『対訳 イェイツ詩集』 | 手当たり次第の本棚

『対訳 イェイツ詩集』


イェイツという詩人は、英米文学をたしなむ時(エンタテイメントを含む)、そして神秘主義とかオカルティズムに触れる時、避けては通れない詩人だ。
アイルランド出身ではあるが、カトリックではなく、プロテスタントである。
人物像が複雑であり、それだけに、研究しよようとすると大変だろうと察せられるのだが、しかし。
象徴主義的だ、詩句のなかのこれこれが、何をさしているのだ、というような解釈など全てふっとばして、イェイツの詩は美しい。

本書は、イェイツの数多ある詩の中でも、有名なものを集めたと編者の文章にある。
薔薇の登場する詩などは最たるもので、言葉を追うだけで実に美しい。
情景ではなく、イェイツの場合は、文字通り、言葉に浸れる。
そこから、もし、情景が思い浮かべられるなら、更にラッキーだ。

詩人の多面的な人物像から、いろいろな切り口が得られるけれども、ただただ、その神秘的な美しさを堪能するのでも、いいと思うんだよな。

いろいろな文学作品に登場するイェイツの詩句が思い浮かぶならば、元の詩をみつけて詠んでみてもいいし、逆に、詩そのものを楽しんでから、アイルランドの伝説とか、そういった方面に発展していっても面白いと思う。

そして、訳も美しいけれど、やはり、詩は、原文のお供楽しまなくてはね。
対訳が文庫で読める幸せは、ひとえに岩波書店のおかげだ。
ありがとう、岩波。

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幸福な羊飼の歌
落葉
かりそめのもの
さらわれた子供
柳の園に来て
時の十字架にかけらえrた薔薇に
ファーガスとドルイド僧
世界の薔薇
平和の薔薇
戦いの薔薇
湖の島イニスフリー
愛の悲しみ
あなたが年老いるとき
誰がファーガスと行くのか
妖精たちの集結
空を行く妖精の群
秘された薔薇
彼は天の布を求める
アダムの呪い
双つめのトロイアはない
時を経て叡智が訪れる
〔 許せ、わが父祖よ 〕
灰いろの岩山
上衣
クールの野生の白鳥
アイルランドの飛行士は死を予知する
学者たち
釣師
私はそなたの主だ
一九一六年復活祭
〈再臨〉
娘のための祈り
ビザンティウムへの船出

内戦時代の省察
一九一九年
レダと白鳥
小学生たちのなかで
イヴァ・ゴア=ブースと
自我と魂の対話
三つの運動
クール荘園、一九二九年
クール荘園とバリリー、一九三一年
選択
ビザンティウム
動揺
ラピス・ラズリ
やさしい踊り子
拍車
彫像
老人どもが怒り狂わずにいられるか?
サーカスの動物たちは逃げた
政治
ベン・バルベンの下で


対訳 イェイツ詩集 (岩波文庫)/著者不明
2009年7月16日初版