6月に入った。じめりとした生ぬるい風が大学構内を歩く私の頬をなでる。
そういえば小学生からずっと馴染みの親友に彼女ができた。
彼にとっては、初めての彼女。いうなれば彼の心情というものは、遅く来た本格的梅雨入りを押し退けて、初夏の日差しが燦々と降り注いでいる様子に違いない。
私はというと、まだ梅雨から初夏にむけての準備中とでもいうところだろうか。
6月の季語といえば、紫陽花
私の実家でも雨の激しさに負けず凛として咲いている。
そんな凛々しくも愛らしい紫陽花を眺めていると、客人が姿を表した。
カタツムリだ。
ゆっくりまたゆっくりと自らの旅路をすすんでいく。
そんな客人に私は、質問を投げ掛けた。
「おい客人、そんなに急がず私の悩みを1つ聞いてくれまいか?」
一瞬 客人がこちらに耳を傾けてくれた気がした。
私は、続けた。
「私の親友にも、彼女ができまして、ほんとに羨ましいかぎりです。ところで客人。私の梅雨明けは、いつ頃になるだろうか?」
そんな質問に対し客人は、またせっせと紫陽花の葉を登りはじめた。
私わそんな客人の姿を見てふと思った。
客人は、ゆっくりゆっくり葉を登りその姿で教えてくれているのだと。
「焦らずともゆっくりゆっくり進みなさい。さすればいつか成就しアナタの恋愛の梅雨もあけるでしょうと。」
そんな客人を見つめていると彼は紫陽花の葉を登りきり、動きをとめた。
まるで山の頂きから壮大な景色を見ているかのように。
そんな客人を見て、私が感慨にふけっていると、大学構内を歩いていた時に感じた生ぬるいじめりとした風が、また私の頬を撫でた。