13日(土)の朝日新聞土曜版「be on Saturday」の「be between 読者とつくる」は、「左利きは直した方がいい?」というテーマであった。
読者アンケートの結果は、「はい」が11%、「いいえ」が89%であった。
妥当な結果だと思う。
そもそも左利きは、直せるものではない。
左利きを直して右利きになった人というのを、聞いたことがない。
右手のほうが便利なものに関して、練習によって右を使えるようにするだけであって、右利きになるわけではない。
世の中には右利きの方が便利なものが多いので、練習して右手で使えるようにすることは多い。
右利きにはわからない苦労があるようである。
左利きの不便さを、わたしも一度経験したことがある。
小学校5年生のときに家庭科の授業で裁縫をやったのだが、わたしは兄のお下がりの裁縫セットを使っていた。
兄は左利きなので、裁縫セットのハサミは左利き用のものであった。
右手で使うと、布も糸も全然切れなかった。
結局ハサミだけは右利き用に買い直した。
左利きの人の不便さを知った体験である。
普通に売られているハサミは、ほとんどが右利き用である。
わたしがいつも文房具を買う100円ショップで左利き用ハサミが売られているのを見たことがない。
左利きの人も大体は右利き用のハサミを使っているのだろう。
切りにくいものを苦労して使いこなしているにちがいない。
ハサミの動きは開閉運動だけなので、右利きも左利きも関係なさそうだが、右手と左手では力が加わる方向が違うから切れないらしい。
品ぞろえの豊富な文房具屋さんでは、左利き用のハサミも売られている。
単に右利き用のものを対称にしただけでなく、右利き用のハサミを左手で使うことになれている人が左手で使うように作られているという。
ややこしい話である。
「be」のアンケートでは、「はい」と答えた人が挙げている理由でもっとも多いのが、「ハサミが使いづらい」であった。
左利きの人の多くが、右手用のハサミを左手で使う練習をしているのだろう。
「はい」の理由で2番目に多かったのは、「横書きの時に手が汚れる」というものであった。
縦書きの時には右利きの方が手が汚れるから、左利きを直さなければならない理由にはならない。
わたしはいつも縦書きの葉書に書くときには、汚さないように書いた部分の上に紙を当てている。
それだけのために左手で書く練習をしようと思ったことはない。
「はい」の理由で3番目に多かったのは、「習字が上手になりにくい」であった。
漢字もひらがなも左から右に引く線が多く、左手では書きにくい。
毛筆の場合は、左手だと「はね」や「はらい」も難しそうである。
そのため、文字だけは子どもの頃に右手で書くように直されることが多いようである。
わたしの兄も、字は右手で書く。
わたしの娘も左利きだが、通常の文字は左で書き、書道のときだけ右で書く。
どちらも同じくらいうまく書ける。
兄も娘も、文字だけは右だが、他はすべて左利きのままである。
箸も左だし、スポーツもすべて左である。
特に不自由や不便はないようである。
自動改札は少しめんどうだが、慣れているので問題ないようだ。
娘が最近、ギターを始めた。
右利き用である。
左手で弦を押さえ、右手ではじく。
はじくだけの右手のほうが仕事が単純であり、左利きでも不自由しないようである。
ピアノは、和音を弾く左手よりもメロディーを弾く右手の方が動きが複雑なので、左利きの人は弾きにくそうだが、実際はどうなのだろう。
坂本龍一は左利きであるが、ピアノで苦労したことはなさそうである。
「はい」の理由の10番目に、「カメラが操作しづらい」というのがあった。
左利きを直さなけらばならないほどのことではないと思うが、確かに使いづらいと思う。
パソコンのキーボードのテンキーも、左利きの人には使いづらそうだ。
これらは左利きを直すよりも、製品の改良によって克服するほうが良さそうである。
テンキーは、後付けのものを買い足すこともできる。
左利きの人は、カメラの使いづらさにはどう対処しているのだろうか。
左利きの人の感想やカメラメーカーの考えを聞いてみたいものである。
右利きの人間が気付かない左利きの不便さは、他にもまだまだありそうである。
気をつけて観察してみようと思う。