昔 ネコを飼っていた。

ホントに昔。

高校生のとき。


名前はデンちゃん。

なんでうちに来たのかはわからない。

よく覚えてないけど 家に帰ったら母か兄が仔猫に牛乳をあげてた。

でもうちでは飼えないからってどこかに捨てに行った。

車で行ったんだと記憶している。


その日の夜中に私の部屋の外で仔猫の鳴き声がした。

両手に乗るくらいの大きさのその仔が窓を開けた私を見上げた。

内緒でシーチキンをあげたら居着いた。

飼えないって言ってたはずの母が思ったより反対しなかった。


仔猫と毎日一緒に眠る。

日に日に大きくなっていく。

ノラ猫だったクセにすごく人懐っこい。

毛並みもいい。

近所のオバチャンたちにも愛想を振り撒く。

近所のオバチャン「キレイないい猫やねぇ」って会う度に言っていく。

多分 よその家でもおやつを貰ってたんだと思う。


デンちゃんはよく お友達を家に連れてきた。

もちろんノラ猫。

台所で自分のご飯を食べさせてあげる。

私や家の人が台所にいくと お友達は一目散に逃げる。

デンちゃんは「なんで??」って言わんばかりにお友達の逃げた方と私の顔をなんども見比べてからお友達の後を追って外に出ていく。


昼間 母が畑に行くと着いて行ってたみたい。

母が畑仕事をしている間 チョウチョやバッタを相手に遊び 母が帰ってくるとちゃんと着いて帰ってくる。

ある日 母が畑から帰ろうとしたらデンちゃんが居なかった。

「デンちゃん帰るよー?」って呼んでも居ない。

しばらく辺りを探したけど 居なかった。

勝手に帰ってくるだろうと思ったけど 夜になっても帰って来ない。

次の日になっても居ない。

1週間だったか2週間だったか経って諦めたころ 従兄弟のともくんがデンちゃんを連れて帰ってきた。

「友達に 猫要らん?むっちゃ人懐っこいんやけど」って言われて見たら 本家の猫やった」って。

デンちゃんは見違えるくらいおデブになってた。

でも 間違いなくデンちゃん。

きっと美味しいものをたくさん貰って食べてたんだろう。

2~3回 くっさいうんちをたくさんしたら 元のハンサムなデンちゃんに戻った。

よそに行ってたことなんて全く忘れたかのように戻ってきた。


ある冬の日 夜寝ようと思ってデンちゃんを探した。

居ないから こたつの中も布団の中も押入れの中も デンちゃんが居そうなとこは全部探した。

でも居ない。

「おかしいなー?」なんて思いながら 寝てたらお布団に潜り込んでくるんじゃないかと先に寝た。


次の朝になってもやっぱり居ない。

またどっかのうちの子になりに行ってるの??なんて思いながら朝ごはんを食べた。

ご飯を食べたあと 台所のこたつでゴロゴロしてたから休日だったのは覚えてる。


近所のオジサンが「おはよーございまーす」って玄関先で言った。

「はーい」って出てった先にはシャベルを持ったオジサン。

シャベルの上にはびしょ濡れのデンちゃん。

「お宅の猫やと思って」


デンちゃんの顔は半分なかった。

私がデンちゃんの首に赤いリボンで着けた小さな鈴は潰れてた。


多分 前の日の夜 遊びに出掛けたんだろう。

うちの前の国道で轢かれてたとか。

弟の友達が夜 8時くらいに通ったときには既にそこに居たらしい。


私と一緒に家に居れば良かったのに 夜は雨だったのに 
寒いのに夜遊びなんかに出掛けるから。。。

なんて思った。

オジサンが連れて来なきゃ またどっかで可愛がられてるのかもって思ってられたのに、とも思った。


デンちゃんがうちに居たのはほんの半年くらいだった。


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