「あるヘラジカの物語」星野道夫の遺した1枚の写真から生まれた絵本 | ことりの木ノート vol.2

ことりの木ノート vol.2

日々のくらしのささやかなできごと 人との交流 大好きな手しごと 絵本 やりたいことへの一歩一歩…
色々な糸を紡いでいつか「ことりの木」というぬくもりのある布を織り上げていけたらと思います。
そんな夢への覚え書きノートです。

なんの予備知識もなく

本屋さんの新刊コーナーで目に飛び込んできたインパクトのある表紙と

「星野道夫」と「鈴木まもる」

おふたりの名前に惹かれて

この絵本を手に取りました


引き込まれるというのは
多分こういうこと

迷わず買いました(珍しい笑)

買ったあと
帰り道もしばらく
興奮したような

心が揺さぶられたままでした


アラスカに暮らす写真家、星野道夫は、ある日川でふしぎな頭蓋骨をみつけました。2頭の大きなヘラジカの角がかみあったまま骨になっています。
角ははずそうとしてもはずれません。

(中略)
同じ動物好きとして星野道夫と親交のあった鈴木まもるは、ある夜、突然このふしぎな写真が夢に出てきて、絵本を作ろうとひらめき、アラスカに飛びました。
そしてできあがったのが、この絵本です。

カラー文字は引用です


鈴木まもるさんの迫力のある絵と 
歯切れのいい文章

二頭の大きいヘラジカが
メスをめぐり死闘を繰り広げます

しかしそのさなか
二頭の角がガッチリとかみあって

はずれなくなってしまう

戦いをやめるわけにいかない…

そのうち二頭は疲れ果て
力尽き
動かなくなります

そこへやってきたのは…


大自然の営みと
生命のつながりが
ドラマチックに描かれています

星野道夫さんは写真家です

アラスカに魅せられて
アラスカに移住して
野生動物の写真や文章を記録する活動をされていました

そして1996年
取材中のヒグマの事故により急逝されました


私は星野道夫さんを
この写真絵本で知りました

「クマよ」は星野道夫氏の死後
彼の遺稿と使用写真のメモをもとに作られた絵本だそうです

この絵本に出会った時も
今回の「あるヘラジカの物語」に出会った時のように
心がザワザワと揺さぶられた…

そして時折
その感覚を思い出したくて
今でもよく
本棚から取り出す

今では…ほーっと心が静まる感じ

私にとって
そんな絵本です




そして鈴木まもるさん

鳥や鳥の巣の図鑑のような
「ぼくの鳥の巣絵日記」

最近ではかこさとしさんの原案に絵を担当した「みずとはなんじゃ?」

そして…「あなたがだいすき」

時に緻密で繊細
だけど柔らかくてあたたかい

私が鈴木まもるさんに出会ったのはこの絵本

15年近くも前のことです

鈴木まもるさんが自身の子育ての中で記録した幼な子のしぐさ、表情
言葉以前のことばたち

「絵と文字」だからこそ伝わるリアルもあるんだなぁと気づかされます

匂い
手ざわり
そんなものまで

どのページからも
とっくに忘れてしまった「あの頃」の
甘やかな瞬間が
溢れてきます


そんなおふたりの思いを根っこに
形になった絵本が
「あるヘラジカの物語」です


この絵本を
子どもたちの前で読んでみたい
子どもたちと読み合いたい!

この物語に触れた時の
子どもたちの表情
息づかいを感じたい…

今はまだ、難しい時期ですが
それだけに楽しみです


ちなみに

この絵本制作のきっかけとなった
星野道夫さんの1枚の写真は
裏表紙に載っています


そこまでが
この絵本の物語です

どうぞ…
この物語を
味わってみてください




「あるヘラジカのものがたり」
   星野道夫 原案
 鈴木まもる 絵と文
 あすなろ書房


「クマよ」
 たくさんのふしぎ 傑作集
   星野道夫 文・写真
 福音館書店


「みんなあかちゃんだった」
  鈴木まもる 作
 小峰書房