蠢くカオスの中で30 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。














【Side 智】


「まー君!お待たせ、久しぶり!」


「わぁサトー!暫く見ない間におっきくなったねぇ!」


「なってねぇわ。てゆーか半年しか経ってねぇ。」


夏の日差しが目に刺さる。


待ち合わせのカフェのテラスできゃっきゃと騒ぐまー君は相変わらずだ。


30歳ってすごく大人だと思ってたけど


実際は全くそうではないと、やっとその歳になって思い知る。


「あれ、半年前かぁ。」


「あん時はありがとね。」


「そんなことより、大作を二連続で描いてたって和から聞いたよ。」


「あぁ…そうなんだよ。前会った時描いてたのは細かい絵でさ。1年くらいかかったなぁ。今は結構、大きい絵を頼まれてさ。やっと完成して、クライアントに納品するところ。」


「良かったじゃん!」


ニコニコ笑うまー君から笑顔が伝染する。


優しくてあったかい、大好きな笑顔だ。


「まー君こそ。ペットショップ自分で開いちゃったんだから、すごいよね。」


「全然!和や翔ちゃんみたいに稼いでないしね。」


「その点では俺も一緒。」


お互いクスクス笑う。


絵は1枚に時間がかかりすぎるから、割に合ってない。


同じ物でも、名前が売れれば桁違いになるような世界だ。


ファンだと言ってくれる人が少し出来たけど、まだまだ新米。



「ご注文お決まりでしょうか?」


突然の店員に驚き、「アイスコーヒーで」と慌てて頼む。


よく見るとまー君はもうアイスティーらしきものを注文していた。


「稼ぎがあんまないからパフェつけらんないね…(笑)」


「バ、バカ!要らねぇし!てゆーかそんくらいつけれるわ!」


店員にクスッと笑われて恥ずかしすぎて俯くしか出来なかった。



「で、明日パーティで会うのにどーしたの?」


アイスコーヒーが置かれてすぐに流し込んだ。


その冷たさが食道の形や胃の位置を教えてくれる。


真夏でテラスって何でだよ、って思うけど、まー君らしいからつっこまない。(しかも汗だくだし)


「うん…明日のパーティでも良かったんだけど、実はさ。」


まー君が一枚の紙を俺に差し出す。


それはイメージ図だった。


「もし良ければ…看板、描いてもらえないかな?お仕事無い時でいいから!」


ぺこりと頭を下げるまー君に驚く。


「そんなん、いいに決まってんじゃん!てゆーかなんで今?もしかして仕事一段落するの待ってたの?言ってよ!絶対優先させんのに!!」


「やだ、それはダメだよ!仕事が終わってから描いて欲しかったの。」


まー君の店に一応看板はあるけど、イーゼルで立てかける黒板みたいなやつだった。


大きな看板を掲げないのは美学とかかと思ってた。


「気付かなくてごめん…」


「ううん、でも俺さぁ、どーーーしてもサトに描いて欲しくて!お金もね、オープンの時は借金してたからさぁ。今ならちゃんと払える!」


「バカ。金なんてとるわけねーだろ。」


「ダメだよ!お金はちゃんとしないと。」


まー君はこういうのにうるさい。


じゃぁ、とメニューを指さす。


「ここ奢って。パフェ付きで。それが報酬で。先払いだけどいい?」


頑固な俺の性格をわかってるまー君は暫く悩んで、ありがと!と笑った。




パフェを食べていると、テーブルに置いてあったまー君の携帯が震える。


「あ、ごめん。」


「出て出て。」


「ありがと。あ、もしもし?」


いつも笑顔なんだけど、まー君の顔が更に柔らかくなる。


電話相手のこと、すごく好きなんだなって伝わる。


俺もどこか恋しくなって、携帯を出す。


その瞬間に震える携帯。


ちらりとまー君を見ると、ドーゾ、と手を出してくれた。


「…もしもし?」


『あ、智?今大丈夫?』


「まー君と会ってるよ。」


『あ、マジ?ごめん。家の鍵忘れちゃって入れねんだよ。』


「はぁー?ドジ。もう、わかったよ。もう少しだけ話したらすぐ帰るから。」


『何なら行くけど。』


「ほんと?じゃぁ来て。駅前のね……」


説明して電話を切ると、まー君はもう電話を終わっていた。


「あ、ごめん。」


「もしかして…


翔ちゃん来るの?」


「うん、家の鍵忘れて入れないらしくて。」


「うはは、バカだな~!…でも、和も来るって!理由はね…俺が家に財布忘れてたから♡」


「更にバカじゃねぇか!!パフェ頼んだのに!(笑)」


「くふふ!…でも、久しぶりだね。4人で会うのも。明日会えるのに(笑)」


「そうだね。」


「潤もいたら完璧なのに!」


潤は手紙を読んだのだろうか。


返事は来ていない。


でも、何となく来る気がしてる。


何せ、フッて置いていったとは言え元恋人のパーティ且つ自分の誕生日なんだから。



「うちの和ちゃんとも久しぶり?」


「電話はたまにしてたけど…全然会ってないなぁ。忙しそうだし。」


「俺も一緒の家に住んでるのに朝と夜しか会わないから寂しい!」


それって普通じゃないか?と思いつつスルーする。


「翔くんとは?」


「俺も翔ちゃんと最後に会ったのは半年前かな?サトが同棲始める時。」


「ふふ、まー君に手伝ってもらったね。」


「何ていうか…感慨深かったなぁ。付き合ったのは知ってたけど、同棲って…二人がそんな風になるなんてね。」



そうだよね。


でも俺だってビックリしたよ?


和にフラれた時は暫く落ち込んだし。


でもその和が…ずっと大好きだったまー君と付き合った時は、全然ショックじゃなくて。


自分のことのようにすごく嬉しかったな。


そんで俺も翔くんのこれでもかって位しつこい求愛に負けちゃったわけだけど。


お揃いの赤と青のマグカップなんて揃えちゃったわけだけど。


俺、翔くんのこと、ずっと大嫌いだったのに……


でも、今や。



ゴロゴトゴトン、ゴロゴトゴトン。



独特な音が歩道から聞こえてくる。


不思議なリズムがあまりにも気になってそちらを見ると、見覚えのある顔に思わず叫んでしまった。



「あっ!!」


「えっ!!」


「うっそ…」


「お待た…えっ?!」


「このアイバカ……は?」





奇跡っていうのは、あるらしい。






そうそう、続き。



大嫌いだったのに、今や。


気持ちは真逆に変わってしまった。


いや、本当は元々…


だからこそ和はフッてくれたのかもしれない。


和のそういうとこ、相変わらず優しくて大好き。



だけど。


恋をしてるのは、翔くん。



やっと気付いたんだ。


遅いよね、ほんと。


お互い様だな、俺達は。



つまり。


何が言いたいかって言うとね。





俺は翔くんが好きだ。




大好きだ。




END