『ロランの歌』 | 手当たり次第の本棚

『ロランの歌』


ロマンス、但し本来の意味でのロマンス。それは恋愛物語ではなく、騎士物語をさす。
しかし、日本で有名な騎士物語というと、最初も最後もアーサー王伝説であって、それと同じくらいメジャーであるはずのローラン伝説については、あまり知られていない。いや、シャルルマーニュ伝説と言い換えても同じ事だな。

そのローラン伝説、岩波文庫とちくま文庫にそれぞれ入っているのだが、どちらかというと入手しやすいのは、やはり岩波ではないかと思う。
収録されたのも岩波文庫の方が古い。

騎士物語のほとんどがそうであるように、これも韻文なのだが(というのは、吟唱詩人が歌ったものだからね)、散文でなくてもokというファンタジイのファンには心よりおすすめする。
なんといっても、これは燃える!

『指輪物語』の最終刊、ローハンの騎士たちの活躍、とくにエオウィン姫の英雄的な戦いを憶えている人はきっとたくさんいるだろうが、おそらく、その根はこの歌にあるのだ。
ぎりぎりまで追い詰められた時に吹き鳴らされるローランの角笛。
ローランとオリヴィエの友情。(この友情は、親友の典型として引き合いに出されるたぐいのものだ)。

日本のファンタジイ好きにとっては、逆に、ハヤカワ文庫FTに収録されたいくつかのファンタジイ(たとえば、ディ=キャンプのハロルド・シェイもの)の元ネタにこれで触れられるという考え方も、できるかもしれない。


ロランの歌 (岩波文庫 赤 501-1)/著者不明