『メイド刑事2』 これがメイドの一里塚!? | 手当たり次第の本棚

『メイド刑事2』 これがメイドの一里塚!?

ドラマ『スケバン刑事』を作者がイメージしているというところからも、たしかに、そのスタイルが、ふつふつと作中に息づいているのがうかがわれる(笑)。
言うなれば、男の子向けなら『快傑ズバット』に見られたような、
ぶっとび加減と、
一種の様式美と、
燃える要素を兼ね備え、
かつ、30分という時間枠におさまるようにタイトに作られた「起承転結」。
そういうエッセンスを、楽しめる小説なのだ。

さて、メイドとなれば、現代の日本では、相当の金持ちでなければ住み込みで雇えない、という印象があるよな。
実際、主人公の葵がメイド刑事として捜査に赴く場所も、ホームベースであるお屋敷も、金持ちのもの。
当然、一般庶民とは縁のない世界が舞台として描き出される事になるのだが、その点、作者は、
この手のドラマは誇張があったり、荒唐無稽さがあっても良いとしながらも、そういったお金持ちの世界を描けていないのではないかとあとがきで危惧している。

たしかに、そういう世界の一端を、ちょこっとかいま見た事しかない私が見ても、
「んん~?」
というような描写は数ある(笑)。

しかし、本作は、少女特撮アクションドラマの小説版として読むべきなのであって、ステージが、リアルな名家・富豪の日常でなくても、それはかまわない事なのだ。
どちらかといえば、水戸黄門にも通じるような、ドラマのフォーマットに陶酔している方が、気持ちが良い。

悪党の前にどこからともなく聞こえてくる葵の声、
どこからともなくなぜかわきだす白い霧、
どこからともなくいきなり出現する白木の杭(メイドの一里塚)、

どこをどうとっても荒唐無稽なのだが、その荒唐無稽さが良いわけさ。


早見 裕司, はいむら きよたか
メイド刑事 2
GA文庫
2006年7月31日初版