またしても

大変お久しぶりのブログですが

今回は言い訳(笑)と前置きは抜きで

さっそく本題へウインク

 

 

大きな節目を迎えた

あるクライアントさんのセッションのお話です。

(ご本人の許可を得て書かせていただきます)

 

*ちょっと長いです。

 

「ことの葉」の別棟にあるセッションルーム

 

 

2年ほど前から

個人セッションを受けてくださり

「ことの葉」のお茶会や勉強会にも

参加してくださっている〇子さん。

 

 

ご自分の問題に取り組みつつ

心の仕組みを理論的に学び

 

ともに学ぶ仲間たちとの交流で

安心感と信頼感を育み

 

ゆっくり時間をかけて少しずつ

”心の土台”を築き直してきました。

 

 

 

〇子さんのセッションでたびたび

テーマになっていたのが

お仕事のことでした。

 

 

社会人になって

最初に就職した大手の会社で

30年以上も働き続けてきて

 

中堅どころかベテランの域にも

入っている〇子さんですが

 

主訴となっていたのは

「仕事に行くのがつらい」

「私なんてダメだ」

「会社の期待に応えられない」

といった”自信の無さ”でした。

 

 

でも、私の知る〇子さんは

細やかな気遣いができ

人とのコミュニケーションもうまく

 

自身の感情や感覚を捉えることや

それを言語化することにも長けた

素敵な女性という印象。

 

 

大人としての有能さだけでなく

無邪気さや素直さといった

少女みたいな可愛らしさも感じます。

 

 

〇子さんが自虐的に話す「自分像」と

私が知る彼女の印象には

大きなギャップがありました。

 

 

 

でも、このギャップこそが

子ども時代に刷り込まれた

「ネガティブなビリーフ(思い込み)」

の影響によるもの。

 

 

客観的な事実よりも

自分を過小評価してしまい

「私なんてダメだ」と思い込む。

 

そのことによって

他人が怖くなるばかりか

身近な人も信じられなくなって

人との関わりがぎくしゃくしたものに

なってしまうのです。

 

(逆に自分を過大評価して尊大にふるまい、

人間関係を壊すタイプの人もいます)

 

 

 

〇子さんはセッションを重ねる中で

 

子ども時代の親との関わりや

それによって深く傷ついた体験が

自分にどんな影響を与えてきたか…

 

頭ではなく、深い体感レベルで

ひとつひとつ気づきを得ていきました。

 

 

 

けれども、そうやって彼女が

「本当の自分」に近づけば近づくほど

 

明らかになってきたのは

会社の方針や会社が望むものと

自分が望む働き方、生き方との間に

ある大きなギャップ。

 

 

でも、社会人になってから

その会社しか知らない〇子さんにとって

 

それ以外の仕事や生き方は

まったく未知の世界で

 

「もうこの会社は違う」と思っても

その想いを実行に移すことが

どうしてもできませんでした。

 

 

未知の世界への不安だけでなく

 

会社から与えられる

「生活の保障」や「堅実な立場」を

手放してしまうことへの恐れも大きく

 

〇子さんは気づき始めた「本心」を

また心の奥にぎゅっと押し込めて

なんとか仕事を続けていました。

 

 

この頃の彼女は

張りつめた細い糸の上を

歩くような心持ちだったのでしょう。

 

ある日の出来事をきっかけに

緊張の糸はぷつりと切れてしまい

それ以来、仕事に行けなくなって

しまったそうです。

 

 

病院で診断書をもらい

療養休暇として自宅で過ごすも

何をする気力も湧かず

ひたすら眠り続ける日々…。

 

 

それから数か月が過ぎて

ようやく少しだけ体力気力が

回復し始めた頃から

また心理の勉強会やセッションに

来てくれるようになり

 

その頃から徐々に以前より

セッションの内容が深まっていき

 

それまでは決して出てこなかった

ごく幼少期の愛着の問題などが

テーマに上ってくるように。

 

 

その中で浮かんできたのは

 

「居場所を失う」

「人から見捨てられる」

「ご飯が食べられなくなる」

「ひとりぼっちで死ぬ」

 

という強烈な恐怖でした。

 

 

〇子さんの中ではその恐怖が

会社を辞めることと強く結びついていました。

 

 

それまでのセッションや

日々の気づきの中で

自分が本当に望む生き方がわかって

 

「会社に居続ける人生に

自分の望む未来はない」と

頭では理解しているにもかかわらず

 

幼少期の体験によって刻まれた

強烈な恐怖(トラウマ、ビリーフ)が

邪魔をして

 

どうしても前に進めない、

決断ができない…。

 

 

頭での理解や意志の力は

体感として残るトラウマの恐怖には

絶対にかなわないので

 

望む方へ進むためには

このトラウマに基づく思い込みや

恐怖の体感を消去する必要があります。

 

 

そこで、

本人にも記憶がないような

ごく幼い時期のトラウマなども扱える

「SP法」というやり方のセッションを

2回にわたってゆっくり丁寧に行い

 

〇子さんの中にあった

人から見捨てられ

ひとりで孤独に耐える恐怖や

激しい焦燥感や不安

固くひんやりした体感などを

 

自ら心を開いて人と交わる喜び

信頼できる人と共にいる安心感

あたたかく緩んだ体感などに

書き換えていきました。

 

 

これはセラピストが

「書き換える」のではなく

 

当事者である〇さんが

「自らの物語=人生脚本」を

自分で書き換えるのです。

 

 

セラピストである私は

それをお手伝いする

アシスタントのようなものおねがい

 

 

ちなみに

〇子さんが自ら書き換えた

未来の物語は

なぜか「おじさん」が主人公で

 

下町のようなところを舞台にした

人とのゆるやかなつながりと

ワクワクや希望に満ちた物語でした。

(男はつらいよ、みたいなお話電球

 

 

さて、そうこうするうちに

〇子さんが療養休暇に入って1年半。

 

 

いよいよ会社に戻るか、辞めるか

決断を迫られることになったのですが

 

上司との電話での対話で

なぜかスルスルと「辞める」方へ向かい

悩む間もなく退社が決まったそうです。

 

 

それはとても自然な流れだったようで

〇子さんはホッとした様子でした。

 

 

そんな中で

ひとつだけ気掛かりだったのは

 

病気療養の延長上に退職が決まって

挨拶やセレモニーが何もないまま

会社人生に幕を下ろすことになったこと。

(会社側の決定として)

 

 

書類だけの処理で完結し

会社に行くことも

会社の人に会うこともない

フェイドアウトのような退職に

 

「自分で決めたことだけど

会社にいた35年がこんなふうに

終わってしまうなんて…」

 

と〇子さんはどこか寂しげで

腑に落ちていないように見えました。

 

 

 

そこで私が提案したのは

大切な人やものとのお別れをする

「対象喪失」のセッションでした。

 

 

 

長くなるので、次に続きます。