『患者になって気づいたこと』

第6回目は「背抜き」です。

 

長時間寝ていると、背中や腰が痛くなってきます。

患者になってみて、一番つらかったことは集中治療室で30時間も寝返りを禁止されたことです。

 

両手には点滴やモニターがつながれているので、どうすることもできません。

少しだけ身をよじってみましたが、不快な感覚は変わりありませんでした。

 

そのとき、看護師さんが手にビニール袋をつけて、私の背中とベッドの間に差し込んでくれたのです。

一瞬ですが、からだがベッドから解放されたのです。

このときの気持ちの良さは何とも言えません。

本当に救われた気になりました。

 

 

背抜きは、電動ベッドなどの背を上げたり、体の向きを変えた後に行われます。

背中側の皮膚や筋肉が引っ張られて起こる不快な感覚が、和らぎます。

衣服やシーツのしわを伸ばして、圧迫される部分を解消する目的もあります。

 

本当に、あの時の心地よさは格別でした。

ケアとは、こういうことなのだなと痛感しました。

 

看護師さんによっては、「ごめんなさいね」「つらいですよね」などの言葉を添えてくださる方もおりました。

人によってテクニックの差がありましたが、一生懸命であることは伝わってきました。

 

このとき、あることを思いつきました。

『ケアとは究極のコミュニケーションである』

 

ケアは、常に相手のことを考え、相手が苦痛から解放されることを願い、言語と非言語を統合させるという尊い行為です。

20年以上も医療現場にいながら、このことにようやく気づきました。

 

ケアする人には、頭が上がりません。

みなさん、いつもありがとうございます。

 

 

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