少し苦しくなってきたので、ここで私に対する言動や態度ではなく、他人に対してどのようであったかをお話ししたい。

 

基本的に彼は、人に対する態度はとても偉そうで横柄である。
店員や、それが私の友だちにであっても誰であっても、少しでも自分の意見と違ったことがあると、時に高笑いし徹底的にその間違いについて言及する。

(彼はこれを「議論」と言っていた。しかし要は自分が勝てる方法で、他を打ち負かしたいのである。)

 

例えば、メニューの写真と実物が違ったり不手際があったりすると、周りが驚くような勢いで罵倒し、ひどい時は伝票を丸めて投げつけたりするのである。
周囲に叱責が聞こえた方が、おいおい店のためなのだという。

また、自分が信じている固定観念、例えば女は男より劣っている、という話も、わざわざ遠くから遊びに来てくれた私の友だちを、何も言えないほど追い込み論破してしまった。

私たちはすごく優秀ではないけれど、大学で女性の独立と自立を学んだ者たちとして誇りを持って生きていた。


なのに、女性が及ばないところを論(あげつら)ってコテンパンである。

当人としては、間違ったことは言っていないのでケロッとしたモノである。
むしろ、反論できないまで叩きのめしたことに快感を覚えているようだった。

「この人にはあなたみたいに、謝って回る奥さんが必要ね。」
と言われたことが忘れられない。

 

運転中、前の車をよくあおる。

 

今なら犯罪であるが、当時暮らしていた社宅の近くで「ご主人にあおられた」という苦情を受けることがよくあった。
交戦的な性格がさらに加速し、恐ろしいほどのスピードを出し、ノロマ、クズと罵倒しながら運転をする。


同乗者への配慮はもちろんない。
前の車がブレーキを踏もうものなら、事故でも起こったかと思うようなクラクションで猛抗議するのである。
それは、歩行者に対しても。
お年寄りでも子どもでも。

 

時にはわざと脅かすように突進していくこともあり、バランスを崩した高校生の女の子の自転車が傾くと、
「もう少しでパンツが見えたな。」という事もあった。
子どもが乗っている車である。
彼の何もかもが、嫌になり始めていた。

 

私が妊娠していようと、つわりが酷かろうと、常にタバコをふかし買い物に行かせ、あ「あー、運転めんどくさい。」と恩を着せて自分は車で待つ。

急発進急ブレーキを繰り返す。


疲れたら勝手に休み、数時間眠りこけてしまう。
私は次第に、彼の車には乗らなくなっていった。