高校生の頃、同級生の友達に「彼氏が出来た」と報告されたことがあった。


いわく、大きな格好いい車に乗っていて、休日にはドライブで遠い場所まで連れて行ってくれるそうな。


「この前もオールで友達と一緒にカラオケしてきた!!」


 と嬉しそうに笑う友達は18歳、相手は確か20代の社会人。


出会いは当時流行っていた◯バゲーという出会い系サイトの地元の掲示板(うろ覚え)。


友達がそれでいいなら、と生温い目で見守っていたが、ある日「お金を貸してほしい」と電話がかかってきた。


「彼氏のお母さんが入院してて、手術でお金が必要なんだって」


その時に私はこんな話をした。




「なんで親じゃなくて私に相談したの?」

「え」

「普通、真剣に交際している恋人同士なら、まず相談するべきは彼女の友達じゃなくて“親”だと思うなぁ」

「親にお金貸してなんて言えないし、急がないと危ないらしくて」

「彼氏の親の手術のためならただの借金じゃないからむしろそっちに話を通すべきで、仮に私がお金を貸すのはおかしいと思わない?筋を通すなら彼女の親でしょう。ちなみに、手術費用っていくらなの?」

「確か…」


「10万円」



ん?

これは詐欺の可能性が高いぞー、とうすうす勘づいていた私は、冷静に質問を繰り返した。



「10万円で出来る命に関わる手術って何?盲腸?その前に、アンタら最近友達とオールで遊んでたって言ったよな?病気の母親ほっぽって遊ぶってどういう神経してる?」

「彼氏は仕事忙しいから、なかなか遊べなくて」

「だから、遊んでる場合じゃないでしょ、って話なんだけど」

「息抜きに…」

「息抜きしてる暇なくない?彼氏大丈夫?」

「いいから、貸してくれるの?くれないの?」

「貸してもいいけど、借用書用意するから。それにきちんと記入してくれたらいいよ」

「え…なんでそんな意地悪するの?私たち友達でしょ?」

「普通、友達なら借金の申し込みはしないと思うよ」

「うっうっ、こんなにお願いしてるのにひどい…」

「はぁ…彼氏とアンタとアンタの両親連れて私の家まで来れる?」

「ありがとう…」

「なんでありがとうなの?」

「え?だってお金貸してくれるんでしょ?」


「説教するんだよ」


「え…?なんで貸してくれないの?友達でしょ?」

「友達だから怒るし説教もする。借用書を書けばお金も貸すけど、まずそっちの親に話を通して、そこで断られてから私に来なさい。分かる?これもしかしたら警察に相談した方がいいやつだよ?入院してる彼氏の母親には会ったことあるの?」

「うっ、ひっく……あるもん…でもお父さんとは離婚してるから、彼氏が働いて家にお金入れてるって」

「(尚更遊んでる暇ないんじゃ)」

「ひっくひっく…今からそっち行くから待ってて…」

「印鑑持ってきて、あと親も連れてきてね」

「え…なんで…?」

「今までの話聞いてた?」

「うっうっ…なんで怒ってるの?怖いからやっぱり行かない…」

「は?」

ツーツーツー…






恐ろしいことに実話なんです。


あまりにも衝撃的過ぎて今でも携帯電話を持つ手が震えていたことを覚えています。


私は「説教」のあたりから割と本気で怒っていて、現場に彼氏もどきを引き摺り出そうと感情を剥き出しにしていました。


昔は口調悪かったのです、悪役の時の乱暴な口調は当時を思い出しながらやってるから割と抵抗ないのです。


まぁそれはさておき、前置きが長くなってしまって申し訳ありません。


何が言いたいかというと、「18歳は大人なのか」です。


AV新法で話題になりましたね。


初期のAV新法は「18歳は自分の判断でAVに出演できるか云々」からだったと思うのですが、私としては「親の承諾有りじゃないと判断出来ない」ので否定側でした。


だって、18歳ですよ?


AV出演が悪いのではなく、その先の未来を予測できるか?


デジタルタトゥーがどんなものであるか、その後の人生にどんな影響を及ぼすか想像したうえでの判断だと思いますか?


「私は大人だからなんでも一人で決められる」と言うかもしれません。


その心は素晴らしいです。


ただ不安なのは、生きてきた年数がたった18年だけで、それ故に無知であることを利用する大人がいるという現実。


悪意がありつつ表面上では笑顔で近づいてくる人の危険性を予測できるのか?


いざ危険に巻き込まれた時に対処できるのか?


上の友達の話であるように、友達が彼氏と同年代の社会人経験を積んだ自立した女性であったなら、決して私のところに相談には来なかったはずです。


知恵を刷り込んで他人を自分の思い通りにしようとする人間はどこにでもいます。


問題なのは「何が正しいのか分からない」判断ができないこと。


日本の場合、AV業界ならず性産業全体をタブー視し、本来入ってくるはずの情報を遮断することで悪循環を生んでいると気付いた人がどれくらいいるのでしょう?


なにも性産業だけではありません。


例えば猟銃所持許可がそれです。


「銃は危険だから持ってはいけない」は一見正しいですが、排他的な思考です。


正しい知識と技術を持った人間が持つことは社会貢献に繋がります。


とはいえ、一人一人にできることは限られているので、私なりに理想を形にできるよう頑張りたいと思います。



 



友達は彼氏と別れ、他の男性と結婚して二児の母をやっています