〈太陽の女王号〉、宇宙に消える
先日、アンドレ・ノートンが亡くなったという報に接した。
ノートンは、上質のエンタテイメントSFを数多く世に送り出して来た人で、私は、〈ビーストマスター〉も〈魔法の世界エストカープ〉も好きだけれども、やはり、原点はなんといっても、〈太陽の女王号〉であった!
松本零士の美麗な表紙と挿絵に飾られたこのシリーズは、2巻までがハヤカワ文庫から刊行された。
これはね。
10代の終わり頃に読むと、むちゃくちゃ、はまるんです( ‥)/
いや、正確に言えば。
第一志望の大学なり、会社なり、それに苦労なく入れた人は、除く(笑)。
なぜなら、この物語は、
苦労して宇宙船乗りの資格を得た主人公が、一流企業に就職できた友人から、憫笑を(あるいは嘲笑を)向けられながら、吹けば飛ぶような個人企業……宇宙船一隻のみで活動し、利益は船員がレベルに応じてその都度わけあうといったような零細なところに、なんとか潜り込む事ができた、ここから始まるのだ。
行く道を全くふさがれたわけではないが、だからこそ、いっそう、挫折感が大きい。
「俺は、こんなところにしか行けないのか」
「俺の努力って、なんだったのだろう?」
冒頭に、こういう失意とか、やるせなさが、いきなり、出てくるわけ。
(どーん!)
想像してみてくれ。
だだっぴろい宇宙港で、黄金に輝くべき未来が、いきなり冴えない、錆び付いたものにかわってしまい、悔しさをこらえている若者を。
10代の終わり頃から20代の前半にかけてであれば、いちどならず、そんな経験をした事って、ないだろうか?
ありますか?
もしあるなら、きっと、主人公にとても感情移入できると思うんだよな。
いわば、「夢」と「現実」の落差。
そのショック。
そこでなんとか踏みこたえようとする若者の姿が、そこにあるのだ。
そして、個人的どん底に立ってしまった主人公が、いかにして大人になるための道を歩んでいくかがポイントなのですが、その過程が、ノートンの本領発揮ともいうべき、輝かしい冒険につながっていくのだ!
どんな、どん底に思えようとも、こういうスゴイ将来がつかめるかもしれない。そんな勇気を、主人公に感情移入した読者に、ノートンは吹き込んでくれるのだ。
そんなアンドレ・ノートン自身が、私にとっては、〈太陽の女王号〉であったと思う。ノートンに深く感謝し、故人の冥福を祈ります。
■未訳分を含めて全巻紹介されているサイト
BROWNのかけら
■現在、Amazon.comで検索可能な、ノートン作品
・太陽の女王号シリーズ(ハヤカワ文庫SF)
大宇宙の墓場
恐怖の疫病宇宙船
・ゼロ・ストーン(ハヤカワ文庫SF)
ゼロ・ストーン
スター・ゲイト
未踏星域をこえて
・ビースト・マスター(ハヤカワ文庫SF)
ビースト・マスター
ビースト・マスター〈2〉雷神の怒り
・魔法の世界エストカープまたはウィッチワールド(創元推理文庫)
魔法の世界エストカープ
魔法の世界の三兄妹
魔法の世界の幻術
魔法の世界の夜明け
魔法の世界の凱歌
・タイム・エージェント(QTブックス)
崩壊した銀河文明―タイム・エージェント・シリーズ 1
ノートンは、上質のエンタテイメントSFを数多く世に送り出して来た人で、私は、〈ビーストマスター〉も〈魔法の世界エストカープ〉も好きだけれども、やはり、原点はなんといっても、〈太陽の女王号〉であった!
松本零士の美麗な表紙と挿絵に飾られたこのシリーズは、2巻までがハヤカワ文庫から刊行された。
これはね。
10代の終わり頃に読むと、むちゃくちゃ、はまるんです( ‥)/
いや、正確に言えば。
第一志望の大学なり、会社なり、それに苦労なく入れた人は、除く(笑)。
なぜなら、この物語は、
苦労して宇宙船乗りの資格を得た主人公が、一流企業に就職できた友人から、憫笑を(あるいは嘲笑を)向けられながら、吹けば飛ぶような個人企業……宇宙船一隻のみで活動し、利益は船員がレベルに応じてその都度わけあうといったような零細なところに、なんとか潜り込む事ができた、ここから始まるのだ。
行く道を全くふさがれたわけではないが、だからこそ、いっそう、挫折感が大きい。
「俺は、こんなところにしか行けないのか」
「俺の努力って、なんだったのだろう?」
冒頭に、こういう失意とか、やるせなさが、いきなり、出てくるわけ。
(どーん!)
想像してみてくれ。
だだっぴろい宇宙港で、黄金に輝くべき未来が、いきなり冴えない、錆び付いたものにかわってしまい、悔しさをこらえている若者を。
10代の終わり頃から20代の前半にかけてであれば、いちどならず、そんな経験をした事って、ないだろうか?
ありますか?
もしあるなら、きっと、主人公にとても感情移入できると思うんだよな。
いわば、「夢」と「現実」の落差。
そのショック。
そこでなんとか踏みこたえようとする若者の姿が、そこにあるのだ。
そして、個人的どん底に立ってしまった主人公が、いかにして大人になるための道を歩んでいくかがポイントなのですが、その過程が、ノートンの本領発揮ともいうべき、輝かしい冒険につながっていくのだ!
どんな、どん底に思えようとも、こういうスゴイ将来がつかめるかもしれない。そんな勇気を、主人公に感情移入した読者に、ノートンは吹き込んでくれるのだ。
そんなアンドレ・ノートン自身が、私にとっては、〈太陽の女王号〉であったと思う。ノートンに深く感謝し、故人の冥福を祈ります。
■未訳分を含めて全巻紹介されているサイト
BROWNのかけら
■現在、Amazon.comで検索可能な、ノートン作品
・太陽の女王号シリーズ(ハヤカワ文庫SF)
大宇宙の墓場
恐怖の疫病宇宙船
・ゼロ・ストーン(ハヤカワ文庫SF)
ゼロ・ストーン
スター・ゲイト
未踏星域をこえて
・ビースト・マスター(ハヤカワ文庫SF)
ビースト・マスター
ビースト・マスター〈2〉雷神の怒り
・魔法の世界エストカープまたはウィッチワールド(創元推理文庫)
魔法の世界エストカープ
魔法の世界の三兄妹
魔法の世界の幻術
魔法の世界の夜明け
魔法の世界の凱歌
・タイム・エージェント(QTブックス)
崩壊した銀河文明―タイム・エージェント・シリーズ 1