『劇場版NARUTO疾風伝』(小説版) | 手当たり次第の本棚

『劇場版NARUTO疾風伝』(小説版)

集英社J-Booksといえば、ジャンプコミックスのノヴェライズから始まり、ライトノベルとしても、どうもあれはな~、と長い間、「ひとつ下」に見られていたように思う。
少なくとも、当時のスニーカー文庫や富士見ファンタジアには全くかなわなかった。
人気漫画を小説にしても読む層がほとんどいなかったというのもあろうし、残念ながら、スタート時点では、起用された作家の力量も、いまいちな印象だった。

ところが、いまや、新書・ノベルスの売り上げ上位に幾つも入っているというから驚く。
もちろん、今でも、J-Booksのメインは、漫画のノヴェライズなわけだが、これがどうして、最近は、「あっ」というような作家が書いていたりするようだ。
たとえば、本書。

今年の夏に公開されたNARUTOの劇場版が、映画と同時にノヴェライズされ、J-Booksから刊行されている。
ノヴェライズしたのは、日下部匡俊。
主に、どんな作品で知られているかというと、ソノラマ文庫でも人気シリーズのひとつだった、聖刻シリーズ(2シリーズあったうちの片方)を書いていた作家なのだ。
もっともこの聖刻が、今は非常に入手しにくくなっているので、簡単に説明すると、「ロボットが活躍する西洋風ファンタジイもの」の、ライトノベル。
端的に言うなら、アクションものだ。

一方、NARUTOといえば、漫画から、アニメにもゲームにもなっているジャンプの看板作品のひとつだが、主人公たちが「忍者」だということで、超能力的な「忍術」の登場もあるものの、ハシラのひとつは、間違いなく、超人的な「体術」だ。
忍者だもんな?
走る、跳ぶ、これがアクションの中心というのが忍者漫画の本道だ。
で、これを文章にするにあたり、なるほど日下部匡俊の語り口は、ぴったりだ。
映像をそのまま見ているように、アクションのキレがいいのだが、だからといって、「人の活躍をスクリーンや窓越しに見ているだけ」というような、非臨場感に陥る事もなく、すんなりはまって読めるように思う。

アニメのテレビシリーズの方は、最近、CSで、「大人もはまれ」なんてキャッチフレーズの宣伝をしているのだが、今からコミックスに手を出すのは、40巻近くある事を考えると、ちと大変。
といって、アニメだけではちょっと物足りないかも、と思った時、本作はなかなかお奨めだ。


NARUTO-ナルト-疾風伝 劇場版 (JUMP J BOOKS)/岸本 斉史
2007年8月11日初版