言葉が降りてくる
初めて言葉がハッキリと降りてきたのは
小学生の時でした
“ほら起きなさい”
寝ていたからかけられた言葉なのですが
寝ていた場所は雪の中
そのまま寝ていたら確実に死んでしまう
そんなシチュエーションでした
その日は吹雪のような日で
バスと電車で通学していた私はバスから降りて畑の真ん中の道を歩いていました
あまり真ん中を歩いたら車の邪魔になると思って端の方へ歩みを進めたところ
雪が余りにも積もっていたため足を踏み外し道路から3メートルほど下の畑へ落ちてしまったのです
土だったことと雪が沢山積もっていたので全くの無傷
痛くもなくむしろ雪に包まれた暖かさと眩いばかりの白い光にうっとり
自分が落ちて作った雪の穴から見上げる白い空から
ふわりふわりと降りてくる雪
あまりの美しさと心地良さに大きく深呼吸した後そっと目を瞑りました
どれほどの時間が経ったのか分かりませんが頭の中にキラリとした閃光が走り声が聴こえたのです
“ほら起きなさい”
優しいけれど厳しい言葉
全身に電気が走った感覚と共に急に恐怖が湧き上がってきました
ふかふかの雪に全身包まれているために動こうにも上手く動けずもがきにもがき…畑の中から道路に這い出られる所まで移動して脱出
しばらくの間カラダの震えが止まらずにいたが怪我もなく無事に帰宅できました
言葉は引き金
雪の中で突然かけられた言葉のお陰で事なきを得ましたが数日間は常に恐怖と共に過ごした記憶があります
命が危ない状況だったのですから当たり前ではありますが…あの恐怖感があったからこそ全身にチカラを込めて必死にもがくことができたのですから
あの時の言葉からもたらされた“恐怖感”は私にとって“生きるチカラ”を最大限に引き出してくれた引き金だったと思うのです
言葉ひとつで命を奪われることもある世の中ですが
言葉ひとつで救われる命もあるならば
私は命を救う言葉を紡ぐ人でありたいと考えています