No control100 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


100話は、この人視点でした♡
多分この話では初。










【Side 雅紀】


テンポよくあっという間にどんどん決まっていく企画。


皆、ほんとスゴい!!!


皆が話してる間、俺は最初の頃を思い出していた。



智が、俺の夢を追うと言ってくれた時──。





いくら反対しても、智は頑として譲らなくて途方に暮れていた。


足りない頭でたくさん考えた結果、智は親には内緒にしてって言ってたけど、俺はこっそり二人に言いに行った。


止めてくれると思ったから。


いや、どちらかと言うと、チュウくんとハルくん位しか止められないんじゃないかと思ったからだ。



1から10まで、覚悟を持って説明した。


俺がヒート起こした経緯は智から聞いたらしく知ってたけど、智の決意を何も知らない二人は、物凄く驚いてた。


「智が、そんなこと…チュウくん、どうしよう?」


ハルくんがチュウくんを不安げに見つめる。


俺はぎゅっと拳を握って俯いていた。


だって、こんなの俺のせいだ。


智の人生をめちゃくちゃにするのは、俺が原因なんだから……。


怒鳴られるか、殴られるか。


チュウくんは今でこそ見た目爽やかっぽいけど、昔の写真を見る限り…やばい感じだ。


最悪生きてさえいればいいや、位の気持ちでの告白だった。


「雅紀。」


チュウくんの低い声にびくっと身体を強ばらせる。


すっと立ち上がるチュウくんに、反射的に目をきつく瞑る。


俺の前まで来て、そして…。



「……改めて。智が悪かった。」



直角に腰を曲げるチュウくんに拍子抜けする。


「…え、いや…今はそれどころじゃ…」


どかっと俺の前に胡座で座る。


「アイツも男だ。ケジメつけさせてやってくれや。お前には逆に苦しい思いさせるかもしんねぇけどさ。それでも…アイツが必死に考えて、これしか浮かばなくて、それを必死にやり遂げようとしてるなら。親としては応援するしかねぇんだわ。」


ポリポリと眉を人差し指で掻くチュウくんの困った顔と、


その顔を見てふっと安心するように笑うハルくん。


「……そうだね。チュウくんの言う通りだ。僕も応援したいよ。あ、もしまぁくんが良ければね?まぁくんがどうしても嫌なら、僕が説得するよ!…無理かな?」


「くはは!無理だな。アイツは俺に似て頑固だ。」


ニヤッと笑うチュウくんに、確かに!と吹き出す。


「頑固だよ。ほんとそっくり。」


「だろ?顔はハルの可愛過ぎる顔にそっくりなんだけど、アイツの中身は俺だよ。ヤンキーの血が流れてる。」


「ええっ、智は全然ヤンキーじゃないよぉ!でもチュウくんに似て心があったかくて男らしくて、しっかりしてて責任感が強いよね。」


「ば、バカ。ハルに似て可愛くておっとりしてて誰よりも優しくて、皆に愛されるお人好しなんだよ。」


二人の謎な言い合いに思わず笑う。


「くふふっ、息子溺愛じゃん!てゆーか惚気すぎだよ甥っ子の前でー!」


「ったりめぇだろ?自分の子もパートナーもいつまで経っても可愛いんだよ。お前んとこの親と一緒だよ。」


チュウくんが目を細めて笑う。


「そぉだよ。零治兄さんと美咲義姉さんはね、まぁくんがだーいすきなんだよ?だから…無理しちゃダメだよ?」


ぽんとハルくんが俺の頭に手を載せる。


何かじーんとしちゃって、うん、うん、って、畳を見つめながら小さく頷いた。





親父とかーちゃんに、それを打ち明けたのはチュウくんとハルくんを訪ねたその夜。


チュウくんが電話してくれたらしくて、話はスムーズに理解してくれた。


「智は本当にそれでいいって?会社の書類を偽ることは、公文書偽造って罪にあたるの。レイさんは別にいいけど…少なくとも世間にバレたら一時的に逮捕されちゃうのよ?」


「おい!ミサさん!俺はいいのか?!」


「智がどうしてもって言うんだ…どんだけ止めても、絶対やるって…」


親父の言葉を無視し、俯く。


「ミサさーん?!愛する夫は?!」


後ろで騒ぐ親父を見ないふりして、かーちゃんは俺の両肩を持つ。


「あのね、雅紀。あなたのしようとしたことはあなたの意思だから、あなたの責任よ。でもそれを引き継ごうとしてくれてる智は、雅紀の意思を汲んでのこと。だから智の自己責任だって私は突き放せないわ。


