『あたしをとらえた光』 | 手当たり次第の本棚

『あたしをとらえた光』

魔法か。それとも、狂気か。
たとえ、魔法でどんな凄い事ができたとしても、その二者択一が避けて通れないならば、どちらをとるか?
しかも、魔法をとれば、「短命」というおまけがついてくるのだ。

遺伝によって、生まれつき持っているというところを含め、本巻でも、バスケの才能のような普通の才能と、魔法との比較が行われる。
しかし、登場人物も読者も薄々感じて(というよりはっきり感じて)いるように、どう考えても、この世界における魔法とは、「呪い」にほかならないように思える。

ところが、ここに、全く新たな要素が登場するのだ。
それは、敵のようにも見え、味方のようにも見えるが、いまひとつ、意図するところがわからない。
しかし、この存在と関わる事により、一部の登場人物はバージョンアップしちゃうのだ(TRPGプレイヤーにわかりやすい言い方だと上級のジョブにチェンジ、みたいな)。
おまけに、主人公のリーズンは、短命な魔女が負う宿命にみごとにとらわれてしまうし、いやもう、物語がどっちの方向へ転がっていくのか、全然わかりません!(笑)

そして、先がどう展開するかわからないが、ある程度は読者に「こうなるかも、いや、ああなるかも」と想像をさせてしまうストーリーというのは、面白いこと間違いなし。

暗中模索しながら、主人公(たち)は手探りで進んでいく事になるのだが、こういった成長物語としては風変わりな事に、彼等を導くべき「大人」(または賢者)が、全くのところ、「全知の存在」からかけ離れているという事だ。
勿論、導き手が必ずしも「全知全能」であるはずはないが、それにしても、リーズンを導くもの(たち)は、多少なりともリーズンより経験を積んでいるというだけで、実は、彼等自身全くといっていいほど、ものを知らないという事になっている。
ここらへんも、「先の見えなさ」に一役買っているのだろう。

彼等は手探りのまま、どこへ行くのだろう?
物語はまだまだ続き、謎は……いっこうに、解ける気配がない。


あたしをとらえた光 (ハヤカワ文庫 FT ラ 3-2) (ハヤカワ文庫FT)/ジャスティーン・ラーバレスティア
2008年12月15日初版