『シェイクスピア薬品考』 ちょっとかわった角度から | 手当たり次第の本棚

『シェイクスピア薬品考』 ちょっとかわった角度から

シェイクスピアといえば、戯曲やソネット集それ自体だけでなく、そりゃもういろいろな本が出てるよね。
引用句集のようなものから、研究書まで。

でも、これは珍しいよ。
著者自身の「はしがき」から一部引用してみよう。
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本書は「古代・中世・近世薬学史研究」のうちの近世の部いn属するものである。古代の部では「ディオスコリデスのギリシア本草」(「薬学研究」Vol.27:6〔1955〕~Vol.35:10〔1963〕=11回連載)を,中世の部では「チョーサーの作品」(『薬学研究』Vol.35:10〔1963〕~Vol.37:5〔1966〕/『聖母女学院短期大学研究紀要』第3輯〔1969〕~第5輯〔1973〕=合わせて6回連載)を取り上げ,近世の部では英国ルネッサンス期の「シェイクスピアの全作品」に現れた主として薬品類を解説・考証したのである。
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どうですか?
単なるお遊びとはちょっと違う。東京帝国大学の医学部薬学科を出た、れっきとした薬学者が書いた本なのだ!

目次を見ると、戯曲のタイトルごとにまとめられている事がわかる。
シェイクスピアに出てくる毒薬といえば、おそらく一番有名なのが、ハムレットの父王を毒殺した、あれだろう。
もちろん、それについても詳しく、書いてある。
それどころか、
「なぜ、耳からそそいだのか」
についても考証されてる。
だって、現代人にとって、これ、疑問だろ?
なんで耳からなんだよ!(笑)
まだ、鼻のがわかるよね。
ところが、この本によると、シェイクスピア当時は、確かに、耳から薬を注ぐという考え方があったという事がわかるのだ。

すごく知的興味を刺激される本だよ。


著者: 藤本 豊吉
タイトル: シェイクスピア薬品考