No control90 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


イチャイチャ長かった。(笑)











【Side 大野】


~♪


注文した料理が部屋に届く。


食事専用のエレベータで、各部屋に無人で運ばれる仕組みだ。


基本は一人分だから、2回に分けてそれが届く。


テーブルに並べたトーストのセットを見て、ため息をつく。


「…櫻井さん…どこに行ったのかな。」


なんか、切ないな。


二人分の食事を目の前に一人でいるのは、急に侘しく感じる。


「いただきます。」


手を合わせ、頭を下げる。


いいもん、俺お腹すいてるし。


全部食べよ。


そう意気込んでトーストを手にするけど…


「.......。」


昨夜の食事を思い出して、その勢いは弱まる。


急いで食べてむせる櫻井さん。


くすくす笑いながら食べるコンビニのとろろそば。


何でもないものが、すごく美味しく特別に思えて


何してても楽しくって、幸せで…



多分、お付き合いが始まれば、こういう日々が続いてく。


だけど…櫻井さんにとって、番になれないって多分、すごく不安だと思う。


俺はいつヒートを起こすか分からないわけで


会社でもアルファとして生きてくわけだから、公表できないし


何なら松潤と番だと思われてるのに…。


『付き合う』ってことで、櫻井さんを縛り付けてしまうんじゃないかと不安でたまらない。


今は櫻井さんは多分…俺のこと、好きでいてくれてる。


だけど。


流石に無期限で待たされるのは、嫌気がさすのではないだろうか。


『いつか番に』…なんて、いつそうなれるか分からないただの口約束を盾に、櫻井さんの自由を奪うこと…したくない…。


そう思ったから、「恋人」と言われて驚いただけで。



「…まさか、ほんとに付き合うのやめちゃうのかな…」



自分で言い出したこととはいえ、こんな展開は望んでなかった…。


「…何やってんだろ、俺。」


はぁ、と項垂れる。


櫻井さんといると…俺、どんどん欲張りになる。


幸せになる資格ないって思ってたのに、櫻井さんと付き合いたい。


もっと一緒にいたい。


番になりたい。


結婚したい……。



「まぁくん…ごめん。」



こんな俺で、ごめんなさい…。






ピッ!



「お待たせしました!」


櫻井さんが戻ってきたのは、約5時間後。


2回目のヒートが終わってすぐだった。


帰ってきた!という気持ちが溢れて出て、思わず櫻井さんに飛びつく。


「わっ?!」


尻餅をつく櫻井さんの首に、ぎゅうと腕を回す。


「いってぇ…。ど、どうしました?」


「………会いたかったのっ。笑うなら笑えばいーよっ。」


数時間でこんななってる俺、バカみたいって思うんだろ!


だけど、すげぇ寂しくて不安だったんだから!!!


櫻井さんが、えっ、と驚いた後、ふふっと笑う気配。


「そこ、ほんとに笑う?!」


「…そりゃ、笑いますよ。嬉し過ぎて。」


よしよしって頭撫でられて、恥ずかしくって、でも嬉しくって。


ぎゅーーーーって首絞めたら、「ちょ、ギブギブ!」って背中をタップされた。




「…それ、何?」


櫻井さんの持っているビニール袋を指さすと、クスッと笑う。


「昼飯食いました?」


「…まだ。」


時刻は13時半過ぎ。


トースト二人分食べりゃ、そりゃ昼食は遅くなる。


「じゃ、これ。」


櫻井さんがガサッと出したものを覗き込むと、


「…これ…!」


ふわんと香る匂いと、この見た目。



例の中華屋のチャーハン!



「どうしたの?!」


「買いに行ってました。頼み込んで特別に持ち帰りにしてもらいましたよ。」


ニコニコ笑う櫻井さんにじーーんとする。


「めっちゃ嬉しい!ありがとう!」


「いえいえ。」


優しいなぁとただただ感心する。


俺が好きだって言ってたの思い出して買ってきてくれたんだ。


片道2時間かけて…。


それにしても…まさかチャーハン買いに行ってるとは。


予想だにしなかった展開にくすくす笑う。


「…どうしました?」


「いやだって…すごい心配しちゃった…まさか俺の好物買うために5時間かけて行ってくれてるなんて思いもよらなくて(笑)」


「はい?」


櫻井さんが訝しげな顔をする。


「まさか、俺がチャーハン買いに行くために出てったと思ってるんですか?」


「え、違うの?」


ご飯の準備をとテーブルを拭いていた手を止め、櫻井さんを見上げる。


「……そんなわけないでしょう!!」


えーーーっ!


じゃ何で??


首を傾げると、櫻井さんがポリポリと頭をかく。


「まさかそんな勘違いされてるとは(笑)…俺の目的は、こっちです。これのついでに中華屋も寄ったんですよ。田舎では買えませんから。」


ポケットからそっと出てきたのは……箱?


「何?」


多分、いわゆるきょとんって顔でそれを見る。


「……いいから、はい!」


ぶっきらぼうに手渡されたそれを開けると…


「えっ」



シルバーの指輪が入ってて。



「な…に、これ…」


「指輪って言うんですけど、知りませんか。」


照れ隠しなのか、櫻井さんが唇を口内に巻き込むような顔で言う。


知ってるわ!なんてつっこめるわけもなく。


ただ驚いてそれを見つめる。


「エンゲージリングです。本物は、全てカタがついてから。」


「ほん…ものって……」


掠れた声で尋ねると、櫻井さんがふっと笑う。



「プロポーズだって、言ったでしょ。」



ポケットから出てきた畳んだ紙をぴらりと広げると、それは婚姻届。


櫻井さんの分はもう書いてあって......。


「御守り感覚で、大野さんが持っててください。俺はいつ出してもらっても構いませんよ。それくらい、あなたのことを想ってる。気持ちが変わらない自信があります。」


「………。」


何も、考えられない。


固まったまま何も言えずに突っ立っていると、


「もう...」


と櫻井さんが業を煮やして俺の手の中から箱を奪い取り、指輪をつまみ出して箱と婚姻届をテーブルに置き、俺の左手をとる。


その櫻井さんの手は…小さく震えている。


勿論、俺も。


お互い震えてるから、なかなか上手く入らなくて。


ごくりとどちらともなく生唾を飲み込む音が響く。


やっと入って、櫻井さんがほうと息をつく。


しかも…ぴったり。


「…櫻井、さ……」


見上げると、その反動で左目から涙が落ちる。



「……これなら、番じゃなくても……付き合ってる証になりませんか?これでも…不安ですか?」



櫻井さん、違うよ。


不安なのは俺じゃなくて…あなたのことだったんだけど。


…でも…。



柔らかく微笑んだ櫻井さんに、俺は


自分の想いを呑み込んで、また飛びつくように抱きついた。



どすんと倒れ込む櫻井さん。


「いってぇ!」


あれ、デジャブ。



きっと、杞憂だ。


櫻井さんは…こんな俺のこと、ずっと好きでいてくれる。


俺らは、運命の番。


一度出逢ってしまえば、惹かれあって止まない。


だから、まだ見ぬ未来を心配して不安になるんじゃなくて


最愛の人を信じて、手を取って、一緒に立ち向かってもらうんだ。


ワガママに付き合わせて少し遠回りしちゃうけど


きっと、乗り越えられる。


この人となら.....。



堰を切ったように出る涙の中、左手に光る指輪を見て…


嬉しくなって、また首を絞めた。