『影の棲む城 (上) 』〈五神教シリーズ2〉 | 手当たり次第の本棚

『影の棲む城 (上) 』〈五神教シリーズ2〉

ご注目。
この表紙画像の人が、本巻の女主人公である、国太后イスタ。
めちゃ美人で私の好みに描かれているのだが、これでも40歳になろうという一児の母。
ところどころで、自分の年齢や、美貌の衰えを嘆くのだが、いいじゃないですか。
登場する男は、たいてい、彼女の美しさを認めている。
うーん、いいよね、美しく年齢を重ねた婦人って。

さて、彼女はかつて「神に触れられた」事があるという、不幸な体験の持ち主だ。
ありがちな話だが、そういう不幸な目に遭うと、たいてい、あとからも目をつけられちゃうのだ。
神々というやつに。
で、神々というのは、ふつー、人間の都合は一切聞いてくれないため、彼女は不本意ながら冒険に乗り出す事になり、
なんと、彼女が若かりし頃、やむなくおかした致命的なミスも手伝って、神と魔との、人間には迷惑な駆け引きに巻き込まれるのだ。

上巻は、まさしく、彼女がある神に導かれて、とある城にたどりつき、魔とめぐりあうところまでを語っている。
上下巻だから、話の前半とはいえ、ここではまだ話は劇的な動きを見せず、じわり、じわりと、魔の出現についていろいろな角度から述べられているだけだ。

これがほんとに「じわり」であって、
まずは神官がとらえて運んでいる途中の、イタチにとりついた弱い魔から始まり、
熊に取り憑いていた魔を経由し、
複数の人に乗り移った強い魔が登場する。
こいつがどうやら、主人公の敵となるようだが、なんとこれが、ヒロインが罪の意識を抱える家系の男子(美男らしい)と、その若い妻(かわいい美人らしい)と、庶出の弟(いい男らしい)、3人を複雑怪奇に結びつけており、そのあやとりをうまくこなす事が、主人公に求められているようなのだ。

なかなか、人間関係、複雑であります。

美男美女が揃っているわりに、ロマンスが絡み合うかどうかは、なんとも微妙なのだが、
とりあえず、神と魔は、この4人を介して複雑に絡み合っている、ように見えなくもない。
そう、はっきりと言い切れないほど、上巻では話が進んでいないのだ。
シーンは動いているんだけどね。


影の棲む城 上 (1) (創元推理文庫 F ヒ 5-4)/ロイス・マクマスター・ビジョルド
2008年1月11日初版