『朧夜ノ桜』〈居眠り磐音江戸双紙〉 | 手当たり次第の本棚

『朧夜ノ桜』〈居眠り磐音江戸双紙〉



磐音の最新刊は、待ちに待った、磐音とおこんの婚礼だ!
しかも、その前に桂川国瑞と櫻子の婚礼もあるし、金沢で磐音が出会った三味線師の鶴吉も江戸に舞い戻ってくるので、実にめでたいことづくめ。

桜子のお輿入れも、早春の白梅屋敷で婚礼が執り行われ、国瑞の祖父が即興の謡を披露するなどという一幕もあり、なかなか風趣に富んでいるのだけれども、磐音とおこんの婚礼は、いわばシリーズの半分以上をかけて待ち望まれていたものだけに、
おこんが速水家に、養女として入る時の様子、
そして速水家から佐々木家へ輿入れする時の様子、
どちらも趣向がこらされ、なんだか花嫁行列を2回(櫻子の時のも入れると3回)、見ているようだ。
う~ん豪華。

いわゆる「花嫁の父」を演じるのは、当然、実の父である金兵衛さんだけでなく、
長年、今津屋でおこんを見守ってきた老分番頭の由蔵もいるわけだ。
おこんが速水家へ向かう道中(実際には舟の中だが)、由蔵が語る、おこんとの出逢いは、短編として、同時刊行された読本の中におさめられている。
なので、ぜひ、あわせて読んでおきたいところ。
(あの人、この人の若い頃や、今登場しているキャラの先代が出てきて、なかなかおとくでもある)。

しかし、こういった、華やかで風情のある趣向だけで終わるのではなく、ちゃんとアクションもあり、磐音をとりまく人々それぞれの「成長」も描かれているのが、佐伯作品、わけてもこのシリーズの良いところだ。
たとえば、女ながらに縫箔職人を一途にめざすおそめ。
生まれた在所を顧みる暇もはいほど仕事に熱中する、というか、しすぎる彼女を心配するまわりの人々、
おそめと藪入りの日に会えない事を残念がっているはずなのに、おそめを信じてへいきな顔をしてみせる幸吉、
在所が気にならないわけではないが、どうしても今は仕事にしか目を向ける事ができないと悩むおそめ。
このシーンは、『中学生日記』のノリに近いものを感じてしまう。

そしてアクションの方はというと、またしても、田沼陣営から刺客が送りこまれてくるのな。
今度は、西国中心に集められたという事で、タイ捨流など、九州定番の流派が並ぶだけでなく、琉球古武術まで……!(おおーっ)。
今回は、3人顔見せするのだが、どの武芸者もそれぞれに、侮れない。
なんでこんな凄い人が刺客に、と思うような、錚々たる顔ぶれらしく、磐音がどうやって全員倒していくか、興味津々だ。


朧夜ノ桜 (双葉文庫 さ 19-25 居眠り磐音江戸双紙 24)/佐伯 泰英
「居眠り磐音江戸双紙」読本―収録特別書き下ろし中編時代小説居眠り磐音江戸双紙番外編跡継ぎ (双葉文庫 さ 19-26)/佐伯 泰英
2008年1月20日初版