『怪談実話系4 書き下ろし怪談文芸競作集』 | 手当たり次第の本棚

『怪談実話系4 書き下ろし怪談文芸競作集』


眉に唾をつける、略して眉唾という言葉がある。
ほんとかどうかわからないから、その真贋を定めるために眉に鍔をぬるという事で、いわれを説明した民話などもあるわけだけれど、こと怖い話に関してこの言葉を出すとしたら、それはきっと、こういう心理が働いているのだ。
「もしほんとにほんとだとしたら、あまりにも怖い。だから、ほんとじゃなかったという事にしておきたい」
……ねえ?
ホラーは、フィクションのうちが安心できるのだ。
そして、それだけ、実話ですと言われたら、背筋がぞっとするものだ。

さて、この「実話系」という微妙なタイトルはなんだろう。
「実話」ときっぱり断っているわけではない。
実話のようなもの、という事だろうと思う。
まさしく、眉唾の原理を追うようしているのだ。
実際、序文にも述べられている。
虚実とりまぜたもの、と。

つまり、ここに収録された作品は、書き手が自らの体験をある程度盛り込んで作っているのだろう、という事。
しかし、その事実がどのくらいの割合かは、読者には全くわからない。
判断する術がない。
うん、時jつとしたら凄く怖いかも。
でも、まあ、「実話系」だからね。

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工藤美代子……「霊感DNA」
中山市朗……「怪談BAR」
福澤徹三……数珠の糸」
安曇潤平……「隧道」
小池壮彦……「春紫苑の憂鬱」
伊藤三巳華……「姫達磨~伊藤三巳華の憑々草 出張篇2~」
加門七海……「浅草純喫茶」
松村進吉……「私の話」
牧野修……「これは怪談ではない」
岩井志麻子……「あの女のその後」
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怪談実話系 4―書き下ろし怪談文芸競作集 (MF文庫 ダ・ヴィンチ ゆ 1-4)/加門七海,福澤徹三,中山市朗,伊藤三巳華,小池壮彦,安曇潤平,松村進吉,牧野修,岩井志麻子 工...
2010年6月25日初版