ただ…あの子は忠(タダシ)くんに似て頑固なところあるから、多分やめたりしないわね。だけどあなたは、本当は自分の夢よりも智を守りたいんでしょう?」


こくんと頷く。


智に計画を話してしまった自分に後悔している。


俺は無計画だし、いずれヒートでバレてただろうと思う。


なのに智に罪を感じさせてしまった。


智は何も悪くないのに…。



「だったら、あなたが全力で幸せになりなさい。」



「「えっ?」」


親父と声がかぶる。


「俺が幸せに…?何で?智を手伝うとかじゃないの?」


全然わかんなくて、首を傾げる。


かーちゃんは優しく微笑む。


「智が苦しくなったらいつでもやめられるように、雅紀、あなたが誰より幸せでいることが大切よ。あなたが幸せでいれば、智は良心の呵責に苦しまなくても済むでしょう?」


りょーしんのかしゃく


の意味がよく分からなかったけど、何となく察してうん、と頷く。


「お、俺もそう思ってたぞ。」


うんうんと腕を組みながら頷く親父。


…をまた無視して、俺はかーちゃんに笑いかける。


「わかった。俺、智が俺を見て『こんだけ幸せそうならもういっか!』って思えるくらい、楽しく幸せに生きるよ!」


「そう!その通り!さっすが私の子!」


「お、俺の子でもあるぞっ!!」


ぎゅーっとかーちゃんに抱き締められて、照れくさくって押し返す。


「もー、やめてよ!俺もう成人したんだよ?」


「バカねぇ。いくつになってもあなたは私とレイさんの子よ?ね、レイさん?」


やっとかーちゃんが親父に微笑みかける。


「…!そ、そう!!俺とミサさんの!二人の可愛い子だ!!うん!!!」


嬉しそうに目尻に皺を寄せる親父に、思わず笑った。



そうだね!


智を説得して止めることは、俺には出来ない。


なら。


俺は俺に出来ることをして、智を守りたい!


うんと幸せになるからさ。


智はいつだってやめていいんだよって。


俺を見て、『なんかアホらしい!』って呆れるくらい


楽しく幸せに生きればいいんだ。



過去はもう戻らない。


なら、未来を明るくすればいい。


簡単なことだ。



笑ってればいい。



智が不安になった時、俺の笑顔を見て安心できるよう


いつだって明るく、能天気に、笑ってよう。


俺にはそれしか出来ない。


…いや、違う。



俺にしかそんなこと、出来ない!!



今の智の心の支えになれるのは、お兄ちゃんである俺だけだと思うから。





「…まぁくん?大丈夫?」


「へっ?!あ、ごめん!」


扉の外の智の声に驚く。


トイレでぼーっとしてた俺を心配したのか、智が迎えに来たらしい。


慌てて個室から出て、ごめんごめんと笑顔で謝る。


「一気に話して疲れちゃった?」


「違う違う!くふふ、昔のこと思い出しててさ。」


「昔?」


「うん…昔があるから今があるよね!」


にっこり鏡に向かいながら手を洗う。


「それより、その指輪!櫻井さん?」


「…うん…全部終わるまで、番にならない代わりに。」


智が柔らかく微笑む。


可愛い笑顔はハルくんそっくり。


だけど、意志の強さはチュウくんそっくり。


頑固だしね。


クスッと笑うと、首を傾げられる。


「ああ、ごめんね?いや…その石ってブルートパーズでしょう?」


「うん、なんでわかったの?」


「11月の誕生石だよね。…俺の恋人の誕生日が、11月だからさ。」


微笑むと、えっ、と智が息を呑む。


「まぁくん…恋人いたの?」


「…聞かれたら言おうと思ってたのに、何も聞いてこないから…自分から言うのも変かなぁって…えへへ、ごめんね!」


ぺろって舌を出したら、なんだぁって笑われる。


「俺だけ幸せになっていいのかなって思ってたから…良かった!」


「え?俺、ずーーーーっと幸せそうだったでしょ?!」


そのためにたくさん笑って過ごしてたのに!


「まぁくんが無理してでも俺のために笑っててくれる性格だから。本当は辛いのかもしれないって…でもその笑顔は本物に見えるから…よくわかんなったんだ。」


苦笑する智を見て、堪らずぎゅっと抱きしめる。


「わっ!…まぁくん?」


「智…ごめんね。そんな気持ちにも気付かなくて。」


「…ううん。笑顔に元気をもらって安心してたのは、本当だよ?」



「…幸せになろ。俺ら。」



「……うん。幸せになろ。」



何だかわかんないけど涙が出てきて


抱きしめた智も肩を震わせてて


強く強く、抱きしめ合った。