『抱朴子』 東洋式錬金術のマニュアル! | 手当たり次第の本棚

『抱朴子』 東洋式錬金術のマニュアル!


西に錬金術があるとするならば、東には煉丹術がある。
このふたつは、人工的な金を作るというのを踏み台にして、不老不死の霊薬を求め、かつ精神的な修養をも取り入れて、神とか仙人とか、まあそういったような、「超存在」になろう!!
……と、めざしている点が、とてもよく似ている。

そして、煉丹術というか、
「これであなたも仙人になれます! ぜんぜんバインダー式じゃない、かなりむつかし~いテキスト」
が、『抱朴子』という本なのだ。
いわば、その道の、「必修科目」。
実は、煉丹術というか、仙人になるための方法も、後代になるとさらにいろいろ変化していくし、一般に不老不死の霊薬と考えられている「丹」が、そこに占める割合は、だんだんと小さくなっていくのだが、

「きみ、仙人になりたいんだって? なら、少なくとも『抱朴子』は、おさえておきたまえよ!」
とその道の先輩に絶対言われる本であるのは、間違いないのだ。

ただーし!
丹を作る方法が説明されているからといって、実施するのは禁物だ。
なぜって、ここに述べられている
「とりあえずエッセンスを教えちゃうよ、丹の作り方」
を一読すれば、一目瞭然。
丹の原料は、丹砂。
つまり、丹を精製していくのならば、その過程で、たっぷりと、水銀をカラダに取り入れる事になってしまう。
実際、この丹薬を用いたために、あえなくも中毒死してしまったという悲劇は、山ほどあるそうだ。

まあ、だからといって、
「せんせー、それじゃあぼくは西洋の錬金術の方をやります」
と、転向するなかれ。
アチラも、ちゃ~んと、水銀と硫黄をベースにあれこれやることになっているのだ。
水銀中毒の危険性は、煉丹術とおっつかっつであろう。
(そんなところが共通していなくてもいいのになあ?)

とはいえ、心身の修行について書かれた「内篇」は、やはり読んでそれほど面白くない。
毒だ危険だスリリングだ、と感じるからこそ、丹の練り方などを説明した「外篇」の方が面白く感じてしまうのだろう。


葛 洪, 本田 済
抱朴子〈外篇 1〉
抱朴子〈外篇 2〉
抱朴子 (内篇)