君だけの音を聞かせて11 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です!ご注意ください。















【Side 大野】






一生懸命ニノを探したけど、見当たらなくて。


すっかり暗くなりかけた街をとぼとぼ歩く。


胸が押しつぶされそうだった。


「……はぁ。」


自業自得だ。


習字、水彩画、水泳、サッカー、体操、ギター、空手、バレー、油絵、陸上、柔道、ダンス、そして歌。


他には何を習ったっけ。


勉強はからっきしだったけど、身体を動かしたり何かを作るのは得意だった。


習っては辞め、習っては辞め。


全部中途半端で辞めたいと言ったけど、母ちゃんは一度も怒らなかった。


多分、気付いてたんだろう。


おいらが受けた仕打ちや、状況に。


それでも母ちゃんは色んな習い事を何度も始めさせた。


次なら大丈夫、次こそ大丈夫って。


けど、毎回形は違えど恨みは買う。


おいらなんて、勉強も出来ないし、喋るのも上手じゃないし、オシャレでもかっこよくもないし…。


なのにその場所に飛び込んでしまえば目の上のたんこぶってやつらしくて。


必ず誰かに嫌な思いをさせてしまった。


おいらはもうやりたくないって毎回思ってたけど、一生懸命居場所を見つけようとしてくれる母ちゃんにどうしても言い出せなかった。



でも、歌だけは。


個人レッスン受けてオーディションやら舞台やらは全部出なかったから標的にされずに済んだ。


先生にもったいないってよく言われたっけ。


それでもじゅーぶん楽しかったし、誰も不幸にしていないという事実が幸せだった。


だからおいらは、誰にも迷惑をかけなかった歌で生きていきたいと思っている。




ニノに会う前に…ダンス教室を辞めないと。


じゃないと、ニノが辞めてしまうかもしれない。


それだけはダメだ。


気が合って等身大で付き合える大好きな友達だったのにな…。


悲しくなったけど、泣く資格はない。




「♪How many roads must a man walk down...」




すれ違う人にギリギリ聞こえないくらいの声で歌う。


ボブ・ディランの“Blowin' In The Wind”だ。


おいらの背中を押してくれる歌。


おいらをずっと支え続けてくれた歌…。


掠れる声で歌いながら、ダンス教室に向かった。




「あの…」


「あれ、大野、どうしたの?」


ダンス教室のオーナー室の扉を開けると、東山さんが「皆帰ったぞ?」と不思議そうに立ち上がった。


突然の訪問を詫びて、重い口を開く。


「急ですみません…ここ、辞めさせて下さい。」


「えっ?何で?あ、歌で仕事見つかったの?」


「……いえ……。」


下を向いて口を噤むと、東山さんが近付いて両肩を持って屈み、おいらの顔を覗き込みながら訊いてきた。




「もしかして、またいじめか?」






このダンス教室は、小学3年生の頃通っていた場所だ。


オーナーはその当時は東山さんのお父さんだったけど、東山さんもたまに教えてくれてて。


マイケルのコピーとかめっちゃ上手くて、よく見せてもらって必死で真似してたっけ。


東山さんに気に入られてダンスが楽しくて仕方なくなった頃、いじめは起こった。


レッスン着や帰る時の着替えがゴミ箱に入ってたり、靴に石が詰められてたり。


それでも踊ることがすごく楽しかったし、東山さんが「お前は才能あるから、ダンス辞めんなよ」って言ってくれてたから、頑張って続けてた。


だけどいじめを知っておいらを庇ってくれた子が、逆にいじめられて辞めちゃって。


おいらは東山さんに泣きながら謝った。


もう無理だ、続けられないと。


いじめのことは言わなかったからその時はすごくショックを受けてたけど、後から事実を聞いたらしい。




「あの時守ってやれなかった…本当に悪かった。」


「何で東山さんが謝るんですか!おいらなんかを雇ってくれてるだけで十分ありがたいです。」


「戻ってきてくれた時は死ぬほど嬉しかったよ。今回は守るから。何でも言ってくれ。」


「違うんです。いじめなんてないんです。ただ……また傷付けたから。大事な友達を。」


「二宮か…?」


おいらの仲良しなんて、ここじゃニノしかいないからすぐバレた。


こくっと頷くと、東山さんがにこっと笑う。


「じゃぁ、大丈夫だ。アイツはこんなことでお前から離れない。」


「…え?」


「二宮がダンスに限界を感じたとしても、お前からはきっと離れないよ。見てりゃわかる。親友だろ?」


ウィンクする東山さんは、とびきりかっこよくて、思わず見とれる。


「でも、ダンスを辞めちゃうかもしんない…」


「それは二宮が決めることだ。将来のことをしっかり考えて、な。それにお前のダンスは関係ない。そんなことより、お前が勝手に辞めた方が恨むと思うぞ。」


「……そう、ですかね?」


「当たり前だろ。お前は二宮のことを信じられないか?お前を…捨てるような人間だと思うのか?」


じっと目を見られ、おいらはブンブンと頭を左右に振る。


「じゃぁ辞めんな。歌で成功する時に辞めろ。わかったな?」


オーナー命令!と笑われた。


おいらは涙を堪えながら、深くお辞儀した。