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今思えば
あなたの偶然過ぎるたった一言で
全ての壁をぶち壊したし
全ての道を繋げてくれたんだ
それがなければ、多分
おいら達の関係はきっと、
『ペット』と『客』なままだったし
おいらはきっと、
あなたへの気持ちを
この愛しいと思う気持ちを
もう、二度と───
ど、どうしよう……。
おいら、人生最大のピンチ。
「瓜が見つからない…!!!」
メモをどれだけ見ても書いてない!
部屋の中には、家具以外はギターくらいしかない!!
部屋の外に出てみたけどアパートみたいだし、ぐるっと回ったけど庭なんてない。
もー、二宮さん!
肝心なとこ抜けてるよ!!!
もしかして天然ってやつなの?!
最悪八百屋か商店で買うか…
しかないよね?
仕方なくメモに示された通り、鍵をかけて財布と携帯だけ持って家を出た。
が。
「うわ~…」
スーパーマーケット……明るっ!!!!
おいらたちの地域には商店か八百屋か肉屋か…
いや、スーパーマーケットくらいね、見たことあるよ?
テレビで。
だからすぐに見つけられた。
でもこんな…
「涼しいっ!!!いっぱいあるっ!!!!」
踊り出したい衝動をぐっと堪えつつ瓜を探す。
「あったあった…」
食べ頃のものを選び、ついでに櫻井さん?にオススメの瓜の食べ方を教えてあげようと他の食材も追加し、レジに向かう。
22歳なんだし、財布の中に1万円札何枚か入ってたからいいでしょ!
レジ前に立つと…
あれ?様子がおかしい?
「お客様。こちらセルフレジになっておりますので…。」
店員の綺麗なお姉さんに苦笑される。
「せるふれじ…?」
店員さんが困った顔で違うレジに連れて行ってくれた。
タクシーはなるべく使うなって書いてあったから…
人に聞きながら歩いてみた。
けど、
「そこのメトロの〇〇行きに乗って××線に乗り換えてください」
「××線?」
「メトロですね」
「まためとろ???」
「地下鉄は種類がありますから。まぁこちらは地上を走るんで改札は地下じゃないんですけど」
地上を走る地下鉄って…
支離滅裂じゃん!!
もーーーー理解不能っ!!!!
無理!!!!
四苦八苦しながらタクシーを捕まえ、タクシーに連れってもらうことにした。
いーよね?
とにかく遅刻厳禁だからねっ!!
着いたのはギリギリの時間。
ていうか、丁度の時間。
セーフだよね?
メモ通り部屋番号をホテルの玄関みたいなとこで押すと、『入って』と声が聞こえて飛び上がる。
「は、はい!」
あわあわと通り、エレベータに乗り込んだ。
「うわぁ……」
すごい。
廊下から見える景色は、先日夢で見た景色とはいわゆる逆側なわけで…。
大きなビルが立ち並ぶ景色に足が止まる。
ブー、ブー、ブー!
急に携帯が振動する。
見てみると、アラームが起動してポップアップが浮かんでいる。
『着いたよな?遅刻してたら殺す。』
こ、行動を読まれてる…?!
慌てて部屋番号を確認しながら走った。
ピンポーン。
迷いながらたどり着いた部屋前で、ドキドキしながらチャイムを押す。
すると、
「開いてる。」
とだけ言われる。
「あの…入ってもいいですか?」
「は?入れって。」
「ありがとうございます。」
ドア越しに会話をし、開けると…
瞳がつぶらで女優さんみたいなイケメンが立っていて。
「あ、あの、」
「…遅いよ。」
突然イケメンがおいらの知る言葉を口にするから、驚いて顔を上げる。
オソイヨ…!
オソイヨ知ってるの?!
「海老シュー!」
「はっ?!」
あれ?
何このリアクション??
「海老……しゅー……?」
「海老シュークリーム…あれ?オソイヨって…細井のじーちゃんとこじゃなくて…?」
「細井…?いつも5分前に着くから、いつもより遅いなって。」
「え、あ、遅い…あー!なるほど!そういうことか!遅れてごめんなさい!」
頭を下げて謝ると、イケメンがくつくつ笑う。
「何お前?今日何かおかしくね?」
「ご、ごめんなさい…おいら道に迷っちゃって、遅刻はダメって言われたからタクシーで来たんですけど…」
「…えっ、お前がタクシー使ったの?嘘でしょ?つーか、おいら…?」
「え…?ダメでしたか…?」
「いや、俺はいいけど…まぁ入れよ。」
イケメン…じゃなくて、櫻井さんが中に入るよう促してくれる。
お邪魔します!と玄関を上がった。
ら、めちゃくちゃ見覚えのある家!!
夢の中のおいらの家だ…!
「この家…!おいら知ってる!!真っ直ぐ行ったらリビングで…あ、ここトイレでしょ?!」
櫻井さんがぶっと吹き出した。