僕が月を見上げていると、少年は僕に向かって『早く!』と声をかけてくれた。

 

僕は『いや、僕はいいや。』と言い返した。

 

少年は不思議な顔をしてこっちを見た。

 

『僕は誕生日に買ってもらった望遠鏡で吸ってない真ん丸の月を見たいから。』

 

と言って僕は家に帰った。その後はわからない。

 

けど、今もあの少年はどこかで月を吸っているんだろうな。

 

僕は月を毎日あの望遠鏡で見ている。

 

『あ、今日の月は少し欠けている…』