No control50 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


嘘、もう50話なの?( ☉_☉) パチクリ。
オメガバースに興味を持って妄想してバーっと浮かんだのを適当に書き始めた割にすんごい長くなっちゃったなぁ…
他の話も書かないとなぁ…(-_-;)








【Side 大野】


結局、1週間の休みは来週取れそうなら取ってもらえることになって。


まぁくんがおじさ…社長に言っといてくれるってことになった。


松潤はあれからずっと黙り込んでしまった。


幻滅しただろうか。


理由も知らずにずっと協力してくれていた松潤。


守りたいと言ってくれたのはとても嬉しかった。


だけど、俺は守る価値のある男じゃないから。


ただ、まぁくんのためにはこの偽ったアルファとしての成功を成し遂げたい。


ゴールなんて、明確なものはないけれど。


俺はもっともっと、上に行かなくちゃいけない。


社内の誰もが納得するまで……。


だから俺は、例え松潤がベータだと告白しても、この戯曲を続けるんだ。


絶対に。




翌朝、出勤すると辞表が届いていた。


慌てて電話しても諸角さんは出ず、メールを確認すると辞めると書いてあって。


家に行こうとすると、櫻井さんが名乗り出た。


それを俺は承諾した。




「…あの日…金曜、すみませんでした…俺、酔っちゃって…その…。」


え、このタイミング?


なんで諸角さんのマンション前で??と思わず笑ってしまう。


「んふふ。櫻井さん、泊まってけって凄かったんだよ?」


「えっ?!そ、それは覚えてないかも…すみません…。」


やっぱ覚えてないか。


安心したと共にちょっとガッカリ…なんて。


や、いいんだ。


あんなキスや俺の戯れ言、忘れてくれ。


俺も、だなんて、二度と言わない。


そう誓ったんだから、覚えててもらってない方がありがたい。


「大丈夫だよ!お酒は楽しく飲むものだし。面白かったし(笑)」


今思い出しても笑っちゃう。


無防備な、酔った時の櫻井さんて可愛くて…。


「で…その……あの時、俺…」


「あ、課長!!」


諸角さんがタイミング良くスウェット姿で出てきて、思わず叫ぶ。


「大野部長…櫻井さん……。」


「突然来てしまってすみません。何か…あったのかなって。大丈夫ですか?」


諸角さんの目が変わり、俺を睨みつける。


「はぁ?何しらばっくれてんですか。どうせ聞いたんでしょう?隣の人に。俺があのオメガの抑制剤盗んで、誘発剤飲ませたこと。」


「えっ、いや、課長!違う!」


そう、違う。


櫻井さんは、何も言ってない。


でも…やっぱり、そうだったんだ。


ショックのあまり言葉が出ない。


何で、何で諸角さんがそんなこと──。


「はっ。幻滅しましたか?アルファにはわかんないでしょうねえ!俺らベータがどれだけ頑張っても上に行けない苦しみなんて!!大した努力もせずに才能に恵まれて環境も後押ししてもらえるアルファ様にはよぉ!」


わかる。


ねぇ、俺ね、すごくわかるよ。


だって俺は、本当は……。



「…じゃぁ、諸角さんはわかるの?オメガの気持ち。」


「はぁ?分かるわけないでしょう?というより、わかる必要あります?俺はオメガじゃないんだから。」


その通りだ。


俺はアルファじゃないから、アルファの気待ちは本質ではわからない。


「でも、あなたの言ってることはそういうことでしょう?属性の違う立場の人に、ベータのことをわかって欲しいってことですよね?」


だけど、ねぇ、諸角さん。


それってとても大切なことだよ。


きっと。


「…でも、その気持ちは間違ってないと思います。俺はね、違う立場だから分からないって思いたくないです。アルファだから、ベータだから、オメガだから…っていうの、嫌なんです。


あなたのことも理解する努力をしたい。色々、教えて下さい。ベータのこと。もし俺の下が嫌なら、異動すればいいだけでしょう?だから、辞めないで下さい。ね?」



お願い。


届いて。


これが届いたら、きっと…



あなたとはとても仲良くなれる気がするんだ。


自分の属性に負けないで。


それに悲観して、人生を諦めないで。



俺は知ってる。


オメガという属性の概念に立ち向かおうとしていた、強く温かい人を。


社会を変えようとしていた人を。


俺は知ってる。


ベータという立場なのに、オメガのふりをしてまで俺を助けてくれる優しく真っ直ぐな人を。


理由も分からないのに、毎日シールを貼って生活してくれていたお人好しを。



皆、諦めてないんだ。


闘ってるんだよ。



だから、お願い。


もう独りで苦しまないで……。



「…アルファのあなたに、俺のことなんて一生分かりませんよ。辞表は提出したのでもういいでしょう?帰って下さい。さようなら。」


静かにそう言われ、立ち尽くす俺らの合間を縫って諸角さんは行ってしまった。



「ダメかぁ」


自分の不甲斐なさに、苦笑が漏れる。


「やっぱり…俺が来ない方が良かったかなぁ。」


まぁくんも、松潤も。


きっと、彼らなら説得できたんだと思う。


自分を偽る俺の言葉は中途半端だ。


俺はこんな素敵な人達に囲まれてるのに、優しく包んでもらってるのに、部下一人助けてあげられない。


自分はなんて無力なんだろう。


情けなくて、たまらない。



突然、櫻井さんがぐいっと俺の腕をとる。


驚いて見上げると、櫻井さんが優しい目で俺を見る。


「飲みに行きましょう。奢ります。今度は絶対に酔いませんから。」



ああ、ここにもいた。



俺を優しく包んでくれる、惹かれて止まない人。