(`・3・´)人(´・∀・`)♡

初の山の日に
地味にダークな話を持ってきてしまってすみません。w
さほど苦しくて痛い話ではありません、ご安心ください。









ヒューーーー……………



……ダァン!!!






花火の音がガラス越しに響く。


電気を消した部屋の中は、ガラスを震わす夏の音と妙に響く時計の音以外は静かだ。


海側の窓が一面ガラス張りになっていて、空に色とりどりの華が開く度に2人の横顔がその色に照らされる。


光ってから爆発音が届くまで、数秒。


その差異が、視覚よりも離れた距離を物語る。


しかし小高い丘にそびえ立つこの別荘は、海に面していて空に咲き誇る華を遮るものが何も無く、夜空と反射する海面に大きく煌めいている。


そのガラスの前で、重なる影。


床を背にした男の目が不安に揺れる。


「…な、にを…」


「いいでしょ。どうせもう会えないんだし。最後くらい──」


2人の声を搔き消す花火の音。



──俺のこと恨んで、一生忘れないでね。



花火の光を背負った男は言った。


組み敷かれた男は、背後の閃光で見えづらい彼の顔が笑った表情に見えたのに、どこか泣きそうだと感じた。







「今年も行っていい?」


「あ、花火?…いいよ。」


「サンキュ!」


毎年恒例になった、父ちゃんのアトリエである別荘を使っての花火大会は、恐らく今年で最後だ。


大学4年、7月現在。


来年にはバラバラになる仲間たち。


東京に出たり、地元に残ったり。


皆がそれぞれの夢へと旅立つ。


勿論、翔ちゃんも。



「翔ちゃんは…アメリカだっけ?」


「あー…うん。1年間、経営学を学びにね。」


「お父さんの会社、継ぐんだもんね。」


「まぁね。智くんは…来年どころか、もうすぐパリだよね。」


画家になるための留学だ。


本当は卒業してから行きたかったけど、向こうの学校の都合で仕方ない。


俺だけ一足先にサヨナラ。


「うん。夢だったから。」


「お互い遠いけど、頑張ろ。俺ら、海外組だし色々情報交換しよ!」


「…そうだね…。」


「しょーちゃーん!次青江教授の授業でしょ!南校舎だよ!」


「あ、わりぃ雅紀今行く!じゃぁね、智くん。8月の11日、よろしくね!他のメンツには俺から声かけとくから!」


笑顔を向けられて、胸がぎゅっと狭くなる。


この笑顔を、俺は──




壊すんだ。





「…え?」


「…ごめん。花火大会の会場は混むと思うけど…どうしても別荘で二人きりになりたいの。頼む。最後のチャンスなんだよ。」


駅前のカフェに呼び出したニノに頭を下げる。


花火大会前日。


翔ちゃんが皆を誘ってくれたはずだけど、ドタキャンさせてもらうことにした。


皆には悪いけど、翔ちゃんと二人きりにさせてもらおうと思って。


「…とうとう言うの?」


観察眼の鋭いニノは、とっくに俺の気持ちに気付いていた。


多分…俺より早く。


翔ちゃんに恋人がいないから、ワンチャンあるからさっさと告れと何回急かされたか分からない。


だけど俺は友達として隣に居ることを選んだ。


でも…



もう、それも終わりだ。



「……うん。襲う。つーか犯 す。」


「はっ?!」



ニノが驚いた拍子に椅子が揺れ、背もたれに掛けてあったリュックを落とす。


半開きだったので筆箱やゲーム機のケースなどの小物が飛び出し、拾い上げながらも動揺して上手く収められない。


「ま、まっ…えっ、何で?」


「断られるのは目に見えてるから、もういっそ嫌われて二度と会わない位でいいかなって。俺の留学も秋からだろ?夏休み終わればほとんど顔見合わさないで済むんだよ。」


アイスココアを細めのストローで吸い上げる。


口内に広がるほろ苦い甘味は、決心した俺の心を肯定するかのようにじわりと染み渡る。


「いやいや…え、何これドッキリ?…んなわけないか、いや、ちょっと落ち着きなさいって、ね?暴走してどうすんのよ。」


「そうでもしねぇと忘れられるじゃんか?俺は嫌われてでも憎まれてでも、忘れられたくねぇんだよ。」


翔ちゃんはきっと、忘れてしまう。


俺のことなんて。


俺はきっと、翔ちゃんのことを一生忘れられないから──。



「…まさか、こんなこと…アンタ達……はぁ…。」


「悪いとは思ってる。多分、5人で集まれんのはもうないと思う…。」


ニノが項垂れて頭をわしゃわしゃと片手で掻き乱す。


そのまま顔の前まで持ってきて、顔面の皮を伸ばしながら口まで下ろす。


ニノの顔の皮は柔らかく、その経過は若干ホラーだ。


「…まぁいーや、俺から相葉くんと潤くんに言っとくから。……ていうか、そっちなの?俺てっきりアンタが受け身の方かと。」


「何言ってんの。翔ちゃん世界一可愛いじゃん。俺が男役でしょ?」


「げほっ。」


ニノが大袈裟に咳き込む。


「何だよ?」


「いや……色々すげぇなーって(笑)まぁ、お幸せに?」


「ちげぇだろ。幸せを壊しに行くんだから。」


ニノがクッと喉で笑い、嫌味を込めた言い方で言い放った。




「じゃ、ご愁傷様。」