『ヴァイキング、ヴァイキング』〈シャンディ教授シリーズ3〉 | 手当たり次第の本棚

『ヴァイキング、ヴァイキング』〈シャンディ教授シリーズ3〉

伝説の「ヴィンランド」は北アメリカだった!
コロンブスよりずっと前に、ヴァイキングがアメリカ大陸に到達していた!

……という話は、かなりアメリカ人の心をわくわくさせるらしく、北アメリカの「ヴァイキング遺跡」って、みつかったとかみつからないとかにせものだったとか、けっこう話題になるもの、らしい。
実際、ヴァイキングがとったと思われる航路はコロンブスのものとは全く違うし、航程としてはずっと短い。
氷に閉ざされるとかそういう危険はでっかいのだが、季節とルートと運を選べば不可能ではない……らしい。
いたかもね?
いたかもね?
北アメリカにやってきたヴァイキング。
うん、アメリカ人ならずとも、それは、かなりわくわくする話だと思う。

さて、そんな「ヴァイキング遺跡」が、バラクラヴァ郡にもみつかった。
しかも、今現在地上げにあっている、破綻寸前の農場の近くで。

農大の学長スヴェンソンはスウェーデン人だし、問題の農場の一族は、なぜか北欧系の名前の人が多かったり、遺跡なんかなくても、充分、バラクラヴァ郡は北欧臭さがぷんぷんしていると思うけど、まあ、それはそれ。
静かな(そして刺激の少ない)田舎町でいきなりそんなものが発見されたとあって、あたりは騒然。
経営難にあえぐ農場は、上を下への大騒ぎに見舞われるが、なんとそれは、幾つかの企みが絡み合った末の事件なわけで、実は今回、シャンディ教授はその状況そのものに、かなり振り回されてしまう(笑)。

それにしても、バラクラヴァ郡というところは、老人になればなるほど、したたかで元気がいいように思われる。
かくいうシャンディ教授だって50代後半なんだし。
もちろん、学生を含め、若々しい人々も出てくるのだが、彼等は常に、端役なのだ。

若いといえば、なんとシャンディ家にははやくも新しい家族が加わった。
といってもピーターは56歳、ヘレンだって40代ということで、人間の赤ん坊ではない(笑)。
ジェーン・オースティンというかわいい赤トラの子猫が住むようになったのだ。
シャンディ夫婦はさっそくこの子猫にめろめろみたいで、その様子がスイートな雰囲気を作るのに一役かっている。


『ヴァイキング,ヴァイキング』〈シャンディ教授シリーズ3〉(シャーロット・マクラウド作 高田恵子訳 創元推理文庫246-04)
1989年5月26日初版