『代官狩り』〈狩り2〉 | 手当たり次第の本棚

『代官狩り』〈狩り2〉

時代劇で「お代官さま」と言えば、
「越後屋、そちもワルよのぅ」
「いえいえ、お代官さまにはかないませぬ」
「ふっふっふっ」
「ひっひっひっ」
というのに始まり、
「いやでございますぅ」
「良いではないか良いではないか」
「あーれ~~~~」
と、いたいけな娘の帯をとって独楽回しするという、典型的な悪代官ぶりが目に浮かぶ、という人、わりかしいるかな。

しかし、これって、どちらかといえば、昭和の、テレビ時代劇全盛期に作り上げられた典型的なイメージであろうと思う。

それを、小説として可能な限り、エンタテイメント時代劇で悪役に採用しちゃったのが、これだ。
夏目影次郎、八州回りの腐敗を粛正した次は、悪代官退治に向かう事になったのだ。
……さすがに、独楽回しはないけど、そのかわりに、影次郎の南蛮外衣が、華々しく舞うのだ。

さて、佐伯時代劇では、巻が進むに連れて、主人公の周囲を固めるキャラクターがだんだんと増えていくのが通例だが、シリーズ2巻目にあtる本巻でも、今後重要な役割をしめるキャラクターが登場する。

また、2巻目にしていきなり、敵にやたらと怪しげな団体が出現!
主人公がけれんが強いので、敵方もただ者では追いつかないという事なのだろうか。
あわせて、なかなか派手な演出になっている。

しかし、江戸の悪所と地方に出現した不夜城のつながりは、本巻の終わりで、必ずしも明確にはなっておらず、ただ、幕閣内部の闇が、ほのめかされるだけで、真の敵役は、もちろん、まだまだ姿を見せてはくれない。


代官狩り (光文社文庫)/佐伯 泰英
2004年4月20日初版(2000年9月ケイブンシャ刊)