『神曲奏界ポリフォニカ ウィズアウト・ホワイト』 | 手当たり次第の本棚

『神曲奏界ポリフォニカ ウィズアウト・ホワイト』


我々の(あるいは、我々のと酷似した)世界と、ポリフォニカの世界。
二つの世界の大きな違いは、もちろん、精霊が人間の手の届くところにいるかどうかということだ。
そして、こn二つの世界が最も関わりあい、かつ、そこにある関連性が示唆されているのがポリ白ということになるのだろう。

かつて、ミナギ・クロードという人物がポリフォニカの世界を訪れた時に、我々の世界(と便宜上呼んでおこう)から持ち込んだ楽曲を、神曲として演奏した事件があった。
その時には、あくまでも、ミナギのしたこととされたけれども、実は、もっと根深いものがあるようで、興味深い。
なにゆえ、精霊とかかわりのない世界からもたらされたものが、より強い神曲となり得るのだろうか。
あるいは、精霊が介在することで、ポリフォニカの世界における音楽は、歪められた部分もあるのではないだろうか。

まあ、ポリフォニカにある音楽が全て精霊のために演奏される神曲というわけではないから、一概に言う事はできないかと思うが、いくら、演奏者の「魂の形」を音楽として表現するから精霊が来るとはいっても、その先には、「精霊になにかをしてもらうために、楽士が音楽を演奏する」という方向へ行き着くわけで、音楽という藝術が本来もつ方向性とは、そこで違ってしまうわけだ。
むしろ神曲とは、精霊を主旋律とする伴奏のポジションにあると言える。、
実際、神曲楽士の演奏の心得は、「伴奏法」で学ぶ事とかなり重なる。

それは、良い事なのかどうか?
おそらく、この世界における人間と精霊との関わりの是非は、そこに重なるのだと思うのだ。

さて、そういった背景の事はおくとして、本作の学園ラブコメものとしての側面だが、者がtりの集結を前に、どのカップル(?)も、落ち着く場所へ落ち着きそうだ。
スノウもジョッシュもそういう意味では、おめでとう。
デイジーもそこに含めるべきだろうけど、彼女の場合、父親と母親のロマンスがインパクトが強くて、まだちょっとかすんでいるのが残念。


神曲奏界ポリフォニカ ウィズアウト・ホワイト (GA文庫)/高殿 円
2011年5月31日初版