2004-11-14 13:42:49

〈反地球シリーズ〉知る人ぞ知る問題作(笑)

テーマ:海外SF・ファンタジイ
〈ゴル・シリーズ〉ともいう。今でこそ、SFやファンタジイやホラーの中で、かなり過激なセックス描写がある、なんてのも、それほど珍しくはなくなったけれども、このシリーズが出た当時は、
「SFではなくSMだ」
とか、かなーり本国アメリカで物議をかもしたそうだ。ファンもたくさん、攻撃する人もたくさん! えらくながーく続いているが、日本では6巻まで、和訳がでております。
ちなみに、1~3巻は、かの武部本一郎画伯の挿絵。

このシリーズの興味深いところは、まず、〈火星シリーズ〉、つまり『火星のプリンセス』(ああ、デジャー・ソリスさま)に代表されるバロウズが創出したフォーマットの宇宙異世界活劇もののスタイルを取っている事。このスタイルを、バロウズ・タイプと呼ぶ。あまりに特異なので、ふつうのスペオペとは、かように区別されております。

ただ、バロウズ・タイプは、いかにもなアメリカン・ヒーローで、どんな苦境にあっても決してくじけないのが大きな特徴でもある。それは、〈火星シリーズ〉の主人公、ジョン・カーターの名台詞
「私はまだ生きている!」
(生きてさえいれば逆境から抜け出して勝利を手にできるのだ)
という一言に、よーく言い表されているのでありまするが。

ところが、〈ゴル〉のタール・キャボットくんは、次々と逆境に投げ込まれ、確かに自力でそこから抜け出しては来るのだけれども、基本的に、運命に流される人なのだ。いや、ジョン・カーターとて、偶然火星(バルスーム)に行ってしまうと、そこから地球に帰ろうとする努力はほとんどしてないので、運命を受け入れちゃった人という点では共通なのだが、タール・キャボットの方が、より、その傾向が強いわけだ。特に、巻を追うと、それが顕著になっていきます。

ていうより、凶悪な運命にふりまわされるが、そこに出現する絶対的な存在が与える「使命」を果たすヒーローとなるよりは、
「俺は自分の愛する人を探し出して一緒になれればそれでいいんだ!」
という一点にしがみついてしまうのだ。

むむ、どこかで聞いたような……。ドリアン・ホークムーン(マイクル・ムアコック作の、あれ)と一緒じゃあないですか?(笑)

つまり、主人公の性格としては、ムアコックが提唱し、導いた、ニューウェーブに属するものなんですね。言ってみれば、正統派ニューウェーブタイプのヒーローなのであった。

んでもって、出版当時論争のまとになった、「エロいだろSMだろっ」の指摘は、現代では、なーんの力ももたないと思われる。そうです。現代の基準にてらせば、まるっきり大人しいです。いや、楽しいけどね(笑)。今のSFとかファンタジイを普通に読める人ならば、絶対に大丈夫。

更に、このシリーズには、付加的な魅力もあるのだ。それは、ギリシアやローマの風俗が、惜しげもなくモデルとして使われてる事。ここらへんに興味のある人なら、「おお、これはアレだねっ」と思い当たるものが、ビシバシとあるはず。私、海戦の描写には、思い切り耽溺してしまいました。いやー、いいぜい。

ただ、ネックは、訳が6巻でストップしている事。5巻で大きな衝撃を受けてしまったタール・キャボットくん、そのあたりから、落ち込みすねまくりウツ状態に突入し、ヒネクレ者になってしまうのですよ。しかもその状態から浮上するには、何巻もかかるのだ!
和訳の最後のとこは、落ち込んでいくとっぱななのです。なので、訳だけ集めて読んだ場合、ちと、イラだたしさが残る可能性は、あり。

〈反地球シリーズ〉(ジョン・ノーマン作 創元推理文庫SF)
〈火星シリーズ〉(エドガー・ライス・バロウズ作 創元推理文庫SF)
〈ルーン之杖秘録〉(マイクル・ムアコック作 創元推理文庫SF)



著者: ジョン・ノーマン, 永井 淳
タイトル: ゴルの巨鳥戦士



著者: ジョン・ノーマン, 永井 淳
タイトル: ゴルの無法者



著者: ジョン・ノーマン, 永井 淳
タイトル: ゴルの神官王



著者: ジョン・ノーマン, 榎林 哲
タイトル: ゴルの暗殺者



著者: ジョン・ノーマン, 榎林 哲
タイトル: ゴルの遊牧民



著者: ジョン ノーマン, 榎林 哲
タイトル: ゴルの襲撃者

海外からのスパミングが多発しているため、遺憾ながら本記事に限り、TBの受付を停止しています。お手数ですが、TBご希望の方は、左枠のボタンから「メッセージを送って」お申し入れ下さい。TB受け容れまで一定期間、TB受付可能なようにします。(2006/08/31)
AD
いいね!した人  |  コメント(2)  |  リブログ(0)

とらさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

コメント

[コメントをする]

2 ■ヒーロー!

ある意味、ニューウェーブな主人公に対して、ヒーローという言葉を適用するのが、間違ってるのかもしれないっす!
その点、ジョン・カーターみたいのは、正しいヒーローのような気はする(笑)。

1 ■ニューウェーブのヒーロー?

おもしろすぎるのでコメント連発。ていうか最近思い出し力低下で思い出せないのですぐ書く。
授けられた使命に疑いを持たず、ポジティヴシンキングで邁進するヒーローに対して。使命に対して懐疑的で、自分の価値観を重んじ懊悩する、たとえばエターナルチャンピオンみたいな主人公たちは、旧来の物語文化べったりの面白いSFへのカウンターとして提唱されたニューウェーブなくしては現れなかったかもしれない。なんか『指輪物語』と映画のハセヲさんの違いみたいだ(笑。
しかしニューウェーブもいろいろだし、ヒーローものって……あったっけか? 思い出せない。
ムアコックがエターナルチャンピオンの儲けをつぎ込んでいたという伝説があるニュー・ワールズに載ったのはバラードとかオールディスなんかのイギリス作家中心だったかと。時代的には1960年代から1970年代前半くらい、傾向としては内的世界が外部化する感じで、たとえば『沈んだ世界』みたく、いろいろ起こる世界に主人公はいるけど。あれがヒーローかってぇと、自分的には違和感ありですだ。
アメリカに広がって、エリスン、ディレーニイ、ゼラズニイ。スピンラッドとかディッシュ。
うむ、このあたりの作家になると、冒険の主役っぽい感じの主人公もいるかな。作品の発表年代にもよるけど。
うむ、ニューウェーブ以後のヒーローって言ったほうが自分的にはしっくりするにゃ。
ちゃんと話しようとするとどれだけ読み返さなくちゃいけないか怖くなってきたので、このへんで(汗。

コメント投稿

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。