イチゴジャム(一期JAM) | 個と全体のエンドレスワールド

イチゴジャム(一期JAM)

2015年 10月初旬 San cristóbal de las casas,México

 

僕がメキシコシティに行っている間に一人のオーストラリア人が

カサカサに滞在し始めていた。

 

ドミトリーに入るとシングルベッドが小さく見えるほどの大柄な男がその巨体をゆっくり起こした。

ウェーブがかったやや長めの金髪が顔の左右に垂れており、彫刻のような端正な顔立ちを覗かせている。

「Hola」

「Hola」

「俺はアレックス」

 

僕は名前を名乗ると彼のベッド脇あるギターを見た。

「君もギターを弾くんだね」

彼は早速ギターを手に取ってかき鳴らした。

触りだけでも彼が相当上手なことがわかった。

 

「トシ、ブルース弾ける?」

「いや、得意ではない」

 

そういうとアレックスは頼んでもないのにブルースのコードやスケールを教えてくれた。

出会って半日で話している時間よりもセッションしている時間の方が長かった。

彼は人に教えるのが好きで、二言目には説明が始まってしまう性質だということを

理解するまでさして時間は掛からなかった。

 

やがてアレックスは個室に移り、いよいよ長期滞在する見通しになった。

 

ある日アレックスから映像制作を打診された。

「たけしのビートボックスと、シュンのアサラトと、ユウヤの笛と一緒にJAMセッションをしているビデオを作って見ないか?」

「面白そうだな、やろうぜ。」

アレックスはみんなに提案し、全員が二つ返事でやると答えた。

「昼間は太陽の光が強過ぎる、やるんなら夕方のテラスだ。」

時間と場所は僕が指定した。

 

夕日が煌々と照る中に四人は並んだ。

一人ずつのソロパートから始まり、やがて四つの音が重なった。

 

これが、広い世界でたまたま居合わせた旅人達の即興演奏である。

 

 

後日僕たちはアレックスとKATAと共に一つの音源を録音した。

僕がギターのリフとキーボードを担当し、アレックスにリードギターを頼んだ。

彼のかき鳴らす激情のような旋律には鳥肌が立った。

 

僕はその曲をスペイン語で流星を意味する”Meteor”(メテオール)と名付けた。

 

まだいつになるかわからないが、この音源を発表する機会が待ち遠しい。

 

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一期一会のジャムセッション

 

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