先方からの電話であるにも関わらず、ガサゴソガサゴソ…と雑音ばかりの状態だったので、私は一先ず、「もしもし?もしもし?」と繰り返さざるを得なかった。店に掛かって来た電話を、こちらから切るのはNGなのである。
勿論、その様子から「間違いであるだろう。」とは薄々想像がついたが、早く気づいて喋るか、向こうから切れるかしてくれと願うことしか出来なかった。
しばらくすると、相手も異変に気がついたようで「…もしもし~?」と電話に「出た」。いや、「出た」のはこちらなのだから、事情は説明させてもらわないといけない。
「もしもし?お電話を頂いたようなのですが、どちら様でいらっしゃいますか?」
すると相手は、
「あら、間違って押ささったんだぁ。」
明らかにひとりごとの口調でそう呟き、ブチっと電話を切った。
普通、自分が間違ったのなら、「間違って掛かってしまったようで、申し訳ありません。」ではないだろうか。どこに繋がったものか、分かってか分からないでかは知らないが、それが店や会社か、或いは個人宅かに関わらず、まずは謝罪すること、これは常識なのではなかろうか。
この仕事をしていると、店員という生き物は、完全に見下される存在なのだなと感じさせられることが多々ある。「人間」ではなく、只の「生き物」だ。
声を掛けても完全無視を決め込むくせに、用事があるとなったらそんなことは無かったかのように、平然と話しかけて来る。
ただ、無視されるのはまだ被害が少ないもので、最初から喧嘩腰に絡まれたり、接客トークに全反論、全否定のこともしばしばだ。まさか口答え出来ない立場の生き物に当たってスッキリしたいのか?と思うこともたまにではない。
何れにしても、そのような振る舞いを何の悪気もなく出来るくらい、至極自然に他人を下に見ているのであろうから二の句が継げない。
「お客様は神様、スマイル0円、それが仕事でしょ?」
そんな声も聞こえて来そうだが、私の仕事は召し使いではなく販売をすることだ。買いもしないくせに、延々と会話に付き合わされることでもなければ、嫌な態度を取られながらも尚、親身に尽くし、敬い、ひれ伏すことでもない。
それから、私がデザインした訳でも値段を決めた訳でもない物のことや、私が考えたり制定した訳でもないシステムのことで、因縁をつけられても正直知ったこっちゃない。私は押し売り屋ではないので、気に入らないなら決して無理強いはしない。気に入った方、必要な方に気持ち良く買って頂くので結構である。
ちなみに、自分の思い通りでない店員のことが気に入らないなら、それもまた結構なので、さっさと立ち去って頂きたい。尚、世の中には本当に失礼でしょうもない店員も一定数いるので、その点だけは代わって先に深くお詫びしたい。
当たり前のことだが、店員も人間なのだ。
普通に、お互いリスペクトを持って接客、会話が出来る人であれば、販売期間ではない商品をこっそり出してあげたり、季節やこちらの販売計画上、そこまでしなくても良い商品でも、全国や本社の在庫を手を尽くして探してあげたりすることもある。人と人、それが気持ちだし、コミュニケーションというものだ。
損得ではないが、そうしてもらった方が結果自分も得するのではないか。何故マウントを取りたがるのか、私にはまるで分からないのだ。
良い対応をしてもらいたいなら、礼儀のある振る舞いを客サイドもすべきである。「仕事」なので、通り一辺倒の接客は表面上させて頂くが、それ以上の部分で一緒に考えてあげよう、なんとかしてあげようと思わせるのは自分次第なのだということは分かっておいた方が良い。別に媚びてくれとか煽ててくれなどと言っている訳では決して無い。人として「普通」で良いのだ。そんなことをこのように改めて言うくらい、件の客が「ほんの一部の特殊な人」ではないから、「どうかしている」と思うのだ。
胸に手を当てて考えてみて欲しい。「えー、そんな人いるのー?」などと思っている人に限って、案外気づいていないのではないか。「私、偉そうに話してないかな?」と考えながら、店員と話す人なんてほとんどいないでしょうから。「当然」の気持ちで邪険に扱っている自分がいないか一度省みて頂きたい。
これはストレスの溜まる世の中のせいなのか、ネット社会が進む故のコミュニケーション障害なのか。
何れにしても、真剣に、「どうかしている」輩の反省を強く求めたい。
