【Side 大野】
大野『マジで行くの?』
二宮『当たり前でしょうよ!』
松本『今更怖気付いたわけ?』
大野『だって~(T-T)』
そんなメールをしながらタクシーで移動する。
目深に被った帽子のおかげで運転手さんには話しかけられなくて安心する。
だって今日はそれどころじゃないもん。
俺今いっぱいいっぱいだもん。
翔ちゃんの家に行くことになってしまった。
…タコと本わさびを持って。
あんなライブのMC中の会話、絶対間に受けてないと思ってたのに、後日翔ちゃんから「楽しみにしてるね」って言われちゃったんだよなぁ。
どうしていいかわからず途方に暮れていたところ、ニノと松潤に何故か勘づかれて、洗いざらい吐かされた。
尋問みたいだったからね、マジで。
こんなん絶対違法だろってやり方で言わされたから。
え、内容?
……誰にも言えない……。
とにかくそういう流れから俺の気持ちを強制的に言わされ、何故かグループメールで援護射撃をしてくれることになったのだ。
…てゆーか面白がってるだけじゃね?
でも藁にもすがる思いとはこのことで、二人きりに耐えられる自信が全くなかった俺はその案を飲まざるを得なかった。
二人はテンション高めに勝手に俺の服やらその日の手土産やらを決めた。
それはもう勝手に。
でも自分で決めるんとか苦手だし、まぁそこは助かってんだけど。
何だかんだね。
二宮『とりあえず。実況報告はこまめに入れること。わかりました?』
大野『わかったけど~』
松本『リーダーファイトー!p(^_^)q』
二宮『私らは潤くん家で作戦立てながら見守っててあげるから。ね。』
松本『俺ら超優しい~(笑)』
…こいつら、ぜってー面白がってるだけだよなぁ…。
にょきにょき悪魔のツノが生えてる二人がニヤニヤ笑ってる図が簡単に想像つく。
そうこうしてる間に、タクシーは高層マンションの前で停まり、『支払』のマークに変わる。
…普通に。
友達んち行くだけ。
そう自分に言い聞かせて、深呼吸をしてからタクシーを降りた。
「ども。」
「わざわざごめんね?…何か照れんね。あ、上がって。」
「うん。お邪魔しま~す…」
玄関には噂通りディフューザー。
俺にはよくわからないけど、良い匂いが充満している。
「翔ちゃんちっぽいね。」
「何それ?」
眉を下げて笑う翔ちゃんが何か胸にくるから、視線を逸らして部屋を物色するフリをする。
俺と違ってセンスいいよなぁ。
あ、あれ、俺の去年のプレゼントだ。
思わずニヤける。
「あ、それもしかして?」
翔ちゃんが俺の手に下がったビニール袋に気づく。
「あ、うん。タコと本わさびだよ。もう作っちゃう?」
「そうだね、じゃキッチン準備してくるよ。」
翔ちゃんがキッチンへ消えたので慌てて悪魔二人に報告する。
大野『家入った。今からタコ。』
二宮『素晴らしい。ちゃんとバックハグね。』
大野『バックハグ?』
松本『後ろから切り方を教えればいいんだよ。』
大野『わかった。』
二宮『翔ちゃん動揺して指切ったりして?』
松本『そん時は舐めてやんな(笑)』
大野『アホか気持ち悪い』
「智くん、準備出来たよー。」
「あ、今行く!」
慌てて携帯を尻ポケットに突っ込んだ。