『宙の名前』 | 手当たり次第の本棚

『宙の名前』

七夕の前後になると、ページをめくりたくなるのが、この本。
理由はもちろん、幾つかあるわけだが……。

一応、星空といえば、四季折々に眺められる星座が違う、という事になっている。
子供の頃などは、まだ自宅周辺でもそれなりに星座を空にみつける事ができ、ましてや田舎に行けば、見放題っ。
……だったのだけど。
そういう事をするのは、たいてい、夏休みであったりするな。

もちろん、空が澄んで星が綺麗といえば、実は冬の方が良いのだけど、どうも寒いせいかなんか、いや、オリオンにおおいぬ座のシリウスという目立つやつらがいるせいなのか、特定の※を探してしまいやすい。
そして、それを見つけると満足しちゃうんだね。
その点、夏の空は、みつけるものがバラエティに富んでいる。
……ような、気がする。

しかし、残念ながら、都市部周辺はどんどん便利になりこそすれ、その分光害がひどくなり、目立つ冬のやつらですら、昔ほど輝いて見えなくなった。
(オリオンの小さい方の三つ星が見えないからな……論外でしょう)。
なんど「残念なりっ」と言っても気がすまないが、そうなると、星空を見るというのは想い出の中の話になってしまい、それはやっぱり、夏休みに見た天の川などなんだなあ。
プラネタリウムに連れて行ってもらうなんてのも、夏休みが多かったように思う。
子供にとっての星空は、やはり夏のものなのだろうか。

今は見上げても見つけられない星座を見たくなる夏の時期、この本を開いてみるというわけ。
星空の写真というのは、これはこれでまた、生で見るのとは違う美しさがある。
つづられている言葉もいい。

ああ、でも、原油価格が高騰して、排出量取引なんて言葉があちこちで聞こえるようになって、サミットでエコがどうしたとか言うのならば、せめて、光害を減らして「環境に優しく」して、ついでに星空が見えるようにしてもらえないものだろうか。
……防犯上は、都合が悪いのでしょうかね。
それはそれで、夏なのに寒い話ではある。


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