うちの近所に魔女が住んでる。

優しい白い魔法を遣う魔女。


冬休みのとある日

塾の冬期講習に妹キャンを車で送って帰ってきたら 駐車場の手前で魔女を見付けた。

寒かったし 出掛けるようすだったので挨拶がてら声を掛けた。

「こんにちはーっ。お出掛け 近くなら送っていきましょうか?」

今までも何回かそう声を掛けたら「歩くのも運動のうちだから大丈夫よ」なんて断られたりしてたんだけど その日は違った。

「わぁ 嬉しい。本当にいいの?年末に主人が入院しちゃってね、毎日 病院に通ってて疲れちゃってるの」って喜んでくれた。


次の日の午後 仕事に行こうと玄関を開けたらドアノブに紙袋が掛かってた。

最初に頂いたのはなんだったかな?

「頂いたんだけど歯が悪いから食べられないの」
「大腸の手術したからこれはダメなの…」
「私もお友達から頂くんだけど たくさん貰うから食べきれなくって」
「同世代の友達もお一人様が多いからあげても困っちゃうし 家族で暮らしてる人に貰ってもらえると嬉しいの」

なんて理由を付けて それ以来 クッキーやお肉や野菜、自家製の干し葡萄や生姜糖、干ししいたけなど 美味しいものをくださる。


何が好きなんだろう?
何が食べられないんだろう?
好き嫌いは?

なんていろいろ迷ったけど 話の中で魔女はパンが好きなことを知ったから 私はそのお礼にパンを焼いて持っていく。

お互い家に居る時間帯が違うから手紙を添えて玄関のノブに紙袋を掛けるやり取り。


いつも食パンじゃ芸がないからリンゴジャムを煮たり レーズンパンにしてみたり。


この間 初めてレーズンパンを届けた次の日 魔女からの紙袋がまた玄関に掛かってた。

中身は生イカ。

すごく立派なイカで そのまま焼いて生姜醤油で食べたんだけど

取り敢えずお礼のTELをしたら魔女が「今日 私 誕生日だったの。昨日 病院から帰ったら美味しそうなレーズンパンが玄関に掛かってたからもう嬉しくって。夜 ちょっとだけ食べちゃったんだけど 今朝 ゆっくり頂いたわ」って仰った。

「息子がお花の卸しをしててね、誕生日にトルコキキョウをたくさん送ってきたからまたあげるわね」と言うので「お誕生日に贈られたもの 私が頂いてもいいんですか?」って聞いたら「仕事で扱ってるから量がね、すごいの。貰ってね」って 次の日 届けてくれた。








誕生日だったなんて聞いたら 何かお祝いしたくなって お花のお礼も兼ねて姉キャンとパウンドケーキを焼いて

でも 1本だと食べきれないよね、と思って2切れだけ可愛い袋にラッピングして持っていった。


数日後 じゃがいもをたくさん頂いた。

そのじゃがいものお手紙に子供の頃の思い出のおやつのことが書かれてた。

「じゃがいもとにんじんを千切りにしてチーズと小麦粉で混ぜてフライパンに丸く乗せて両面焼く。お好きな味付けでどうぞ」

その次の日曜日、すごくアバウトなレシピで作りながら「お水も入れて小麦粉もっと入れるのかなぁー…?」なんて思いながらも 書かれてる通りにじゃがいもとにんじんとチーズと小麦粉だけを混ぜて焼いてみた。

「子供たちと塩胡椒を少し掛けて食べました。思い出の味に近いといいんですが食べてみて下さい」ってパンと一緒に届けた。





夜 玄関のブザーが鳴った。

「今日は寒かったから早く帰ってきたの。お腹空いて帰ってきたら美味しそうなのがまた掛かってるじゃない?お礼言う前に今 食べてきちゃった(笑) 私より上手に焼いてあったわ」

って おやつを入れて持っていったパックにミニトマトを入れてくれた。




こんなやり取りをしばらく続けている。

ちょっとした楽しみだったりする。




魔女の誕生日のあった今月中に書いておきたくて でもこの頃 なんだか日記を書く気になれなくて

ずいぶんまとまりのない読みにくい文章になってるかも知れない(笑)