現代社会において、抑鬱や不安は、自分が人に与えることができないことによって生じるといわれる。人間は他者に助けてもらえない時よりも、他者を助けることが出来ない時の方が、深く傷つくからだ。ポール・シーブライト著『ビジネスとしての宗教』は、宗教は生物学的な進化に起源を持つものでありながら、社会的な環境変化にも適応し発展してきたという。▼一般的な社会学の見方では、宗教は科学や合理的な思考と相容れない。従って、衰退する運命にあるとされていた。確かに北米や幾つかの国ではそれに該当する。だが世界を広く見渡せば、大半の国では宗教は活気に満ちており、現代の宗教はビッグビジネスと化している。米国の信仰を基盤とした組織の2016年度の収入は、総計3780億ドルに上ったという。▼著者は、宗教が世俗化の影響に適応してきたのは、「プラットホーム」という組織の形に負うところが大きい。これは、個人が自分の力では繋がれない相手と、互恵的に繋がることを可能にした構造のことだ。宗教の組織にとって信者は、「顧客」であると同時に生産的な「資産」なのだ。信者は自らの証の行為を通じて、コミュニティの発展に貢献してきた、という。▼だが宗教は、組織に本質的に備わっている特徴のゆえに、問題点も指摘される。例えば、「秘密や沈黙主義の文化」。組織の評判を守ることが優先され、高額寄付や虐待などが隠蔽されている。旧統一教会のように、組織の多くは正式な説明責任を負っていない。のみならず、政治権力との互恵関係を通じて、正式ではない形の説明責任もしばしば免れている。