かつて私たちが住んでいたボロ団地の庭に現れ

こつぶと私にケンカを売りまくっていたモジャは

私たちが新居に引っ越すと

ほぼ毎日新居にも現れるようになり



私に対し
少しずつ友好的な態度をとるようになって
うちに通ってくる野良猫軍団の一員となった。
そんなモジャは
当時
この地域のボス猫として君臨していて
オス猫を見れば秒で飛びかかるくらい攻撃的だったのだけれど
メス猫、子猫に対しては
決して手を出さないジェントルマンで
中でも
自分がどんなに空腹でも
メスや子猫にエサを譲り
彼らが満腹になるまで
決してエサに口をつけない姿を見ると
この子は身も心もなんてイケメンなの!と
毎日感心だった。
そのモジャは今
怪我の後遺症で後ろ足が少し不自由で
美しかった長い毛もボサボサになり
すっかり年老いて
昔の凛々しさや雄雄しさもなくなって
道行く人から
汚い野良猫、と言われるまでになってしまった。
でも私は知っている。
モジャは外見がどんなに変わっても


中身は今も少しも変わらず
メス猫が現れればすぐさまエサを譲り
食べ終わるまで待つジェントルマンだ。
年老いて外見が醜くなっても
彼を可愛がっていた人たちが
手のひらを返したように冷たくなっても
道行く人に蔑まれても
少しも変わらないモジャを見ていると
この子は私なんかよりも
ちゃんと生きているなぁ、と思うのだ。

今日もただただ
1号が食べ終わるのを待っていたモジャは
1号が去るとすぐに
そんなに慌てなくても…というくらい
ガツガツとエサを食べ始めた(笑)。
本当は誰よりも空腹なのに
それでもモジャは
これからも自分の美学を貫いて
女の子の前では平気なフリを続けるに違いない。
それがモジャの美学だと分かっているけれど
モジャももう若くないんだから
やせ我慢もホドホドにね、と思ってしまう私なのでありマシタ。